最終章 《作戦内容》

「私の魔導大砲ならダイダラボッチだろうと確実に損傷を与える事ができます。都合よく、砲弾の代わりになる物も手に入れましたからね」

「マグマゴーレムの核を使うんだね?」

「その通りです!!但し、この魔導大砲はさっきも言った通りに一発撃てば終わりです。一度使えば壊れてしまいますからね、修理するにしても時間が掛かりますので外せば終わりだと考えてください」

「一発限りか……本当にダイダラボッチに通じるのか?」

「ロラン大将軍、魔導大砲の威力はあたし達もよく知ってるよ。確かにあの魔導大砲の威力ならダイダラボッチにも通じるかもしれないね」



ロラン以外の王国騎士は実際に魔導大砲が使用される場面を見た事があり、魔導大砲の威力は把握していた。ダイダラボッチが相手でも魔導大砲ならば十分に通じる可能性は高く、そもそも今回の場合は魔導大砲でダイダラボッチを仕留めるわけではなく、あくまでも後ろから攻撃して前のめりに倒れさせるだけである。


魔導大砲の威力を見た事がないロランは不安を抱くが、他の者たちの言葉を信じて魔導大砲を作戦に加える事を許可する。そして改めてダイダラボッチを倒す手順の確認を行う。



「今夜、ダイダラボッチが巨大剣の破壊のために現れた場合、我々は巨大剣の周囲の森の中に隠れて置く。奴が巨大剣の前に移動した時、地中に埋めたマグマゴーレムの核をマリンの砲撃魔法で爆破させる。その時に奴は体勢が崩れた隙を逃さず、魔導大砲で背中を攻撃して奴を巨大剣の方に倒れ込ませる」

「仮に巨大剣に倒れさせることに成功しても、奴が動きを止めなかった場合はどうするんだい?」

「その時は撤退するしかあるまい……まともに戦って勝てる相手ではない。各自、散らばって飛行船まで帰還するんだ」

「……それ以外に方法はありませんわね」



ただの程度の相手ならば王国軍でもなんとかなるが、ダイダラボッチはゴブリンキングの数倍の巨体を誇り、まともに戦ったとしても勝てる相手ではない。ナイが一撃で倒されたという話を聞いた時からロランはまともな戦闘を諦めていた。


貧弱の英雄であるナイさえもダイダラボッチの一撃で戦闘不能に陥り、半日以上も意識を失っていた。そんな相手にいくら力を合わせて挑んだとしても勝てる見込みはない。せめてマジクやマホがいれば話は別だが、ないものねだりしても仕方がない。



「イリア魔導士、魔導大砲とやらは本当に信じていいのか?」

「安心して下さい、必ず期待に応えますよ」

「よし……では早速準備しろ!!マグマゴーレムの核を運び出し、地中に埋もれ!!」



ロランの号令の元、王国軍は遂にダイダラボッチを倒すために本格的に準備に取り掛かろうとした。しかし、この時にアルトだけは何事か考え込み、彼は会議室を後にする――






――会議室を抜け出したアルトは飛行船の外に作り出した工房に赴き、ドゴンの様子を伺う。現在のドゴンはハマーンの弟子達によって改造が施されており、もう間もなく改造が終了しようとしていた。



「経過はどうだい?」

「おお、王子様か!!もう少しでこいつの修理は終わるぞ!!」

「いや、まさか俺達の手で人造ゴーレムを改造する日が来るとは……」

「親方もきっと羨ましがりますぜ!!はっはっはっ!!」



ハマーンの弟子達の笑い声をあげ、確かに死んだハマーンがここにいれば彼は間違いなく人造ゴーレムの改造を喜ぶだろう。アルトは亡きハマーンの事を想い、彼の死を悲しみながらも自分のするべき事を考える。



(ロラン大将軍の立てた作戦以外に方法はない……だが、本当に大丈夫なのか?何か見落としているんじゃないのかアルト……)



アルトはロランの作戦を聞いた時から不安を隠しきれず、本当に上手くいくのかと心配していた。勿論、ロランの事は信用しているし、作戦を決行するナイ達の事もアルトは信じている。


だが、ダイダラボッチを見た時からアルトは不安を隠しきれず、作戦通りに上手くいってもダイダラボッチを倒せる保証はない。巨大剣が身体に食い込んだ程度ではダイダラボッチを封じられる確証がない以上、彼はどうしても不安を拭えない。



(ダイダラボッチを確実に倒す方法……本当にないのか?何か僕は見落としているんじゃないのか?)



不意にアルトは飛行船に視線を向け、この飛行船を利用してダイダラボッチを倒す方法はないのかと考えてしまう。しかし、旧式の飛行船は新型と違って移動専用の飛行船であるため、兵器などは殆ど積んでいない。


この飛行船でできる事と言えばダイダラボッチに体当たりを仕掛ける程度だが、そんな事をしてもダイダラボッチを確実に倒せる方法はとは言い切れない。仕方なくアルトはその場を後にしようとした時、良く知った人物が飛行船の船首に立っている事に気付く。

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