第120話 ボクの憧れの主人公④

■立花アオイ視点


 その後、ボクは望月くんと……“桐崎サクヤ”先輩と一緒に、学園へと向かった。


 桐崎先輩は学園で生徒会長をしているらしく、望月くんとすごく仲が良さそうだった。

 ボクは、女の子に間違われたことよりも、その事実のほうが嫌だった。


 ……なんだか、悔しい。

 ボクがもっと早くに望月くんと知り合っていたら、絶対にボクのほうがもっともっと仲良くなれたのに……。


 少し雰囲気が悪いまま、ボクは二人と別れて職員室へと向かった。

 すると……そこには、金髪で背の低い、琥珀色の綺麗な瞳をした女の子がいた。

 外国の女の子なのかな……まるで、妖精みたいだ。


「アナタハ?」

「あ、ボ、ボク、今日からこの学園に転校してきた、“立花アオイ”!」

「ソウ……ヤーは“プラーミャ=レイフテンベルクスカヤ”、よろしク」


 そう自己紹介すると、彼女……プラーミャさんは興味なさそうにプイ、と顔を背けてしまった。

 ウーン……気難しい人なのかな……。


 その後、ボクとプラーミャさんは、担任になる葛西先生の後をついて行った。

 どうやら、プラーミャさんもボクと同じ転校生で、しかも同じクラスになるみたい。


 でも、それ以上にボクには嬉しいことがあった。

 だって、ボクは望月くんと同じクラスになったんだ!

 あはは、もうこれって運命なんじゃないかな!


 やっぱり望月くんは、ボクの本当の友達になるために用意された・・・・・人なんだ!


 えへへ、席も彼の隣だし、ヒロインっぽいプラーミャさんもいるし、やっぱりボクは主人公だったんだなあ……。


 ボクは望月くんの横顔を眺めながら、これからの学園生活に胸を弾ませていた。


 ◇


 それから、ボクは望月くん達と一緒に、初心者用の領域エリア見学を済ませた後、一年生の必修課題である“グラハム塔”領域エリアで訓練をした。


 望月くんは、桐崎先輩のほかにもプラーミャさんや、その双子の姉であるサンドラさんとも仲が良さそうだった。

 聞いたところによると、プラーミャさんは夏休みにサンドラさんのところに遊びに来ていて、その時に仲良くなったみたい。羨ましい。


 だけどボクだって、これから望月くんともっともっと仲良くなるんだ!

 だ、だから、もっと望月くんの傍にいないとね! うん!


 なのに望月くんは、ボクが近付くと、少し困った顔をするんだ。

 ボ、ボクのこと嫌いってわけじゃないけど……それでも、ちょっとショックだなあ……。


 そんな風に過ごしていたボクだけど、転校四日目の金曜日……イヤな奴が教室にやって来た。


「オイ! ゴブリンの野郎を出せ!」


 初め、コイツが何を言っているのか分からなかったけど、他のクラスメイトがコッソリ教えてくれた。


 コイツの名前は“加隈ユーイチ”。

 一学期の時、望月くんを馬鹿にしていた奴らしい。


 ……こんな奴が!


 気がついたら、ボクはコイツの……加隈ユーイチの前に立っていた。


「……なんだ、オマエ?」

「望月くんにオマエみたいな奴、会わせるわけないだろ。帰りなよ」

「あん! ウルセエ! 大体オマエ、あのゴブリンの何なんだよ!」


 何なんだよって、そんなの決まってる。


「ボクは……転校してきて初めてできた、望月くんの友達・・だよ。キミみたいなクズが、望月くんに会う資格なんてないから」

「オ、オマエ! 転校生のクセに生意気なんだよ!」


 そう叫ぶと、教室に来た望月くんが慌てて駆け寄ってきた。

 ひょっとしてボクのこと、心配してくれたのかな……だったら、嬉しいな……。


 その後もこの加隈ユーイチと口論になり、とうとうこのクズは精霊ガイストを召喚した。

 だから、ボクは[ジークフリート]を召喚して、アッサリと倒した。


 もう二度とこんな真似ができないようにトドメを刺そうとしたんだけど、望月くんに止められちゃった。

 しかも、それだけじゃ飽き足らずに、望月くんは“グラハム塔”領域エリアの攻略に、加隈ユーイチもメンバーに加えたんだ。


 当然ボクは反対した。

 でも、望月くんは加隈ユーイチをメンバーに加えるといってきかない。


 結局その時は、チームを二つに分けることで渋々頷いたけど……ボクはどうしても納得できない。

 そんな気持ちが態度に出てたみたいで、ボクはプラーミャさんと事あるごとに衝突した。

 でも、それもこれも加隈ユーイチと、望月くんが悪いんだからね?


 ま、まあ、日曜日に一緒に遊ぶ約束もしたし、望月くんにあんなに真剣にお願いされちゃったから、結局は加隈……くんを加えることを許しちゃったんだけどね。


 そして、いよいよ日曜日。

 ボクは待ち合わせ時間より一時間以上も早く家を出た。


 でも、望月くんも三十分前には来てくれた。

 えへへ……こういうところ、気遣いができて本当に優しいなあ……。


 その日は目一杯楽しんだ。

 ゲーセンに行ったり、カフェでお茶したり……あ、あはは、これじゃまるで、デートみたい……。


 そんな夢みたいな一日を過ごした日曜日から五日後。

 ボクは……望月くんからダメ出しをされてしまった。


 “グラハム塔”領域エリアを踏破して、望月くんに真っ先に報告したけど、実は望月くん達はボク達の様子をコッソリと見ていて……そして、ボクは及第点以下・・・・・だって宣告されちゃった……。


 分かったよ……望月くん……。

 だったら、ボクはもっともっと強くなって、キミに認めてもらう!


 桐崎先輩や、サンドラさんや、プラーミャさんや、加隈くんも必要ないくらいボクが強くなれば、キミはボクだけを隣に置いてくれるよね?


 ボクだけを……見てくれるよね……?

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