最終章 《死力を尽くせ》
「ギアアアアアッ!!」
「ぬあっ!?」
「ちぃっ!?こいつ、まだ立ち上がる力が……うわぁっ!?」
「退避」
「あいてぇっ!?」
ダイダラボッチは首を攻撃していたテン達を振り払うために立ち上がり、この時にテン達は地上へ落下する。ダイダラボッチは身体を起き上げる事に成功したが、左足の負傷が大きくて左膝が崩れてしまう。
「グギィッ……!?」
「効いてる!!効いているぞ!!」
「このまま後ろに追い込め!!」
「あと少しだ!!」
戦闘の最中にダイダラボッチは何時の間にか巨大剣を背にしており、このままダイダラボッチが巨大剣の方に倒れ込めば後は魔導大砲を準備しているイリアが攻撃を行い、ダイダラボッチを巨大剣の方に押し込む。
本来の作戦はダイダラボッチの討伐ではなく、巨大剣を利用してダイダラボッチの動きを封じめる事が討伐隊の目的である。巨大剣がダイダラボッチに触れれば生命力を奪い、ダイダラボッチは身動きすらままならくなる。そうなれば止めを刺す事も再び封印する事も可能だった。
「追い込めぇえええっ!!」
『うおおおおおっ!!』
「ギャアアアアアッ!?」
全員が力を合わせてダイダラボッチの左足に攻撃を加え、徐々に傷跡が深まっていく。このまま左足の攻撃を続ければいずれ体勢を保てなくなったダイダラボッチが後ろ向きに倒れるのは間違いなく、全員が技を繰り出す。
「爆槍!!」
「斬!!」
「うおりゃあああっ!!」
「はあああああっ!!」
『ぬぅうんっ!!』
ドリス、リン、テン、ロラン、ゴウカの5人が同時に攻撃を繰り出して左足に喰らわせると、遂にダイダラボッチの左足の骨が折れる音が鳴り響く。
――ウギャアアアアアッ!?
ダイダラボッチの悲鳴がムサシノ地方へ響き渡り、遂に巨体が後ろ向きに傾き始めた。あと少しでもダイダラボッチが背後の巨大剣に近付けばイリアの魔導大砲で押し込めるところだったが、ダイダラボッチは倒れる寸前に目を見開く。
あと少しという所でダイダラボッチは歯を食いしばり、両手を後ろに回して完全に倒れ込むのを阻止する。そして攻撃を受けた左足に視線を向け、驚くべき行動を取った。
「グギャアアアアアッ!!」
「なっ!?」
「馬鹿な!?」
「な、何をっ!?」
無理やりに立ち上がったダイダラボッチは怪我をした左足を巨大剣に目掛けて振り翳し、回し蹴りの要領で叩き込む。その結果、左足は刃によって切断されたが、同時に地面に突き刺さっていた巨大剣も引き抜かれて倒れてしまう。
左足を犠牲にして巨大剣を地面から引き抜いたダイダラボッチに討伐達は硬直し、何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。しかし、ダイダラボッチは左足を切断しながらも地上の者達に顔を向け、醜悪な笑みを浮かべた。
(馬鹿な……我々の狙いが気づかれていたというのか!?)
ロランはダイダラボッチの行動が明らかに巨大剣を引き抜くための行為だと知り、どうやら討伐隊の狙いが読まれていた事が発覚する。ダイダラボッチは討伐隊が自分を巨大剣の元まで誘導している事に気付き、左足を犠牲にして巨大剣を地上から引き抜く。
討伐隊の立てた作戦は地上に突き刺さった巨大剣を利用し、ダイダラボッチの身体に巨大剣を食い込ませるのが目的だった。しかし、巨大剣が地上に引き抜かれてしまっては作戦が失敗し、更に最悪な事にダイダラボッチは地面に横たわる巨大剣に手を伸ばす。
「ギアアアアッ!!」
「いかん!?奴に巨大剣を奪われるな!!」
「くそったれが!!」
「や、止めろぉおおおっ!!」
巨大剣がダイダラボッチの手に渡れば作戦どころか討伐隊が殲滅される恐れがあり、何としてもダイダラボッチが巨大剣に触れる前に討伐隊は止めようとした。しかし、既にダイダラボッチの腕は巨大剣の柄の部分に伸びていた。
仮に巨大剣に触れればダイダラボッチも生命力を奪われるが、柄の部分と刃の部分では吸収させる生命力には大きな差があり、実際に地上に抜け出した時にダイダラボッチは巨大剣を武器として使用していた。柄の部分ならば弱り切ったダイダラボッチでも生命力を一気に吸い取られる事はなく、巨大剣を利用してダイダラボッチは討伐隊に攻撃を加えようとした。
「リーナ!!止めろぉおおっ!!」
「は、はい!!」
「お、俺も……!!」
ロランは咄嗟にダイダラボッチを止められるのはリーナしかいないと判断し、彼女の蒼月の力でダイダラボッチの足元を凍らせて止めるように指示を出す。ガロも彼女に続いて氷華の力を解放させ、二人は同時に地面に刃を繰り出す。
「「凍りつけ!!」」
「グギャアッ……!?」
残された右足のみで体勢を保っていたダイダラボッチだったが、リーナとガロが地面に突き刺した蒼月と氷華によって冷気が伝わり、右足が徐々に凍結化される。しかし、ダイダラボッチは完全に凍り付く前に腕を伸ばす。
「駄目ですわ!?止まりません!!」
「何とかしろ!!止めろぉおおおっ!!」
ダイダラボッチの腕が巨大剣の柄に迫り、その光景を見た者達はもう駄目かと思った時、思いもよらぬ事態が発生した。
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