第106話 呼び出し
「あー……疲れたー……」
家に帰って風呂に入った後、俺はベッドの上に寝転がる。
いや、とりあえず二つ目の鍵はゲットできたけど、あと半分もあるんだぞ!?
ここまで来るだけでも相当大変なのに、さらに二つの塔を俺達だけで攻略って……うん、心が折れる。
『んふふー、ウマウマなのです!』
「ハア……[シン]は幸せそうでいいよなあ……」
嬉しそうにアイスを頬張る[シン]を眺めながら、俺は思わず苦笑した。
その時。
――ピリリリリ。
「ん? 電話?」
俺は傍にあったスマホを手に取ると……掛けてきたのは、立花だった。
「もしもし」
『あ……望月、くん……』
スマホの向こうで、立花は遠慮がちに俺の名を呼んだ。
「よう、電話してくるなんて珍しいな、どうした?」
『う、うん……』
俺はできる限り普通を装って尋ねると、立花が口ごもる。
そして、本音を言えば何を話していいのか分からない自分がいるわけで。
桐崎先輩が言ってくれたように、あの時の俺の立花への指摘に後悔はない。とはいえ、だからといって立花に対して気まずい思いがないわけじゃないからな……。
『あ、あのっ!』
「お、おう……」
『明日……の、放課後……“グラハム塔”
「タロースの? また何で?」
『来てくれれば分かるから……それじゃ、待ってるね……』
「あ! お、おい!?」
――プツ、ツー……ツー……。
立花は、それだけを言い残して通話を切りやがった。
「立花……」
俺はアイツの名前をポツリ、と呟く。
“グラハム塔”
この時、俺は違和感に気づく。
「アイツ、そんなところまでどうやって行くつもりなんだ……?」
俺や先輩、サンドラならともかく、立花の奴にソロでそこまでたどり着く実力があるわけじゃない。
そもそも俺の記憶では、立花の[ジークフリート]のレベルは“グラハム塔”
それに、あれからまだ一週間そこそこしか経っていないし、劇的にレベルが上がってるとも思えない。
「……まあ、明日行ってみたら分かるか」
うん……まずは明日の放課後、第六十階層に行ってみよう。
ただ。
「悪い。チョットだけ約束、破らせてもらうぞ」
そう呟くと、俺はスマホを手に取った。
◇
――今日一日の授業終了を告げるチャイムが鳴り、クラスメイト達が帰り支度を始める。
で、俺はチラリ、と隣を見やると。
「何?」
「う……い、いや、何でもない……」
プラーミャにギロリ、と睨まれ、俺は慌てて前に向き直った。
いや、俺としてはプラーミャを見るつもりはなかったんだけど。
それよりも。
「立花の奴……結局来なかったな……」
とはいえ、昨日の夜、アイツは電話で確かに言った。
『明日……の、放課後……“グラハム塔”
と。
となると立花の奴、実は既に第六十階層にいて、俺が来るのを待ってたりして。
「とと、こうしちゃいられない」
俺は教科書やノートをヒューズボックスに放り込むと。
「んじゃサンドラ、またな」
「エエ。またネ、ヨーヘイ」
サンドラと挨拶を交わすと、俺は一人、“グラハム塔”
そして。
「よっし!」
俺は気合いを入れるため、パシン、と両頬を叩く。
「さあて、行くか! [シン]!」
『ハイなのです!』
俺は[シン]とハイタッチを交わすと、“グラハム塔”
「いやあ、この
『本当なのです。いい加減飽きたのです』
「だよなあ」
俺と[シン]は、邪魔をする
はは。つい数か月前は、この
それが今では……。
『? マスター、どうしたのです?』
「ん? いや……俺達、強くなったと思ってな……」
『ハイなのです! [シン]はつよつよなのです!』
そう言うと、[シン]はムン、と力こぶを作る仕草を見せた。
「はは、でも……俺達は、もっと強くなろう。誰にも負けないくらい、強く」
『マスターは貪欲なのです! 最強厨なのです!』
「どこでそんな言葉覚えたんだよ……」
[シン]の言葉に、俺は思わずガックリと肩を落とす。
いや、俺の
「ま、まあいいか……」
俺は頭を
『えへへ……[シン]、絶対に強くなるです。マスターと一緒に』
「[シン]……ああ、そうだな……」
俺は[シン]の頭を優しく撫でると、[シン]は嬉しそうにはにかんだ。
[シン]、ありがとう……。
そして、俺達が“グラハム塔”
とうとう第六十階層にたどり着く。
そこには。
「望月くん……待ってたよ……」
「立花……」
タロースの変わり果てた姿……大量のマテリアルを踏みつける、立花の姿があった。
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