最終章 《託された想い》
「マホ魔導士がここにいれば、お前達にその魔剣を託しただろう」
「おい、ちょっと待てよ……忘れたのか?俺達はこの魔剣を使いこなせないんだぞ?」
「そ、そうですよ!!確かに私達はこの魔剣を使った事はありますが、前に選別したときは失敗しています!!」
ガロもヒイロはかつて氷華と炎華を使用した経験はあるが、その後に行われた「選別の儀式」の際は二人とも氷華と炎華を使いこなす事はできなかった。しかし、シノビはそれでも二人だけが飛行船に乗り合わせた者達の中で魔剣を感じ取った事から二人が魔剣の継承者の可能性が高い事を話す。
「俺はずっとお前達を見てきた。この船に乗った時からお前達の行動は把握している、お前達だけが船に乗った時から落ち着かない様子だった。今もそうだろう?お前達にはその二つの魔剣の存在を感じているはずだ」
「そ、それは……」
「てめえ、さらりととんでもない事を言いやがって……」
「船に乗り合わせた人物の中でお前達だけが魔剣に気付いた。これは偶然ではない、仮に俺が明かさなくてもお前達ならばいずれこの場所に魔剣がある事を見抜けたはずだ」
シノビの言葉にガロもヒイロも否定はできず、何となくではあるが彼の言う通りに二人とも魔剣が飛行船内に隠されている事は気付いていた。それでも魔剣を感じ取ったからといって魔剣を使いこなせるかどうかは別の話である。
氷華と炎華は王国が管理する魔剣の中でも最も危険な代物だった。大抵の魔剣は適性がない人間と拒否反応を引き起こすが、この二つの魔剣の場合は能力を使用しようとすると生半可な実力者では魔力を全て吸いつくされ、周囲に大惨事を引き起こす。
この二つの魔剣を扱えたのはたった一人しかおらず、今は亡き王妃しかいない。彼女以外にこの二つの魔剣の使い手は現れるわけはないとテンは言っていたが、それでもシノビはマホの依頼通りにこの二人に魔剣を託す。
「その魔剣を使うかどうかはお前達次第だ……よく考えるんだな」
「お、おい!!待ちやがれ!!」
「いきなりそんな事を言われても……」
「言っておくが時間はない、夜までにその二つの魔剣を使うかどうか決めろ……俺はもう行くぞ」
魔剣を一方的に託されたガロとヒイロは戸惑うが、シノビは役目を果たした以上はこれ以上に関わるつもりはない。シノビが動いたのはあくまでもマホの依頼を果たすためであり、彼もダイダラボッチを倒すために準備を急ぐ。
取り残されたガロとヒイロはお互いに顔を合わせ、二人は自分達の魔剣を手にする。氷華と炎華を手にした二人は黙り込み、本当に自分達のこの魔剣を使いこなせるのかと不安を抱く。
「老師……荷が重すぎるぜ」
「私のような凡人が王妃様の魔剣を使うなんて……」
流石のガロも氷華を手にしただけで冷や汗が止まらず、この魔剣の恐ろしさは彼はよく理解していた。一方でヒイロの方も亡き王妃の代わりに自分が炎華を使いこなすなど到底無理だと思うが、もう時間はない。
間もなく夜を迎えようとしており、既に作戦の準備は進められている。二人は覚悟を決めたように腰に魔剣を差し、この時に他の人間に気付かれて騒ぎを起こさないように魔剣の正体が気づかれないように細工を施す。
「ちっ……お互いに大変な役目を任されたな」
「そうですね……でも、何だか嬉しそうですね」
「ああ?そんなわけないだろ」
ヒイロの言葉にガロはしかめっ面を浮かべるが、その割には犬耳と尻尾が揺れていた。ガロはシノビの言葉を思い返し、自分が氷華の継承者の可能性が高いという言葉に嬉しく思う。
この氷華は元々はマホが管理していた物であり、マホは継承者を探していた。そして彼女の弟子の自分が氷華の継承に成功した場合、ガロはマホの期待に応えられるような気がして悪い気分ではない。
(ちっ……分かったよ、老師。あんたの代わりに俺が戦ってやるよ)
この場にはいないマホの代わりにガロは氷華で戦う事を決意し、彼はヒイロと共に倉庫を後にした。もう間もなく時刻は夕方を迎えようとしていた――
※終わりが近いです……(´;ω;`)
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