第134話 ジークフリートのその先
「
教室に入るなり、俺はサンドラを廊下に連れ出して誘ってみると、サンドラは二つ返事で了承してくれた。
「それデ……こうやってわざわざ廊下に連れ出してその話をしたってことハ、
「はは、話が早くて助かるよ」
「フフ……となると、ヨーヘイとワタクシ、あとは先輩ってところかしラ?」
「正解!」
クスリ、と笑うサンドラに向け、俺はサムズアップした。
「一応、理由を聞いてモ?」
「ああ。理由は単純、俺が一番信頼してる二人だってことと、俺達が既にクラスチェンジしてるっていう、この二点だ……って、サンドラ?」
「フエ!? も、もう……ヨーヘイのバカ……」
「ええー……」
先輩もそうだったけど、サンドラの奴もなんで照れてるんだよ……。
まあいいや。
「そういうわけだから、今日の生徒会の仕事、サッサと終わらせるぞ。それと……覚悟しとけ。多分、今回の
「ッ! そ、そうなんですのネ……」
俺の言葉を聞いたサンドラが、ゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「ねえねえ、何の話をしてるの?」
「うお!?」
「フエ!?」
いきなり後ろから声を掛けられ、思わず変な声を出した俺達が振り返る。
「えへへー」
「な、なんだ立花かよ……というかお前、妙に嬉しそうだな……」
「あ、分かる? やっぱり望月くんだねー!」
そう言うと、立花はご機嫌な様子ですり寄ってきた。というか近い、離れろ。
「見て見て! ホラ!」
立花がポケットからガイストリーダーを取り出し、俺に見せる。
すると。
—————————————————————
名前 :ジークフリート
属性 :
LV :50
力 :A
魔力 :A
耐久 :A
敏捷 :A
知力 :A
運 :A
スキル:【グラム】【竜の恩恵】【竜の息吹】
【竜特効】【チェンジ】【火属性反射】
—————————————————————
「おお! いつの間にかレベル五十になってんじゃん!」
「えへへ、すごいでしょ!」
「おう! でも、そうなると、もうクラスチェンジできるんじゃないのか?」
俺は立花にそう尋ねると、立花は少し困った表情を浮かべた。
アレ? 『まとめサイト』によれば、主人公の場合は特定の条件もなくクラスチェンジができるはずなんだけどなあ……。
「じ、実はその……そのことで相談があるんだ……」
「相談?」
ハテ? 俺に相談って一体何だ?
「その、ね……? クラスチェンジ、いくつか選択肢があって……」
「そうかあ……」
確かに、主人公にはクラスチェンジ先にいくつかの選択肢がある。
一つは[オーディン]。強力なスキルである【竜の恩恵】や【竜の息吹】、【竜特攻】、【チェンジ】を失う代わりに、さらにチートな【グングニル】、【スレイプニル】、【エインヘリアル】というスキルを手に入れることができる。
次に[ベオウルフ]。こちらは[ジークフリート]のスキルをそのまま全て受け継ぎ、さらに強力なスキル、【フルンティング】が追加される。まあ、[ジークフリート]の上位互換だな。
一応、『まとめサイト』ではこの二つをオススメのクラスチェンジ先として挙げていたなあ。
「それで……立花はどれにしようって考えてるんだ? というか、どんな選択肢があるんだよ」
俺は『まとめサイト』で知ってはいるものの、話のつじつまを合わせるために、あえて尋ねた。
「ええと……[オーディン]でしょ? それに[ベオウルフ]に……」
ふむふむ、やっぱり。
「あと、[
「はあ!?」
最後に告げた
い、いや、[伏犠]って言ったら、『ガイスト×レブナント』の初回予約特典でもらえる、[ジークフリート]の着せ替えアバターじゃん!?
だから、ステータスは[ジークフリート]と全く同じはず……なんだけど……。
「ねえねえ、望月くんはどれがいいと思う?」
「お、おう……」
いや、こんなの俺が選べるわけねーよ!
正直、『まとめサイト』の通りなら[オーディン]か[ベオウルフ]のどちらかだろう。だって、[伏犠]は[ジークフリート]のステータスと全く同じなんだから。
だけど……[シン]っていう例外もある。
[伏犠]を選ぶのは賭けだけど、そんな例外も含めて検討するとなると……。
「ムムム……」
「あ、あはは……ボ、ボクももう少し、自分で考えてみる、ね……」
いや、だったらなんで相談したんだよ?
「……本当は、立花クンは答えが出てるんじゃないかしラ」
「え? そうなの?」
「エエ……だって、このワタクシがそうでしたもノ」
サンドラの意外な言葉に、思わず目を見開く。
立花はともかく、サンドラはどうして[トール]じゃなくて[ペルーン]を選択したのか、実は前々から気になっていたんだ。
「フフ……私の中で二つの選択肢が現れたあの時、何故かこう思ったノ。ヨーヘイとこれからもずっと一緒にいたいなラ、[ペルーン]を選ぶべきだっテ」
「っ!?」
それってつまり、俺の仲間になるか、主人公……立花の仲間になるか、ってことなのか? ……って、イヤイヤ、そんな馬鹿な話はないだろ。
俺はサンドラの言葉を否定するかのように、首を左右に振った。
「ま、まあ、後は立花自身が考えるだろ……」
俺はごまかすようにそう言うと、サンドラと一緒に教室に戻った。
だけど……サンドラのその言葉は、俺の脳裏からずっと離れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます