第147話 密会
「うむ! これで明日の信任投票の準備は整ったな!」
月曜日の放課後、生徒会室で最後のチェックを行った桐崎先輩が、嬉しそうにそう宣言した。
「よし! あとはアイツ等に投票の場で目にもの見せてやるだけだ! 何と言っても、師匠ほどのお方を生徒会長から外すなんて選択肢、普通にあり得ねーからな!」
桐崎先輩の言葉を引き継ぐかのように加隈が気勢を上げる。というか、加隈の奴に言われるのは
「学園祭の準備も、明日の最終チェックを終えれば、いよいよ終わりです」
「えへへ! みんなで頑張ったもんね!」
「エエ……この
氷室先輩の言葉に、立花とプラーミャが微笑み合う。
というかこの二人、やけに仲良くなったな。加隈を含めた三人で “グラハム塔”
「フフ、プラーミャ達もやっと、チームらしくなりましたわネ」
すると、いつの間にかサンドラが俺の隣に来てニコリ、と微笑んだ。
「サンドラ……ま、そうだな。だけど」
「エエ、ワタクシ達のチームのほうが上ですけド」
そう言って、俺はサンドラとコツン、と拳を合わせた。
はは……どうやら俺は、無事に仕事を終えたことでテンションが上がりまくってるみたいだな。
「むむ! わ、私を除け者にする気か!」
「ま、まさか! 先輩も入れてチームでしょうが!」
そんな俺とサンドラのやり取りを見た先輩が、こちらへ慌ててやって来て抗議をするけど……俺にとって、先輩抜きだなんて絶対にあり得ないんだけど!
ということで、俺は先輩とも拳を合わせると、先輩は満足げに頷いた。はは、本当に先輩は可愛いなあ。
「……一応、私も同じ生徒会メンバーなんですが」
おおっと、まさか氷室先輩からもそんな声が出るとは思わなかった。
でも……氷室先輩だってもちろん、大切な
だから。
「はい、氷室先輩」
俺は氷室先輩に向かって拳を突き出すと。
「はい」
氷室先輩は表情を変えずに、コツン、と拳を合わせてくれた。
「さて、後片づけは明日の投票後にすることにして、今日のところは解散としよう。それと……みんな、本当にありがとう」
そう言うと、桐崎先輩は深々とお辞儀をした。
おっと、先輩一人にそんな真似させてどうするんだよ。
俺は慌てて桐崎先輩に倣うようにお辞儀をすると……はは、サンドラと氷室先輩も考えることは一緒か。
すると。
「あはは! ボク達はこれからも、この生徒会を応援するよ!」
「エエ! あんなクズみたいな元生徒会メンバーなんか、蹴散らしてしまうのヨ!」
「おお! 頼んます! 師匠!」
――パチパチパチパチパチパチ!
立花やプラーミャ、加隈達から激励の言葉とともに、万来の拍手が生徒会室を包んだ。
◇
「さて……それで、今日はどうするのだ?」
みんなが生徒会室を後にし、残っているのは俺と先輩、そしてサンドラの三人だけになった。
立花達はこれから“アルカトラズ”
「あはは……先輩、サンドラ、その……付き合ってもらっても……?」
「ふふ、当然だ」
「エエ! プラーミャ達に負けてられませんもノ!」
はは……本当に、この二人は……。
「はい! じゃあ、今日も“ぱらいそ”
「うむ!」
「
そして俺達は、戸締りをして初心者用の
すると。
「あれ? 氷室先輩?」
解散になって真っ先に帰ったはずの氷室先輩が、校舎の陰で誰かと話をしていた……って、あれは!?
「……先代の生徒会長、牧村クニオ、だな」
「どうして氷室先輩があの男ト……?」
「……分からない。だけど」
気づけば、俺は氷室先輩に見つからないように、回り込みながら二人の
そして先輩とサンドラも、俺の後に続く。
……ここまで近づけば。
俺は死角から、二人の会話に聞き耳を立てると。
「……クフフ。だから、明日は君が開票を行うようにするんだ。そうすれば、票の操作なんて簡単だろう?」
「……そうですね」
「「「っ!?」」」
二人の会話に、俺達三人は息を飲んだ。
まさか牧村クニオの奴、氷室先輩を使って明日の投票で不正しようってのか……!
「クッ!」
サンドラが飛び出そうとするのを、俺と先輩が止める。
まずは、会話を全部聞き終えてからだ。
「クフ、君が利口でよかったよ。ああ、もちろん次の生徒会長には君を指名するから、安心したまえ」
「ありがとう、ございます……」
「クハハ! だけど君、ここまでしてあの桐崎サクヤから生徒会長の座を奪いたいのかい? 僕を追い出した時は、そこまで彼女を嫌っているとは思わなかったけど?」
「……余計なお世話ですよ。ですが……これで、
「クフ、これは失敬」
クスクスと下卑た笑みを浮かべる牧村クニオと、無表情でどこか遠くを見つめる氷室先輩。
そして、俺の隣で唇を噛みながら
だけど……はあ、結局は『まとめサイト』の通り、かよ……。
「さて……これ以上見ていても仕方ない。初心者用の
「エ、エエ……」
「…………………………」
戸惑うサンドラと、無言の先輩にそう声を掛け、俺達はその場を後にする。
そして。
「……ま、ここは
後ろを振り返り、俺は先輩とサンドラに聞こえないほどの大きさで、そう呟いた。
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