蛇足編 《ナイの結婚式》
――ナイが18才の誕生日を迎えてから間もなく、王都の陽光教会にて結婚式を挙げる。相手はアッシュ公爵家の娘である「リーナ」そして白猫亭の料理長を任されるまでになった「モモ」だった。
「二人とも綺麗だよ」
「えへへ……」
「な、なんか恥ずかしいな……」
純白のウェディングドレスを身に包んだリーナとモモはナイの言葉に照れてしまい、間もなく式が執り行われる。この日のために大勢の人間が集まり、その中には王族の姿もあった。
「おめでとう、ナイ君」
「ありがとう、アルト」
「ご結婚おめでとうございます、リーナさん」
「王女様も来てくれるなんて嬉しいです!!」
控室にアルトとリノが訪れ、二人は花束を手渡す。有難く花束を受け取りながらナイはアルトと、リーナはリノと語り合う。
「先を越されたね、僕も相手を早く見つけないと父上が怒りそうだ」
「あはは……そう言えばイリアさんと仲良いよね、イリアさんの事が好きだったりしないの?」
「う〜ん……彼女は見た目はいいけど、性格の方があれだからね。仮に結婚しても王族の権利を利用して色々と問題を起こしそうだ」
「…………(←否定できない)」
アルトは今の所は結婚は考えておらず、王族でしかも美形の彼ならばいくらでも結婚相手などいるように思われるが、当人は結婚したいという願望がない。
一応は王族の務めとして誰かと結婚して子孫を残さなければならないと考えているが、アルトと親しい間柄の女性はイリアやリーナを除けばヒイロ、ミイナ、ヒナぐらいしかいない。しかし、どの相手も彼にとっては仲の良い女友達程度の認識しかない。
「リーナさんに先を越されましたね。ですが、近いうちに私も……」
「えっ!?まさか、遂にシノビさんと……」
「ふふふっ……」
リノの発言にリーナは驚いた声を上げ、リノは自分の手元に視線を向ける。彼女の薬指にはシノビから頂いた指輪が嵌められており、現在の彼は白面を引き連れて和国の旧領地で開拓作業を行っている。
シノビは人手を集めて森を伐採し、新しい街を築こうと奮闘していた。そして彼と心を通わせるリノもシノビのために力を貸し、父親を説得して定期的に飛行船を利用して彼の元へ訪れていた。
「シノビとクノからこちらを預かっています。どうか受け取って下さい」
「わあっ……綺麗だね」
「ムサシノ地方でしか採取できない特別な水晶で造り出した装飾品です。どうか受け取って下さい」
リノは「月」と「太陽」の形をした水晶のペンダントを取り出し、リーナには月のペンダントを渡す。そしてモモには太陽のペンダントを渡し、まるで二人を象徴するような綺麗なペンダントだった。
「わあっ……嬉しい、大切にするね!!」
「綺麗……本当に貰っていいの?」
「ええ、構いません」
「二人とも良かったね」
思いがけない贈り物にモモとリーナは喜び、そんな二人にナイは微笑むと部屋の扉がノックされ、結婚式の時間が訪れた事を告げられる。
『ナイ様、モモ様、リーナ様……間もなく結婚式が行われます。準備はできていますか?』
「あ、はい!!」
「は~い!!」
「ふうっ……よし、行こう」
「頑張るんだよ、僕達は一足先に向かわせてもらうよ」
「3人とも素敵な結婚式になるように祈ってますね」
先にアルトとリノが外に出ると、ナイは改めてヒナとリーナを抱き寄せる。ナイの行為に二人は驚きながらも彼に身体を預け、ナイは二人に告げた。
「大好きだよ、二人とも」
「えへへ……私も大好き!!」
「ナイ君……ずっと一緒に居ようね」
結婚式を行う前にナイは二人に抱きしめられ、そのまま頬に口づけされる――
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