第39話 脳筋精霊(ガイスト)
「プハー、美味しかったのですワ!」
夕食を終え、到底貴族のお嬢様とは思えないような
だけど、サンドラのその気持ちもすごくよく分かる。
用意された夕食は、煮込みハンバーグをメインに、サラダとニシンのマリネ、程よく温められたパンという、比較的シンプルなメニューだったけど、そのどれもが一流のお店で出されても……学園の食堂にも負けないほどに美味しかったのだ。
「ふふ、満足してもらえたようで嬉しいよ」
「この後、デザートをお持ちします」
そう言うと、メイドのカナエさんは恭しく一礼して食堂を出た。
「ふふふふふ、いつもはデザートなど出ないのに、今日はカナエさんも張り切ってるな」
などと言いながら、桐崎先輩は口元をゆるっゆるにしていた。本当にスイーツが好きなんだな。
……また今度、先輩と一緒にルフランに行くとしよう。
「ところでサンドラ、今日の攻略でどれくらい
「フエ? そういえば、確認してませんでしたワ……」
俺がおもむろに尋ねると、サンドラはたった今思い出したとばかりの表情を浮かべた。
「ふふ、なら彼にも一緒にステータスを確認してもらうといい。なにせ、これから二人で“グラハム塔”
「エー……ですワ……」
先輩にそう言われるが、サンドラは口を尖らせながら俺をジト目で睨んだ。
まあ、ライバル(一応)に自分の手の内を明かすのは嫌だよな……。
「だったら俺の[シン]のステータスも見せてやるから。それならいいだろ?」
「マ、マア、それならフェアですわネ……」
ということで、サンドラは渋々ガイストリーダーを取り出すと、俺とサンドラは一緒に画面を眺める。
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名前 :イヴァン
属性 :皇帝(♂)
LV :26
力 :S+
魔力 :E-
耐久 :B
敏捷 :E
知力 :D-
運 :B-
スキル:【裁きの鉄槌】【統率】【雷属性魔法】
【雷属性無効】【状態異常弱点】
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うん、分かってはいたけど、完全に脳筋ステータスだな……。
だが、そうは言ってもメインヒロインの一柱、能力そのものは高い。
それに……まあ、これはまたその時に
「それで、ヨーヘイの
「おう」
俺はサンドラにガイストリーダーの画面を見せてやると。
「っ!? な、何ですノコレハ!?」
「はは、なかなかすごいだろ?」
「すごいというカ……こんなの、反則ですわヨ……」
サンドラが目をパチクリとさせながら、俺の顔とガイストリーダーの画面を交互に見る。
まあ、ここに至るまでに死ぬほど努力したからな。
「ダケド……これを見ると、ますます一-二の生徒達は頭が悪いというカ……」
「ああ……といっても、クラスチェンジする前は、確かに馬鹿にされてもおかしくないステータスではあったから……」
「イエ、そういうことではなくて、そもそも可能性を何一つ考慮しないでうわべだけで判断したことが、バカだと言うのですワ」
「あ……」
まさか、サンドラから先輩と同じ言葉を聞けるとは思わなかった。
……別に、サンドラを救うのが、主人公じゃなくたっていいよな……?
「……今では、俺も[シン]も一年生の誰にも負けないほど強くなった。だから……サンドラ、お前がもし
「っ!?」
俺の言葉に、サンドラが一瞬息を飲み、そして。
「……フフ、そうですわネ。その時は……」
彼女は、寂しそうに微笑んだ。
「お待たせしました」
すると、食堂へと戻ってきたカナエさんが、俺達の目の前にデザート……二種類のアイスクリームを置いてくれた。
さて、話はこれくらいにして、デザート食べるか……って。
『マスター! これは何なのです? 何なのです?』
呼ばれてもないのに勝手に出てきた[シン]が、俺の目の前にあるアイスクリームを興味津々で眺めながら、何度も俺に聞いてくる。
というか、
「望月くん、その……急に[シン]を召喚して、どうしたのだ……?」
先輩が
「あ、あははー……俺もよく分からないんですけど、[シン]の奴、俺が召喚しなくても出てこれるみたいで……」
「「はあ!?」」
俺が苦笑しながら答えると、先輩だけでなくサンドラまで驚きの声を上げた。まあ、驚くよなあ……。
「そ、そんなことは聞いたことがないぞ……」
「ワ、ワタクシもですワ……」
いや、俺だって聞いたことないし。
「ふ、ふふ……相変わらず君と[シン]は規格外、だな……」
「規格外って言葉で片づけテ、よろしいんですノ……?」
まあ、[シン]は色々と常識はずれではある。
『敏捷』のステータスは上限値超えてるし、そもそもイベント限定用の
『ねえねえマスター! 何なのです? 何なのです?』
そしてしきりに俺の肩を揺すりながらアイスクリームについて尋ね続ける。
ああもう、メンドクサイ。
「そんなに言うなら食ってみろ!」
『ムグ!? なのです!?』
俺はスプーンでアイスクリームをすくって[シン]の口の中に放り込んでやる。
すると。
『! 美味しいのです!』
目を丸くさせながら、[シン]の表情がぱあ、と明るくなった。
というか、食べられるの!?
『もっと! もっと欲しいのです!』
「お、おう……そ、その、大丈夫なのか……?」
おねだりする[シン]に、心配になった俺はおずおずと尋ねると。
『はいなのです! あの超不味い疾走丸とは雲泥の差なのです! 圧倒的戦力差なのです!』
「そ、そうか……」
俺は自分のアイスクリームの入った器をス、と差し出すと、[シン]はその敏捷性を活かして目にも止まらぬ速さで受け取ると、キラキラした瞳で一通り愛で、ようやく口に入れた。
というか、そんなにゆっくり食べてたら溶けるぞ? と言ってやりたいが、それも社会勉強だ。
『はうはう! 美味しいのです~!』
「そうか、そりゃ良かったな」
俺は苦笑しながら、夢中でアイスクリームを食べる[シン]の頭を撫でてやった……って。
「先輩?」
「あう!? あ、う、うむ……な、何でもない……」
何故か先輩が
ウーン……スイーツ好きな先輩のことだから、そんなに俺のアイスが欲しかったのかな……。
などと考えながら、俺は先輩を眺めながら首を
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