第61話 バカは余計
「ワタクシはもう、ルーシには帰りませんワ! この国で、ヨーヘイと添い遂げますノ! ですから、『レイフテンベルクスカヤ家』の継承権も放棄するのですワ!」
「「「はああああああああああああ!?」」」
プラーミャだけでなく、俺と先輩も一緒になって絶叫した。
というかサンドラ!? メチャクチャ話がでかくなってない!?
「ままま、待て!? そそ、そもそもお前達はまだ未成年なのだぞ!? そんな話がまかり通るわけがないだろう!」
桐崎先輩がプラーミャを差し置いて、すかさずサンドラに抗議する。
「そ、そんなノ! その時が来るまで待ちますワ! ネエ、ヨーヘイ!」
「うあ!?」
こ、ここで俺に振るのか!? こんなのどう答えりゃいいんだよ!
サンドラの奴は俺を睨みながらしきりにウインクしてプレッシャーかけてきやがるし、先輩は先輩で俺を凝視してるし!?
「ヨ・ー・ヘ・イ・?」
く、くそう……このまま逃げ出したい気分だ……。
先輩……こ、これはあくまでも演技ですからね? 分かってますよね? くれますよね? ね!
「そ、そうだ……お、俺はサンドラと、その……添い遂げる、です……!」
チクショウ、プレッシャーで声は震えるわ、手汗がヒドイわで、正直ロクな状態じゃない。
そして、先輩の俺を今にも殺してしまうんじゃないかというほどの【威圧】、シャレにならない。お願いですからスキルは使わないでください。
「本気……なノ……?」
プラーミャが、震える声でサンドラに尋ねる。
それを受け、サンドラは……力強く頷いた。
「ソウ……分かった、パパとママにはヤーから話しておきまス……」
「プラーミャ……ありがとうですワ……」
イヤイヤイヤ、二人共しんみりしてるけど、コレ、茶番だからね!? 俺、そんなつもりないからね!? ね!
「……先に進もう」
先輩は絞り出すような声でそう言うと、無言のまま歩き出した。
俺達も、その後に続く……んだけど……。
「「「「…………………………」」」」
うん、完全に終末を迎える世界に絶望するかのような雰囲気だ。
俺はサンドラをチラリ、と見ると……うん、目が合った瞬間、しきりに謝る仕草をしやがった。本当に後で覚えてろ。
一方で、プラーミャは唇を噛んでずっと
そして、第十階層へと続く階段を昇り切ると……これより下の階層とは打って変わり、
というか、
「おかしい……この階層、何故
「ほ、本当ですワ……」
先輩とサンドラが辺りを警戒しながら、そう呟く。
は、早く言わないと……っ!?
すると、突然プラーミャに腕をグイ、と引っ張られてしまい、俺は思わずよろめいた。
「プ、プラーミャ!?」
「……ネエ。アナタ、本当にサンドラと添い遂げる気なノ?」
プラーミャは琥珀色の瞳に涙を
というか、正直耐えられそうにない。
「ヤーが言うのも何だけド、サンドラは名門『レイフテンベルクスカヤ家』の中において、その資質は歴代の中でも特に劣っていまス。パパとママは、サンドラのことを“
「…………………………」
「そんなサンドラが、『レイフテンベルクスカヤ家』の
プラーミャは俺に必死で訴えかける。
まるで……サンドラは出来損ないだから、オマエじゃ面倒見切れないから諦めろ、とでも言うように。
「……プラーミャはサンドラのこと、そう思ってるのか?」
「
「そっか……」
はは、何だよソレ。
「フザケルナ」
「……アナタ?」
「フザケルナ! アイツの……サンドラのこと、本当に知りもしないで! 勝手なことばかり言いやがって!」
「ッ!? ヨーヘイ!?」
「望月くん!?」
俺の怒鳴り声に、サンドラと先輩が困惑しながら反応した。
はは……俺が馬鹿にされた時でも、
「オマエ、本当に双子の妹かよ。今までサンドラの何を見てきたんだよ」
「…………………………」
「……オマエに言っといてやるよ。『レイフテンベルクスカヤ家』だっけ? そんなクソみたいな家に、今後絶対にサンドラを係らせたりしねーからな!」
何だよ……サンドラの頑張りを、想いを、苦しみを、何も知らないくせに……!
『まとめサイト』でサンドラのことを知ってるからじゃない。教室で最初に絡んできたあの日から今まで、俺がこの目でサンドラを見てきたんだ!
サンドラは、すごい奴なんだ!
「ヨーヘイ……」
名前を呼ばれてそちらを見ると……サンドラはアクアマリンの瞳からぽろぽろと涙を
「……行こうぜ」
俺はサンドラの頭を少し乱暴に撫でてやると、
すると。
――ポン。
「……先輩」
「ふふ……私も、サンドラがすごいことは理解しているよ。だから、これからは君と私で彼女を支えてやればいい」
「はい……!」
隣に並ぶ先輩に力強く頷き、さらに奥へと進んで行く。
「ヨーヘイ……」
「……おう」
「ワタクシ……ワタクシ、頑張るかラ……! モットモット、頑張るからア……!」
「はは、何言ってんだよ。もう、充分過ぎるほど頑張ってるじゃないか。というか、あまり頑張られ過ぎると、俺の立つ瀬がないんだけど?」
泣きじゃくるサンドラに、俺はわざとおどけてそう言うと。
「フフ……ヨーヘイのバカ」
「バカは余計だ」
「見てなさいヨ? アッと驚かせてやるんですかラ」
「おう、そりゃ楽しみだ」
そして……俺達は
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