第75話 お節介でバカで、優しいアイツ⑤

■アレクサンドラ=レイフテンベルクスカヤ視点


『……ネエ、ちゃんとヤーの話、聞いてル?』


 ルーシの空港に到着したプラーミャが、スマホ越しに呆れた声で指摘すル。


「エエ、聞いてますわヨ……フワア……」

『アー! 欠伸あくびしタ!』


 イヤイヤ、欠伸あくびくらい許して欲しイ。ルーシはまだ夜の七時かもしれませんけド、コチラはもう夜中の一時ですのヨ?


『モウ……それよりも、本当に『レイフテンベルクスカヤ家』から離れるノ?』

「エエ……それは伝えた通りですワ……」


 サンドラはまだ未練があるらしく、また同じことを聞いてきタ。

 デモ、ワタクシの決意は変わらなイ。これからは違う道ヲ……『デモ、そうするとサンドラはいきなり路頭に迷うことになるけド……』……ヘ?


「チョ、チョット待ってくださいまシ!? ど、どうしてワタクシが路頭に迷うんですノ!?」

『ダッテそうでショ? 今住んでるところも生活費も、全て『レイフテンベルクスカヤ家』が用立てているのヨ?』

「ア……」


 そうだっタ。もし、ここで『レイフテンベルクスカヤ家』を離れることになったら、ワタクシは途端にホームレスニ……!?


『……気づいてなかったみたいネ』

「フエエ……」


 ワタクシは思わず落胆の声を漏らしてしまっタ。


『それに、もしそんなことになったら、パパ、自殺しちゃうかモ』

「エエエエエ!? ど、どうしてですノ!?」

『アラ? 気づいてなかったノ? “出来損ない”とか言いながらもパパがサンドラを後継者候補から外さないのハ、パパがサンドラ好き過ぎるからヨ?』

「ハイ……?」


 ワタクシのことが好き過ぎル? あのパパガ!?


『ソウヨ。パパはサンドラを後継者にして、ずっと家から出さないんダって、いつも言ってるシ。だから、彼氏や結婚も絶対に認めなイって言ってタ』

「ソ、ソウ……アハハ……」


 突然プラーミャから放たれた言葉に、ワタクシの口から乾いた笑い声が漏れタ。


『それト!』

「まだあるんですノ!?」


 ただでさえショックを受けているところに、これ以上追い打ちをかけるようなことは止めて欲しいんですけド!?


『ヨーヘイだけど……どうするノ? 桐崎様は手強いわヨ?』

「ウ……」


 プラーミャの指摘に、ワタクシは声を詰まらせル。

 というカ。


「どど、どうしてそう思うんですノ? ワ、ワタクシとヨーヘイは恋人同士でしてヨ?」


 ワタクシはとぼけながらそう返すと。


『ハア……それが嘘だってことは、もうとっくに分かってるわヨ』

「フエエ……」


 溜息と共に告げられた言葉に、ワタクシは変な声を上げル。

 ま、まさかバレてただなんテ……。


『負けたく、ないでショ……?』

「…………………………ウンダー

『ダッタラ! このプラーミャがパパの件も含めて、バッチリ支援してあげル! フフフ……楽しみに待ってなさイ!』

「ホ、ホント! プラーミャ、ありがとウ!」

『クフッ!』


 プラーミャのサポートの申し出に嬉しくなってお礼を言うと、プラーミャは変な声を上げタ。


『ト、トニカク! そういうことだから、サンドラは安心して待ってテ・・・・!』

「エ、エエ!」


 プラーミャの言葉に、ワタクシは勢いよく返事をしましたけド……待ってテって、どういう意味ですノ?


『それじゃ、そろそろ切るワ。またネ』

「エエ……またネ」


 通話終了のボタンをタップし、ワタクシはベッドに座ル。

 フウ……デモ、パパの本心がそうだったなんて、何というか、ソノ……どう反応していいのか分からなイ……。

 ただ、そんな下らない理由で振り回されていたことに関しては、怒りを覚えますワ。


 プラーミャも、ヨーヘイのことを含めてバックアップすると言ってくれましたし、そこは安心……って。


「それにしてモ……プラーミャはどうやって手伝ってくれるつもりかしラ……」


 ワタクシは首をかしげるけど、まあ、プラーミャだから何とかするんだろウ。


 だけド。


「フフ……ワタクシがこんな考えができるようになって、家族の本心を知って、そして救われたのは……全部、ヨーヘイのおかげですわネ……」


 そう呟くと、ワタクシはヨーヘイの顔を思い浮かべる。

 いつもどこかふざけているような態度を見せるくせニ、いざという時は頼りになっテ、支えてくれテ、そして、信じてくれテ……。


「……二学期になったら、モット頑張りませんト」


 そう……ヨーヘイを攻略するには、あの桐崎先輩というがあル。

 ハッキリ言って、どんな領域エリアボスなんかよりも強敵ダ。


「デモ……負けませんワ! だから、パパ、ママ、そしてプラーミャ……力を貸しテ!」


 深夜二時に差し掛かろうという中、ワタクシは机に立てかけてある、十歳の時に撮影した家族の笑顔の写真・・・・・・・・に向かって宣言しタ。

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