第33話 一人ぼっちの彼と孤独の私④
■桐崎サクヤ視点
彼は……望月くんは、この私が命に懸けても守ってみせる!
そう決意した矢先、彼は背負っているカバンの中から何かを取り出すと。
「先輩……俺と[ゴブ美]がスピードを活かしてアイツに仕掛け、木箱のある行き止まりへと誘導します。先輩は俺達の後を追いかけ、そして……合図をしたら通路の壁を壊して、アイツが逃げられないように、封鎖してください」
「望月くん!?」
彼からの突然の指示に、私は驚きの声を上げる。
だってそうだろう? この絶望的な状況の中、彼はまるでこの事態を想定していたかのように、具体的に指示を出したのだから。
そして先程カバンの中から取り出していたものも、そのための秘策のようなものだろう。
一体彼は、何手先まで想定しているというのだろうか……。
なら……私は彼に従うのみ。
彼を見つめ、私は静かに頷く。
そして彼は、
今すぐ彼等を止めたかったが、これも彼の作戦なのだろう。私はただ、唇を噛みながらただその様子を見つめていた。
おっと、ここでジッとしていたら魔法に巻き込まれてしまう。私は慌てて彼と反対側の通路の陰に逃げ込んだ。
すると……目の前に氷結の嵐が巻き起こり、先程まで私達がいた場所が、一面氷に覆われた。
思わず私は息を飲む。だが、その間にも彼等は行動を起こし、あの行き止まりへと真っ直ぐに駆けていく。
そしてその後を、
私もすぐに気を取り直し、彼等と
彼等が行き止まりへと到着すると、彼の
彼が
そしてそのまま、この私の元へとそのまま滑り込んでくると。
「おおおおおおおおおおおッッッ!」
私は彼から指示された通り、[関聖帝君]の青龍偃月刀で四方の壁を切り崩し、瞬く間に通路を瓦礫で覆って、
私は思わず歓喜の声を上げるが、彼は「まだです!」と叫ぶと、瓦礫の傍に行ってポケットからライターを取り出した。
着火し、液体の傍へと近づけると……その液体を伝って瓦礫の向こうへと炎が伸びて行った。
「望月くん、これは……?」
「灯油、です」
彼に問い掛けると、そう答えた。
そこで、私は初めて気づく。
彼は万が一に備え、この
疾走丸を手に入れる、ただそれだけのために。
彼は……彼という男は、どこまでこの私の胸を打ち震わせるのだろうか。
「本当に……君という男は……!」
「わっ!?」
私は興奮のままに彼の頭をくしゃくしゃに撫でると、一瞬驚きの声を上げ、彼はすぐに嬉しそうに目を細めた。
ああ……彼は、なんて誇らしい後輩なのだろうか。
彼から指示を受けた後、私達は出口を目指すが、彼はまたこんな失態を犯してしまった私に、変わらず尊敬の眼差しを向けてくれた。
私は、もっと彼の
そう彼に伝えようとすると、無粋にもあの
彼の、予想通りに。
なので、私は三叉路の陰に控えさせていた[関聖帝君]によって、
幾度目かの斬撃を与えた時、とうとう
ガイストリーダーを確認すると……[関聖帝君]のレベルが一つだけ上がった。
クラスチェンジをしてしまうと、レベルアップに必要な幽子量が桁違いに跳ね上がり、もはや学園でのレベルアップはほとんど望めていなかった私にとって、これは予想外だった。
ただ、それだけあの
彼も、どうやらクラスチェンジに必要な、レベル五十に到達したようだ。
私は彼の
彼の
私も、彼の望みが叶うように密かに祈りながら、渦と、彼を交互に見つめ続けた。
その渦が少しずつ小さくなっていき、いよいよ
そんな
「[ゴブ美]いいいいいいいいい!」
『マスタアアアアアアアアアアア!』
そして……彼と
ふふ……本当に、よかった……。
私は
「「しゃべったあああああああああ!?」」
◇
「ふふ……本当に、彼は予想外のことばかりだ」
部屋の椅子に腰掛けながら、私は彼のことを思い出しては口元を緩めていた。
これからは正式に彼と共に
だが。
「か、彼も、この私と、どどど、どこまでも、だなんて、なな何を言っているのだか……」
などと憎まれ口を叩いてみるものの、あの言葉を何度も
「お母様……また、彼を紹介いたしますね」
机に立てかけてある、お母様と私が映った写真を眺め、そう呟く。
そのためにも。
「私は、強くなる。彼の隣にとこまでも居続けるために……お母様を、
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