最終章 《立ち向かう戦士達》
「竜巻!!」
「火炎槍!!」
「ギアアアアアッ!?」
二人の魔剣と魔槍の魔力が合体し、火炎の竜巻と化して正面から迫ってきたダイダラボッチの左拳を吹き飛ばす。ダイダラボッチは左拳を焼かれて悲鳴を上げ、その様子を見てドリスは確信する。
「やはりそうですわ!!いくら高い再生能力を持っていると言っても、火傷の類ならば再生に時間が掛かりますわ!!」
「だが、最初に爆発した時はすぐに再生したぞ!?」
「いいえ、奴だって無限に再生できるはずはありませんわ!!実際に再生速度が明らかに落ちています!!最初の攻撃の時にかなり無理をしたようです!!」
ドリスの指摘を聞いてリンはダイダラボッチに視線を向けると、確かに先ほどの攻撃で弾き返された左拳の火傷は再生を始めているが、最初の頃と比べて再生速度が格段に落ちていた。
イチノを襲撃したゴブリンキングを遥かに上回る体躯と、常識はずれの高い再生能力を持っているせいで忘れていたが、如何にダイダラボッチでも生物であるならば「限界」は存在する。不死身や無敵の生物などいるはずがなく、戦えば体力も消耗するし怪我も負う。
「この調子で行きますわよ!!」
「ああ……全員、突撃!!」
『うおおおおっ!!』
ほんの僅かではあるが勝機を見出した途端に先ほどまでの恐怖が嘘のように消え去り、王国騎士達はダイダラボッチに目掛けて飛び掛かる。ダイダラボッチは勢いづいた王国騎士達に対して苛立ちを抱くように今度は右拳を振りかざす。
「ギアアアッ!!」
「まずい、避けろ!?」
「離れて!!」
『うわぁあああっ!?』
ダイダラボッチが地面に目掛けて拳を振り下ろした瞬間、強烈な振動が地面に伝わり、あまりの威力に周囲に立っていた王国騎士達が巻き込まれてしまう。拳を叩き付けるだけで衝撃波が発生し、普通の人間ならば耐えられなかっただろう。
しかし、この場に集まっているのはこの世界の人間の中でも選りすぐりの戦士達であり、彼等は立ち上がって最後まで諦めずに戦い抜く事を誓う。
「立て……立つんだ!!」
「諦めるな!!」
「絶望するな……まだ、戦える!!」
王国騎士達は自力で立ち上がり、その光景を見てダイダラボッチは戸惑う。自分よりも遥かに小さくて力も弱い生物であるはずの彼等が自分に立ち向かう事に戸惑い、どうしてそこまで戦えるのかと疑問を抱く。
『何を驚いた顔をしている……まだ我等は戦えるぞ!!』
「その通りだ……くそ野郎が!!」
「よくも皆を……絶対に仇を討つ!!」
黄金級冒険者のゴウカ、ガオウ、リーナは真っ先に立ち上がって武器を構えた。その姿にダイダラボッチは無意識に後退り、自分が後退した事に呆気を取られる。
――恐れている?たかが人間を相手に?
ダイダラボッチの頭の中に声が響き、その声が自分の心の声だと気付くのに時間はかからなかった。ダイダラボッチは自分自身がたかが人間を相手にして恐怖を抱いている事を自覚し、同時に激しく怒りを抱く。
――ふざけるな!!人間如きに怯えるなど有り得ない!!
自分自身に怒りを抱いたダイダラボッチは地上の者達を睨みつけ、今度こそ確実に仕留めるために右足を振りかざす。今度は火炎の竜巻を受けようと力でねじ伏せるため、腕よりも力が強い足で攻撃を繰り出そうとした。
「ギアアアアッ!!」
「来ますわよ!!」
「くっ……受け切れるか!?」
「僕も手伝うよ!!」
『ふはははっ!!かかってこい!!』
「やるしかねえか!!」
右足を振りかざしたダイダラボッチに大して各自が防御態勢を整える中、ダイダラボッチの足元に目掛けて動く人物が二人存在した。
その二人の手には赤と青に光り輝く魔剣が握りしめられ、ダイダラボッチが右足を蹴り出す寸前に軸足の左足に目掛けて刃を振りかざす。二人は左右から全く同時に攻撃を行う時。
「氷華!!」
「炎華!!」
「ギャアアアアッ!?」
ダイダラボッチの左足に炎と氷が駆け巡り、初めてダイダラボッチは痛々しい悲鳴を上げる。これまで受けた攻撃の中でも一番の痛みを感じ、左足は火傷と凍傷を同時に引き起こす。
「これは……まさか!?」
「ガロ!?お前……どうしてその剣を!?」
「ヒイロさん!?」
「まさか、その魔剣は……」
ダイダラボッチに最初に有効的な攻撃を与えたのは「ガロ」と「ヒイロ」であり、二人の手元には氷華と炎華が握りしめられていた。どちらも攻撃を仕掛ける際に相当な魔力を消耗したらしく、顔色は悪い。
特にガロの場合は普段から魔法剣の類は使用する事がないため、一度魔法剣を使っただけで魔力と精神力が大きく削れる。しかも氷華の力は彼では抑えきれず、刃から冷気を放出が止まらなかった。
「うぐぅっ……!?」
「ガロさん、しっかりして下さい!!火炎剣!!」
「あちちっ!?」
暴走しかけたガロを見て咄嗟にヒイロは烈火を抜いて火炎の刃を放ち、強制的に彼を凍り付かせようとしていた氷華を叩き落す。
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