第74話 お節介でバカで、優しいアイツ④

■アレクサンドラ=レイフテンベルクスカヤ視点


 第十階層にいる領域エリアボスは、軍服と白衣を着たスケルトンだっタ。

 攻撃手段は医療用のメス、【水属性魔法】、そして、部屋に仕掛けられた毒ガスダ。


 ヨーヘイと先輩がサポートに回り、ワタクシが領域エリアボスを倒しタ。

 クラスチェンジをしてから戦ってもよかったけド、何故だかこの時のワタクシは今じゃなイ・・・・・って思っタので、クラスチェンジはしなかっタ。それに、そうしなくても倒せたのだシ。


 領域エリアボスを倒した後、閉じられていた部屋の扉がゆっくりと開くと、ソコには……普段と様子の違うプラーミャがたたずんでいタ。


 そんなプラーミャは、このワタクシが領域エリアボスを倒したことが受け入れられないらしイ。

 突然、幽子の渦に包まれたプラーミャがその姿を現すと……巨大な鉄槌を担いだエルフの幽鬼レブナントを従え、その瞳が黒く輝いていタ。


 思わず膝から崩れ落ちそうになるワタクシを支え、ヨーヘイがプラーミャに尋ねル。

 すると、プラーミャから返ってきた答えは、少し意外なものだっタ。


 ……プラーミャは、弱いワタクシを守ることで、自分自身の価値を見出していたなんテ……。

 こんなノ……どうすればプラーミャが元通りになるノ? また、弱いワタクシのままで居続けろって言うんですノ……?


 だけド、ヨーヘイの放った言葉は違っタ。

 彼はハッキリと言っタ。プラーミャを倒せト……強くなったワタクシを、見せつけてやれ、ト。

 しかも、精霊ガイスト同士の戦いを、ただの姉妹ゲンカ・・・・・だなんテ……本当に、メチャクチャデ、頼もしくテ、優しくテ……。


 だったラ、見せてさしあげますワ! ワタクシとプラーミャの、最ッ高の姉妹ゲンカ・・・・・ヲ!


 ワタクシはヨーヘイとコツン、と拳を合わせると、クラスチェンジはまだせずに、[イヴァン]のままでプラーミャに立ち向かう。

 まずは、ワタクシがこの学園に来てどれほど成長したのかを見せつけるためニ。


 デモ、やはりプラーミャは強く、徐々に押し込まれル。

 何とか反撃を試みるけド、『敏捷』のステータスで劣る[イヴァン]では、手数で負けてしまウ。


「アウッ!?」


 [イリヤー]の槍の一撃が、[イヴァン]の右肩をかすっタ。

 ワタクシは急いでプラーミャと距離を取ると、彼女もワタクシから離れ溜息を吐ク。


 そして、ワタクシに以前のように戻れと諭ス。

 ワタクシの意志は、まるで無視しテ。ワタクシが弱いと、決めつけた上デ。


 デモ。


「サンドラ!」


 彼は……ヨーヘイは、右の拳を高々と突き上げ、このワタクシを鼓舞すル。

 それこそ、ワタクシが負けるだなんて微塵みじんも疑っていないかのような瞳デ。


 ワタクシは思わず笑いがこみ上げル。

 そんなヨーヘイの気持ちが嬉しくテ。ヨーヘイの、想いが嬉しくテ。


 だかラ。


「フフ……ヨーヘイ、ワタクシは負けなイ! 信じてくれる、アナタのためにモ! だかラ!」


 【絨毯じゅうたん爆撃】を仕掛けようとする[イリヤー]に、ワタクシはあえて[イヴァン]を突っ込ませル。

 そしテ。


「クラスチェンジ……開放!」


 ワタクシは、とうとう[イヴァン]をクラスチェンジさせル。

 [イヴァン]から、“雷神”[ペルーン]へト。


 フフ……ヨーヘイったら、すごく驚いた顔をしていますワ。

 そこで見てていテ。アナタが信じてくれた、ワタクシ達の力ヲ!


 [ペルーン]は、メイスと盾を構えて[イリヤー]へと突っ込んでいク。

 プラーミャも、【スヴャトゴル】を発動させ、【絨毯じゅうたん爆撃】による攻撃を仕掛けてきタ。


 デモ……それあもう、ワタクシ達には通用しなイ!


「【ガーディアン】」


 [ペルーン]の前にいくつもの盾を展開し、[イリヤー]が放つ槍衾やりぶすまを全て防ぎ切ル。


「プラーミャ……これが、ワタクシの意志ですワ! 【裁きの鉄槌】!」


 【絨毯じゅうたん爆撃】を防がれ、空中で無防備になった[イリヤー]に、[ペルーン]はメイスを容赦なく叩き込んダ。


「プラーミャ!」


 悲鳴を上げながら吹き飛んだプラーミャの元へ、ワタクシは慌てて駈け寄っタ。

 必死で訴えかけるプラーミャ。聞けば、何ということはなイ……プラーミャはワタクシと一緒にいたかっただけなのダ。ただ、その方法を間違えているだけデ。

 だから、今度こそワタクシの想いを伝えル。決して、プラーミャが嫌いなんかじゃなくテ、ワタクシは、これまでとは違う道を歩みたいのだト。


 ようやく分かってくれたプラーミャの瞳は、漆黒から琥珀色の美しい瞳に変わり、ぽろぽろと涙をこぼしタ。


 ワタクシはそんな彼女と抱きしめ合いながら、ただ、泣き合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る