第37話 兄妹弟子?
「ヨーヘイ! 勝負ですわヨ!」
はい、次の日の朝教室に入った途端、俺はサンドラに絡まれております。
見ろよ、クラスの連中もメッチャ笑ってるじゃん。というか、もう一-三の朝の風物詩になっている感があるし。
「ハア……サンドラ、もうこの際だからハッキリ言ってやる」
「! ようやく私の勝負を受ける気になったんですのネ!」
「なんでそうなる! とにかく、俺はお前との勝負を受ける気はないから! オーケー?」
「ノー!」
うん、予想はしていたけど、サンドラは全く聞く耳を持たない。
とはいえ、昨日の夜熟考(十分で終了)した結果、俺は勝負を受けないと決めたんだ。ここで俺が折れるわけにはいかない!
「それに、勝負っていってもテスト結果と
うむうむ、二学期なら主人公も転校してくるし、ソッチに押し付けられるしな。
でも……アレ? 主人公が転校してくるのは一-二だからクラスは違うのか。そうなると、この場合はどうなるんだ?
ま、いいか。
「イヤですワ! それに日がないといってモ、まだ期末テストがありますわヨ!」
「だから! 期末テストの勉強で
一向に俺の言うことを聞かないサンドラに、俺は思わず声を上げた。
なお、こんなことを言ったが、もちろん俺はテスト勉強中も
なのに。
「ふむ……面白い話をしているな」
「先輩!?」
いつの間にか、俺達の後ろに桐崎先輩が来ていた。
「ど、どうしたんですか?」
「うむ。そろそろ期末テストに向けて勉強しなければならない時期なので、君に話をしに来たんだが、ちょうど良い。早速今日からでも勉強するとしよう」
「ええ!?」
そ、そういえば先輩、期末テストは俺の勉強を見るって言ってたもんなあ……ちゃんと覚えていてくれてたんだ……。
俺はそのことに嬉しく思いつつも、一抹の不安がよぎる。
まさか……先輩、ここで俺に勝負を受けるように言ったりしませんよね?
「せっかくの機会だ。望月くん、彼女の申し出を受けてみたらどうだ?」
「先輩!?」
あああああ! やっぱりそんなことを言い出した!
いや、先輩!? なんてことを言うんですか!?
「で、ですが先輩! そんな、わざわざ勝負なんてしなくても!」
「? 何故だ? むしろこのように身近な者同士で切磋琢磨することは、お互いにとって良いことだと思うが?」
そうですけども!? 正論ですけども!?
「ふふ……心配するな。この私が、君をビシビシ指導してあげるから」
「ヒイイ」
お、おおう……ぜひともお手柔らかにお願いします……。
とまあ、俺が先輩に
「そ、そんなのズルいですわヨ! 正々堂々と勝負しなさイ!」
「ええー……」
サンドラが激怒し、ブンブンと腕を振り回す。
だけど、ズルってなんだよ、ズルって。
「ふむ? 私が彼に勉強を教えることは、別にズルではないと思うが?」
「いいエ! ズルですワ! 勝負するならフェアに行うべきでス!」
「ふむ……」
すると先輩は、手で口元を押さえながら考え込んでしまった。
このまま先輩のスパルタがなくなるのならありがたいけど、そうすると今度は先輩と一緒にいられなくなる……ぐむう。
「よし、ならばこうしよう。今日から期末テストまでの間、君も望月くんと一緒にこの私が指導してあげよう」
「はあああああああ!?」
先輩の口から発せられた予想外の言葉に、俺は思わず声を上げた。
「やりましたワ! 学園最強の桐崎先輩の指導なラ、ワタクシは学年最強になりますわヨ!」
そして嬉しそうにはしゃぐサンドラ。ムカツク。
「うむ。望月くんもそれでいいな?」
「ええー……」
「……いいな?」
「はい……」
眉根を寄せる先輩に念を押され、俺はただ頷いた。
はあ……せっかくの先輩との時間が……。
◇
“グラハム塔”
俺達は今、ここで訓練を行っている……というか。
「サンドラ! 後ろから“オーク”が二体来ているぞ!」
「ヒ、ヒイイですワ!」
主にサンドラが先輩による丁寧な指導を受けている。まあ、悲鳴を上げているが気にしない。
というか、俺と先輩がいるということを除いても、この階層においてその実力が通用しているサンドラは普通にすごい。
なお、サンドラの
そんなオッサン
「た、倒しましたワ……」
オークを倒し、サンドラが疲れ切った表情を浮かべる。
「うむ。ではあと五体倒して、今日はここまでにしよう」
「ヒイイイイ!?」
とまあ、先輩は見事にスパルタを発揮していた。うん、頑張れ。
でも。
「サンドラ、先輩は間違いなくお前を強くしてくれる。そのノルマだって、お前の実力ならできると思って課してるんだからな。それに……先輩のおかげで強くなれた奴が
「わ、分かってますわヨ!」
俺は自分の胸を人差し指でトン、と叩きながらそう言うと、サンドラは頬をプクー、と膨らませながら、通路の先にいる二体のオークに突っ込んで行った。
「さて……それじゃ念のため、俺達もサンドラのサポートに行きましょうか……って、先輩?」
「あうあうあうあうあう……!」
何故か、先輩が耳まで真っ赤にしながら両手で顔を覆い隠していた。
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