第160話 先代生徒会長の乱心

「そして……このわた……「クハ! こんなところにいたのか!」……あなたは……!」


 すると、何故かこの場所に、あの・・牧村クニオと二―一の女子生徒が現れた。

 というか、一昨日の不正のことがあったのに、まだこうやって絡んでくるって、どれだけ粘着質なんだよ……。


「クフフ……それにしても氷室くん、あれだけの不正を働いたのに、今もこうやってのうのうと生徒会にいるだなんて、少し虫が良すぎやしないか? まあ、僕としてはそのほうが好都合だけど」

「そうよ! サッサと消えなさいよ!」


 コイツ等、言うに事欠いて……!


「フザケルナ! 氷室先輩は、桐崎先輩や俺、サンドラでお願いして生徒会に残ってもらたんだ! それよりも、オマエ等こそよく俺達の前に姿を現わせたな! このクソ野郎!」

「はあ!? なんでアンタにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」


 俺の言葉に、女子生徒がキレる。というか、キレてるのは俺のほうなんだよ!


「大体、オマエ等が巻き込んだせいで、氷室先輩が……って、氷室先輩!?」

「……望月さん、もう……いいですから……」


 氷室先輩が、俺の制服をつまみながら制止する。

 その表情は変わらないけど、俺には氷室先輩がどうしようもなくつらそうに、悲しそうにしているようにしか見えなかった。


 ……コイツ等のせいで。


「クフフ、まあいいさ。今日は氷室くんではなくて、君に用があったんだよ」

「はあ? 俺にはオマエ等なんかに用はねーよ! サッサと消えろ!」

「クハ! つれないねえ」


 俺が吐き捨てるようにそう言うと、牧村クニオは肩を竦めて苦笑した。

 というかコイツ、俺に用ってどういうことだよ。まあ、絶対に碌なことじゃないと思うけど。


「フン! いいからよく聞きなさいよ! 牧村様はねえ、アンタみたいなクズにチャンスをあげようっていうのよ!」


 尊大にそう言い放つ女子生徒だけど、そもそもコイツ、牧村クニオのこと様付けしてるのかよ。キモチワルイ。


「ハイハイ、俺はそんなチャンスは逃す主義なので、本気マジで消えてくれない?」


 俺はもう怒りを通り越して呆れかえってしまい、面倒くさくなって手をヒラヒラさせて追い払う仕草をした。


「まあ聞きたまえ。要は、君に生徒会を辞めてもらいたいんだよ。そうしてくれれば、今後、僕は君や氷室くんの前に姿を現わさないと誓うよ」


 ん? コイツ、何を言ってるんだ?

 そもそも、なんで俺が生徒会を辞めないといけないのかも分からないし、そうすることで、なんでコイツが姿を見せないなんて提案するんだ?

 というか、コイツは生徒会に返り咲きたいんじゃなかったのか?


 ……ちょっと、カマかけてみるか。


「オイオイ、オマエは生徒会に戻りたいんじゃなかったのかよ? 俺達の前から姿を消したら、それこそ生徒会復帰なんてできねーじゃん」


 俺は煽るように牧村クニオに問い掛ける。

 何故なら、コイツが出した条件には、氷室先輩が生徒会を辞めるというものは含まれていない。

 つまり、氷室先輩が生徒会に留まる限り、コイツは生徒会に復帰できないってことだから。


「クハ! いいんだよ、別に僕は生徒会に戻りたいわけじゃない! 僕は、オマエを生徒会から追い出したいんだ! 全てを元通り・・・にして、桐崎くんと氷室くんを、会長選挙で一騎打ちさせたいのだよ!」

「っ!?」


 コイツ、今なんて言った!?

 元通り・・・て、生徒会長の選挙で一騎打ちさせる!? それって、本来のイベント通りには事を運ばせようってことか!?


 これじゃまるで……悠木と同じじゃないか……!


「なあ……俺が断る、って言ったら、どうするつもりなんだ?」

「クフフ……決まってるじゃないか。その時は、君を排除するだけだよ! [ラタトゥスク]!」


 牧村クニオは精霊ガイストを召喚すると、現れたのは、リスをモチーフにした獣人だった。

 というか、せっかくリスなんだから可愛い女の子とかだったらよかったのに、残念なことにいやらしい目つきをした中年のオッサンだった。


「……あの精霊ガイスト、どうしても嫌悪感を抱いてしまうのですが、何故でしょうか」


 氷室先輩は表情を変えずにポツリ、と呟く。俺も同意見です。


「アハハ! じゃあ氷室さん、あなたはこの私が相手をしてあげるわよ! [フロスティ]!」


 今度は女子生徒が精霊ガイストを召喚する。

 その姿は、金髪ロングの髪型に白のドレスに身を包み、尊大な態度で人を見下すかのような女性……うん、ラノベなんかでよく出てくる、悪役令嬢みたい。


「クハ! 僕の精霊ガイストは鈴原くんや和気くんに次いで強いんだ! 君のようなクソザコモブ・・・・・・精霊ガイストとは違うのだよ!」

「っ!」


 コイツは今、俺のことをクソザコモブ・・・・・・だとハッキリと言った。

 ……これで確定だ。コイツは……牧村クニオは、悠木と同じように何らかの強制・・・・・・を受けている。


 俺を排除しようとする、ナニカ・・・によって。


 だったら、俺のするべきことは決まってる。

 目の前にいる牧村クニオ……そして、そのナニカ・・・ってヤツの思惑ごと、この俺が返り討ちにしてやる!


 俺は拳を強く握りしめ、牧村クニオに向けて不敵な笑みを浮かべた。

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