第188話 クラス代表選考会 予選①

「それまで! 一―一の六組目の勝者、“賀茂かもカズマ”!」


 一年の学年主任が手を高々と掲げ、勝ち名乗りを上げる。


 ちなみにこの賀茂って奴、『ガイスト×レブナント』にはその名前すら出てこない、モブ以下だったりする。

 まあ、俺みたいにクソザコモブとして主人公にやられるためだけの存在か、それとも、その他大勢以下だけどやられるようなこともない存在か、どちらがいいのかは難しいところだ。


 そんな風にしげしげと眺めていると。


「あ! 次は加隈くんみたいだよ!」


 立花が指差すその先には、今まさに舞台に上がろうとする加隈の姿があった。

 そういえば、この一―二も悠木とクソ女もいなくなって、しかも一学期の悪行が学園中に知れ渡り、相当肩身の狭い思いをしてるんだよなあ……知らんけど。


「では、始め!」


 学園長の合図で、全員が一斉に精霊ガイストを召喚する……って、加隈のあの精霊ガイストは!?


 どこか人を食ったようなニヒルな表情の女性で、タロットカードの『愚者』のような出で立ち。

 あれこそまさに、『まとめサイト』にあった加隈の精霊ガイストがクラスチェンジした姿……[ロキ]そのものだった。


「な、なあ立花……ひょっとして加隈の奴……」

「うん。加隈くんは“アルカトラズ”領域エリアでクラスチェンジを果たしたんだ」

「そ、そうか……」


 でも、加隈は『まとめサイト』の情報通り、本来の・・・クラスチェンジ後の|精霊《ガイストである[ロキ]を選択したってことか。


 立花の、仲間・・として。


「……ということは、ひょっとして立花とプラーミャも……?」

「えへへ……うん、ボク達もクラスチェンジをしたよ」


 立花はモジモジしながらはにかむ。

 はは……面白くなってきたじゃねーか……!


「ますますお前達と戦うのが楽しみになってきた……だけど」


 俺は一拍置き、すう、と息を吸うと。


「コッチも、お前達の知ってる俺達じゃない」


 そう告げて、俺は不敵な笑みを浮かべた。


「あはは、ボクも楽しみにしてるよ」

「おう!」


 そうして俺と立花がお互いの拳をコツン、と合わせていると。


「それまで! 一―二の一組目の勝者、加隈ユーイチ!」


 学年主任の勝ち名乗りが耳に飛び込んできた。

 あ、ヤベ。加隈の試合、全然見てなかった……って、あーあ……。


 加隈の奴もそれに気づいたのか、ガックリとうなだれながら舞台を降りていった。


 ◇


『次に、一―三の一組目の試合を始めますので、出場者は舞台の上に上がってください』


 グラウンド内でアナウンスが流れ、出場するクラスメイト達が舞台へと向かう。


「じゃあ、行ってくるね」

「おう、頑張れよ」

「うん!」


 俺は激励の意味を込めて立花の背中をポン、と叩くと、立花は力強く頷いた。


 さてさて……それじゃ、立花の精霊ガイストの分析でもさせてもらおうかな。

 などと考えながら腕組みをしていると。


「フフ……余裕ネ」

「お、プラーミャにサンドラ」


 後ろから現れたのは、プラーミャとサンドラだった。


「ソッチこそ、対戦相手の俺に声なんかかけてきて余裕じゃねーか」

「もちろんヨ。だって、ヤーはアンタに勝つんだかラ」


 そう言うと、プラーミャが口の端を持ち上げる。

 クラスチェンジを果たし、かなり自信があるんだろう。表情や態度からも、そんな様子がうかがえた。


「それで、サンドラは俺とプラーミャのどっちを応援するんだ?」


 俺はサンドラにそう尋ねたけど……うわあ、ちょっと俺、嫌な質問しちまったなあ……。


「あ、わ、悪い……今の質問は無し……「フフ、ワタクシはどちらが勝っても構いませんわ」」


 質問を取り消そうとしたところで、サンドラは俺の言葉を遮って言い放つ。


「だっテ……勝って代表に選ばれるのは、ワタクシですもノ」

「「っ!?」」


 胸にそっと手を当てて微笑むサンドラに、俺とプラーミャは息を飲んだ。

 はは……上等!


「フ、フフ……! ヨーヘイの次は、“アルカトラズ”領域エリアでの借りを返させてもらうワ! サンドラ!」

「今回も返り討ちですわヨ!」


 二人はバチバチと睨み合う……って。


「その前に、立花の試合が始まるみたいだからソッチに集中しようぜ」

「「ア……」」


 俺の言葉で我に返った二人は、仲良く並んで舞台の上に注目すると、審判の先生がちょうど舞台に上がってきた。


 だけど。


「それでは、ただいまから一―三の一組目の試合を始めます」


 よりによって、一―二の担任の“伊藤アスカ”が審判かよ!? 学年主任の先生はどうしたんだ!?

 俺は辺りを見回すと、学年主任の先生は本部テントでパイプ椅子に座りながら学園長や教頭達と談笑していた。


 この予選、嫌な予感しかしないんだけど……。


「では……始め!」


 そんな一抹の不安を覚えている間に、立花の試合が始まった。

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