最終章 《再生能力》
「魔導大砲はまだぶっ放せないのか?」
「駄目ですわ、まだダイダラボッチと巨大剣の距離が遠すぎます」
「奴を巨大剣の方に追い込まなければ魔導大砲は撃ちこめない」
「ちっ……やっぱり戦いは避けられないか」
マリンの魔法によってダイダラボッチに損傷を与える事には成功したが、爆発に巻き込まれた際にダイダラボッチは巨大剣から離れてしまう。そのせいで魔導大砲をダイダラボッチに撃ち込んだとしても巨大剣に接触しない位置に倒れてしまう。
魔導大砲が発射するのはダイダラボッチが巨大剣の前に立った時であり、何としてもダイダラボッチを地面に突き立てられた巨大剣の方に倒さなければならない。そのためには各王国騎士団と冒険者達が力を合わせ、ダイダラボッチを巨大剣の方に追い込まなければならない。
「み、見てください!!ダイダラボッチが動いています!?さっき、ロラン大将軍に足を貫かれたのに……」
「さっきの爆発で大将軍の双紅刃も地面から抜けたようですわね……」
「むしろ好都合だ。足元が固定された状態では動かす事もままならないからな……よし、合図を確認したら突撃するぞ!!」
『はっ!!』
火炎が収まるとダイダラボッチは全身に煙を舞い上げながらも僅かに動き、この時にロランに突き刺されたはずの左足も動いていた。先ほどの爆発で地面から刃が抜けたらしく、双紅刃の方も何処かに吹き飛んでしまったらしい。
――ギァアアアアアアアッ!!
森中に再びダイダラボッチの怒りの咆哮が響き渡り、この時にダイダラボッチの身体から舞い上がっていた煙が消え去る。そして討伐隊は信じられない光景を目にした。
「そ、そんなまさか……」
「あれだけの爆発をまともにうけて……何で平気なんだ!?」
「馬鹿な……奴は本物の化物だとでもいうのか!?」
ゴーレムキングでも木端微塵に砕けそうなほどの火力の爆発を浴びたにも関わらず、ダイダラボッチの全身はいくつかの箇所が火傷した程度で大怪我という程ではない。生身の生物にも関わらずに超火力の爆炎を浴びて軽い火傷程度の損傷しかおっていないダイダラボッチにガオウ達は唖然とする。
爆発に巻き込まれ、火柱に飲み込まれたにも関わらずにダイダラボッチが軽い火傷程度の傷しか負っていない事に誰もが動揺する。しかし、この時にいち早くダイダラボッチの肉体の異変に気付いた人物がいた。
(あれって……まさか、そういう事なの!?)
その人物の正体は黄金級冒険者のリーナだった。彼女は猛虎騎士団と聖女騎士団と共に行動しており、彼女の傍にはガロとゴンザレスの姿もあった。ガロもダイダラボッチの肉体を見て異変を感じ取り、目つきを鋭くさせてダイダラボッチの傷を確認する。
「野郎、まさか……再生してやがるのか!?」
「再生、だと!?」
「うん、間違いないよ……あいつ、凄い速度で傷を再生させてる!!」
ガロの言葉にリーナも賛同し、この二人は討伐隊の中でも特に視力が鋭く、ナイと同様に「観察眼」の技能を持ち合わせていた。その二人がダイダラボッチの身体を確認すると、ダイダラボッチの怪我が急速的に治っている事を見抜く。
ダイダラボッチの火傷がまるで時間を加速させるかのように徐々に元の皮膚に戻っていき、いつの間にか最初に双紅刃を喰らった左足の傷も塞がって戻っていた。どうやらダイダラボッチは高い自然治癒力を持つらしく、先ほどの爆発で受けた怪我も十数秒で再生を果たす。
「ギアアアアアアアアッ!!」
「ば、化物め……」
「どうしよう、これじゃあいくら攻撃しても傷が治っちゃうよ!?」
「なんだと……では、奴は不死身なのか!?」
大怪我を負っても数十秒程度で肉体を完治させるほどの再生能力をダイダラボッチが持ち合わせている事が判明し、これではダイダラボッチにいくら損傷を与えても再生して元通りの状態に戻る。ただでさえも厄介な敵だというのに再生能力まで持ち合わせているなど予想もできず、リーナ達は取り乱してしまう。
しかし、混乱している間にも完全に怪我を治したダイダラボッチが動き出し、最初にダイダラボッチが狙いを定めたのは自分の足を串刺しにしたロランだった。
「ギアアアッ!!」
「やばい!?お前等、伏せろ!!」
「きゃっ!?」
「うおっ!?」
ガロは獣人族の野生の本能で危険をいち早く察知し、彼は「獣化」を発動させてリーナとゴンザレスの身体を掴んで伏せさせる。その直後にダイダラボッチはロラン達が隠れている森へ目掛けて腕を振り払う。
「ギアアアアッ!!」
「まずい!?逃げるよ!!」
「逃げるって……うわぁっ!?」
「ぐっ……間に合わん!?」
「伏せろっ!!」
振り払われた腕は樹木を次々と薙ぎ倒し、最初に攻撃を仕掛けたロラン達の元へ迫る。慌ててロラン達は逃げようとしたが間に合わず、彼等は吹き飛ばされる。
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