最終章 《最終決戦開始》

最上級魔法オーバーマジック……プロメテウス!!』

『あちちっ!?』



ゴウカに肩車してもらった状態でマリンは杖を天に抱えると、彼女の杖の先端に取り付けられた魔水晶から複数の魔法陣が展開される。その後、魔法陣が一か所に重なり始めてより複雑な紋様の魔法陣へと変化する。


紋様が複雑化する中、魔法陣の中央部分だけが空白であり、やがて中心の部分から一筋の光が放たれる。その光は徐々に強まっていき、やがて魔法陣の前方に巨大な火球が出現した。




「ッ――!?」




ダイダラボッチは森の中から放たれた光に気付き、驚いたように振り返るとそこには自分の足元に目掛けて巨大な火球が迫っている事に気付く。火球の大きさは10メートルを超え、まともに衝突した危険だと察する。


咄嗟にダイダラボッチは上空へ飛んで火球を回避しようかと思ったが、ダイダラボッチの行動を予測してマリンたちとは反対方向から近づく人影があった。



「うおおおおっ!!」

「ギアッ!?」



駆けつけてきた人物の正体は「ロラン」であり、彼は双紅刃を高速回転させながら両端の刃に紅色の魔力を宿す。彼の持つ双紅刃は回転させる事に刃に魔力を蓄積させ、強烈な一撃を繰り出す事ができる。


事前にロランは魔力を限界まで刃に蓄積させ、彼はダイダラボッチの左足に目掛けて双紅刃を振りかざす。ロランの狙う箇所は膝などではなく、地面を踏みしめる左足だった。



「はあああああっ!!」

「ギアアアアッ!?」



空中に跳躍したロランはダイダラボッチの足に目掛けて双紅刃を放ち、投げ放たれた双紅刃はダイダラボッチの足元を貫き、奥深くまで突き刺さる。ダイダラボッチは悲鳴を上げ、左足が地面に固定されてしまう。


ダイダラボッチの左足が双紅刃によって地面に串刺しとなり、これでダイダラボッチはマリンの生み出した火球を避ける事はできなくなった。しかし、ダイダラボッチに攻撃を仕掛けるためにロランは近づきすぎてしまい、このままでは爆発に巻き込まれかねない。



「ロラン大将軍!!」

「よし、伸ばせ!!」



しかし、ロランも自分が爆発に巻き込まれる前の脱出方法は考えており、森の中から鎖の魔剣を手にしたフィルが現れる。彼はロランに目掛けて鎖を放ち、彼を空中で鎖で拘束して引き寄せる。



「おもいっきり引っ張って下さい!!」

「よし、任せな!!」

「うおおおっ!!」

「ていっ」

「ふんっ!!」

「ぬあっ……!?」



鎖の魔剣には事前にテン、ルナ、ミイナ、ランファンの怪力自慢の女性陣が集まり、人間の中では巨体のロランだが、この4人が力を合わせて引っ張ると彼の身体は凄まじい速度で引き寄せられる。


引き寄せたロランはランファンが抱き留めると、即座にフィルたちは撤退した。撤退の理由はダイダラボッチから逃げるためではなく、既にマリンの放ったプロメテウスがダイダラボッチの足元の地面に接触しようとしていたからだった。



「伏せろ!!」

「しっかり掴まってな!!」

「うわぁっ!?」



ロランの掛け声を聞いて全員がその場を伏せ、この時に巨人族で一番の巨体のランファンが全員を抱えるように身体を伏せる。その直後、太陽を想像させる巨大な火球が地上に衝突し、地中の中に埋もれたマグマゴーレムの核が反応して大爆発を引き起こす。




――ギィアアアアアアッ!?




地上から発生した爆炎にダイダラボッチは飲み込まれ、凄まじい巨大な火柱が舞い上がる。イチノを襲撃したゴブリンキングやグマグ火山に出現したゴーレムキング程度の敵ならばこの爆発で仕留められる程の威力はあった。


しかし、ダイダラボッチは火柱の内部でもがき苦しみ、必死に両腕を振り払う。生身の生物にも関わらずに燃え盛る炎の中でも動き回る姿を見て討伐隊の面々は顔色を青ざめる。



「嘘だろ、おい……何で生きてるんだ!?」

「くっ……この程度の火力で倒しきれないという事ですわね」

「ふん、怖気づいたか?」

「まさか……リンさんこそ震えていますわよ」

「武者震いだ!!」



ドリスとリンは自分達の騎士団の団員を引き連れてロラン達とは別の場所で待機していた。二人の傍にはガオウの姿も有り、他にもヒイロの姿もあった。


王国騎士団が森の中に待機する際、巨大剣から左側の方に銀狼騎士団と黒狼騎士団が待機し、反対側の右側には猛虎騎士団と聖女騎士団が待機する配置になっていた。どうしてこの班分けになったのかというと、ドリスとリンはお互いにいがみ合いながらも共闘の場合は二人が一緒の方が色々と都合がいい。


お互いに対抗心を抱きながらもドリスとリンの魔法剣の相性は最高であるため、二人が一緒にいると本来の実力以上の力を発揮できる。だからこそ今は争っている場合ではなく、共に戦う時が来た。

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