最終章 《結束の力》
「ひぃいいいっ!?」
「な、情けない声を上げるな!!それでも誇り高き騎士か!?」
「リ、リンさんこそ声が震えてますわよ!?」
ダイダラボッチの攻撃をどうにか回避する事に成功したドリスとリンだったが、距離が縮まる程にダイダラボッチの体格差と威圧感を思い知らされ、身体が震えてしまう。
戦う意思を固めたにも関わらず、本能が目の前の敵から逃げろと告げて誰もが思うように戦えない。この場に集まった人間の殆どは一流の武人であが故、普通の人間よりも優れた感覚を持ち合わせ、それが仇になってしまう。
(くそっ、震えるな……ここで戦わないと死ぬんだぞ!!)
(どうして言う事を聞きませんの……!?)
身体の震えが止まらない事にはまともに戦えず、ドリスとリンは必死に身体を動かそうとするが、足元がふらついて立つ事もままならない。こうしている間にもダイダラボッチは攻撃の準備を行い、二人に目掛けて足を振り下ろそうとした。
「ギアアアアアッ!!」
「くぅっ!?」
「きゃああっ!?」
「うおおおおっ!!」
二人に目掛けてダイダラボッチが右足で踏み潰そうとした時、何処からか声が響く。その声を耳にしたリンとドリスは顔を向けると、そこには「獣化」したガロが駆けつける姿があった。
「おらぁっ!!」
「うぐっ!?」
「きゃうっ!?」
「ギアアッ!?」
獣化した事によって限界近くまで身体能力を強化させたガロはドリスとリンに飛びつき、二人を抱えた状態でダイダラボッチの攻撃を躱す。もしもガロが遅れていたら二人とも踏み潰されていたのは間違いなく、間一髪のところで助けられた。
「はあっ、はあっ……!!」
「た、助かりましたわ……」
「礼を言うぞ……いや、まだだ!?」
ガロは二人を掬う事に成功したが、ダイダラボッチは今度は3人に狙いを定めて腕を伸ばす。それに気づいたリンはガロに注意すると、ガロは慌てて逃げ出そうとしたが二人を抱えていたせいで上手く動けず、体勢を崩してしまう。
「しまっ……!?」
「大丈夫、僕に任せて!!」
「ガロ、こっちだ!!」
ダイダラボッチの右手が迫った瞬間、3人の間に蒼月を構えたリーナが駆けつけ、彼女は槍に氷の刃を纏わせて迫りくる手を斬りつける。一方でゴンザレスの方はガロ達を抱えて距離を取った。
リーナの攻撃を受けたダイダラボッチは伸ばしていた右手を反射的に引っ込め、自分の凍り付いた掌を見て戸惑う。リーナの蒼月は切りつけた箇所を水属性の魔力で凍結化させるため、思いもよらぬ攻撃を受けたダイダラボッチは後退る。
「ギアアッ……!?」
「あれ……思ったより効いてる?」
「まさか……そう言う事か!!奴は傷を回復する事はできても、その傷を凍り付かせれば再生できないんだ!!」
「何ですって!?」
「へっ……それなら俺等の出番だな」
蒼月に切り付けられた箇所は傷口ごと凍結化させられるため、如何に高い再生能力を持つダイダラボッチであろう傷を治す事はできない。それを見抜いたリンの言葉を聞いてガロは笑みを浮かべ、彼は氷華を手にした。
「要するにこいつを氷漬けにすれば再生を防げるんだろ?なら、やってやるぜ!!」
「ガロ!?駄目だ、それを使えばお前の身が……」
「どうせ戦わないと死ぬんだよ!!そんな事を気にしている場合かっ!!」
氷華を抜こうとしたガロを慌ててゴンザレスが止めようとするが、確かにガロの言う通りにここで戦わなければ全員が死んでしまう。しかし、かつてガロは氷華を一度使おうとしただけで身体中が凍りかけ、危うく死にかけた。その事を知っているだけにゴンザレスはガロが氷華を使う事を止めようとする。
「その力を使うとしても今じゃない!!奴にもっと傷を与えてからでも……」
「なら、いつ使うんだ!?この化物に誰が傷を与えるんだよ!?」
「お前等、言い争っている場合か!!前を見ろ馬鹿!!」
自分を止めようとするゴンザレスをガロは振り払おうとするが、後ろからガオウの声が響き渡り、二人は顔を見上げるとダイダラボッチが左拳を握りしめて彼等に目掛けて振り翳していた。
「ギアアアアッ!!」
「うわぁっ!?」
「し、しまった!?」
迫りくる巨大な左拳にガロとゴンザレスは慌てて逃げようとしたが、既にダイダラボッチの左拳は回避が間に合わない速度で迫っていた。しかし、そんな二人の前にドリスとリンが立ちはだかる。
「リンさん、私に合わせて下さい!!」
「ちっ、失敗するなよ!!」
先ほどガロに救われた2人はお互いの魔剣と魔槍を組み合わせると、ドリスは左拳に狙いを合わせて
これによって真紅の周囲に風属性の魔力が渦巻き、更にその状態でドリスは真紅の先端部分に火属性の魔力を集中させ、二つの魔力が混ざり合って火炎の渦巻が発生した。
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