第166話 欲しがる私に、くれたあなた②
■氷室カズラ視点
それからも変わらない中学三年間を経て、私はいよいよ、あの“国立アレイスター学園”に入学する。
というのも、私の
その時の私は嬉し過ぎて、二つ返事で受けた。
学費だって免除されるし、何より実家からも近い。これなら
……ううん、本当はそんなの、ただの後付けの理由。
本音は、あの名門のアレイスター学園にこの私が通えるほど、その存在を認められたことが……特別扱いをされたことが嬉しいのだ。
そして、いよいよ入学式。
私は新品の制服に袖を通し、鏡でチェックする。
うん、おかしなところはない。
「じゃあ、行ってきます!」
「「「「「行ってらっしゃい!」」」」」
家族全員に見送られ、私は足早に学園を目指す。
これから、私の学園生活が始まるんだ!
そんな期待に胸を膨らませながら学園の門をくぐり抜け、お世話になる教室に入った瞬間……私の身体が硬直した。
だって……教室には、三年前のあの日に見た、あの女の子がいたから。
別人だと思いたかった。こんなところにいるはずがないって思いたかった。
だけど……見間違えるはずもなかった。
赤くウェーブのかかった髪に真紅の瞳、赤い唇、それを際立たせるかのような、透き通るような白い肌……。
ああ……あの女の子は、
私は結局、彼女に何一つ敵わないんだ……。
それから、席も隣同士になった私は、いつも彼女……“桐崎サクヤ”さんを見ていた。
もちろん、羨望と嫉妬の眼差しで。
聞いたところによると、彼女は学園長の一人娘らしい。
そして、授業にはあまり出ず、いつもどこかに行っていた。
それをクラスメイト達は、「学園長の娘だから特別扱いなんだろう」とか、「いつもニコリ、ともしないで感じ悪い」とか、口々に噂していた。
かく言う私はといえば、やはりクラスメイト達に馴染めず、彼女ほどではないにしろ、どこか敬遠されていた。
そんなこともあって、私はいつも一人、近所の公園で弟や妹と一緒に遊んだ時に偶然見つけた
ここの
これなら、授業にもあまり出ていない彼女の
彼女を……超えられると思ったから。
もちろん、[スノーホワイト]のレベル上げだけじゃない。勉強だって私のほうが高い順位に行けるんじゃないか、そう思って頑張った。
だって、彼女は授業にあまり出ていないから。
だけど……現実は残酷だった。
一年生の中間テストで、彼女は学年トップの成績だった。
私は頑張った甲斐もあり、学年三位の成績を収めたけど、なんの慰めにもならない。
だって、私は授業をまともに出ていない彼女に負けたんだから。
だから、私はますます
彼女と一緒に
なのに。
「あれえ? アンタ、
たまたま“グラハム塔”
「ホラ、私の
そう言って見せられたガイストリーダーの画面を見ると、私の[スノーホワイト]とは明らかに違った。
レベルは[スノーホワイト]の半分以下なのに、全てのステータスが彼女の
「アハハ! まあ、ガッカリしないでよ!」
笑いながら私の肩を叩く佐久間さんの瞳は、明らかに私を馬鹿にしていた。
その後も、陰で私の悪口を言っていたし。
でも……私に[スノーホワイト]のレベル上げをやめるという選択肢はなかった。
だったら、誰にも負けないくらい……それこそ、倍じゃきかないほどのレベルを上げて、強くなればいいんだから。そう、言い聞かせて。
毎日、家事や
学園に入学してから半年以上が過ぎ……[スノーホワイト]のレベルは五十五になっていた。
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