最終章 《絶望的な力の差》
『うわぁあああああっ!?』
森の中で悲鳴が響き渡り、ダイダラボッチが振り払った腕によってロランを筆頭に他の者たちも吹き飛ばされる。テン、ルナ、ミイナ、ランファン、フィル、他にも森の中に待機していた騎士達も巻き込まれてしまう。
ただの一度の攻撃でダイダラボッチは森の中に隠れていた聖女騎士団と猛虎騎士団の団員の殆どを蹴散らし、吹き飛ばされた者達は地面に倒れ込むか、薙ぎ倒された樹木に巻き込まれる。
「なっ……何だと!?」
「そんな……ロラン大将軍が、テンさんが!?」
「マジかよ……化物がっ!!」
「う、嘘です!!こんなの……有り得ません!!」
ダイダラボッチの攻撃によって討伐隊の半分近くの戦力が失われてしまい、残されたのは銀狼騎士団と黒狼騎士団、そして離れた場所にいるゴウカとマリンぐらいだった。魔導大砲を設置しているイリア達も戦力に加えたとしても、ダイダラボッチとの戦力差は絶望的だった。
(まさかロラン大将軍が……いや、落ち着け!!焦るな、冷静になれ!!)
リンはロランやテンが敗れた事で心が挫けそうになったが、それでも彼女は現状を打破するために必死に頭を巡らせる。呑気に考えている暇はなく、ダイダラボッチが森の中に隠れている自分達に気付く前に行動を移す必要があった。
(考えるんだ、奴を倒す方法を……違う、今回の作戦は奴を封じる事が目的だ!!奴を倒す必要はない!!)
今回の作戦の内容はダイダラボッチを巨大剣に追い詰め、再びダイダラボッチを封じるのが作戦内容だった。アルトの推測が正しければ巨大剣を再びダイダラボッチの身体に突き立てる、あるいは広範囲に身体に接触させればダイダラボッチにを封じる可能性が高い。
ダイダラボッチが如何に強大な力を持とうと、怪我を一瞬で治す高い再生能力を持っていようと関係ない。今回の作戦の要はダイダラボッチを巨大剣の傍に追い込むだけであり、リン達の役目はダイダラボッチを巨大剣の方に誘導させるだけである。
「ドリス!!何時まで呆けている!!私達も行くぞ!!」
「えっ?あっ……わ、分かってますわ!!」
「おいおい、本気かよ!?俺達だけで作戦を続けるつもりか!?」
「どうせここで逃げても死ぬだけです!!」
ガオウはリンの言葉を聞いて驚愕するが、ヒイロは涙を浮かべながらもリンの言葉に賛同する。彼女は他の仲間の仇を討つため、命を賭けて戦う事を誓う。
(烈火……そして炎華、貴方達の力を貸してください!!)
ヒイロは自分の愛剣の烈火と、そしてシノビから託された炎華を握りしめる。ロラン達が敗れた以上はもうダイダラボッチを追い詰める事ができるのは自分達しかいない。
二つの魔剣を引き抜いたヒイロを見てリンとドリスは驚くが、いち早く覚悟を決めた彼女を見て他の者たちも頷く。如何に強大な相手だろうと退くわけにはいかず、ドリスとリンは剣を掲げて突撃の合図を下す。
「行きますわよ!!黒狼騎士団、私に続きなさい!!」
「銀狼騎士団!!突撃!!」
『うおおおおっ!!』
森の中に隠れていた銀狼騎士団と黒狼騎士団が駆け出し、山のように巨大なダイダラボッチに目掛けて突っ込む。その光景を見てガオウはため息を吐き出し、彼も騎士団の後に続けて駆け出す。
「ちぃいっ……こうなったら、やってやらぁっ!!」
『ふはははっ!!その意気だぞ!!』
『はあっ、はあっ……ま、魔力を使いすぎた!!』
「うおっ!?お前等……ここまで来てたのか!!」
ガオウは後ろから聞き覚えのある声を耳にして振り返ると、そこには魔力を使い果たした状態のマリンを抱えて駆けつけるゴウカの姿があった。この状況でこれ以上ないほどの援軍の登場にガオウは笑みを浮かべ、二人と共に彼は駆け抜ける。
「ゴウカ!!こういう時はお前が頼もしく見えるぜ!!」
『はははっ!!何という巨体、威圧感!!これほどの敵、生涯に一度しか出会えんぞ!!』
『ま、待て……私は置いて行け、というか何で連れてきた……!?』
『おっと、すまんすまん!!つい忘れていた!!』
マリンは先ほどの「最上級魔法」で魔力を使い果たし、その影響で彼女はもう魔法を使えない。魔力が回復するには時間が掛かるため、ゴウカが連れ出しても彼女は役に立てない。
しかし、今更マリンを置いて行く暇もなく、ダイダラボッチは自分の後方から現れた騎士団に気付き、怒りの咆哮を上げながら右足を振りかざす。
「ギアアアアッ!!」
「正面、来るぞ!!」
「全員、左右に避けなさい!!」
『うおおおおおっ!!』
『ひいいっ!?』
「あぶねぇええっ!?」
ダイダラボッチが前脚を繰り出すと、王国騎士達は左右に回避して攻撃を回避した。しかし、ダイダラボッチの繰り出した前脚は地面を抉り、周囲に激しい振動と衝撃が広がる。
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