最終章 《討伐方法》

――ダイダラボッチを倒す手段があるとすれば巨大剣以外にはあり得ないが、その巨大剣は動かす事はできず、ダイダラボッチを巨大剣の前まで誘導させて罠に嵌める方針は決まった。問題なのはどのように罠に嵌めるかであり、その事を話し合うために会議室に人が集められる。


会議の間は様々な意見を飛び交うが、どれもこれも上手くいく保証はない。話しあっている間にも時間は経過し、昼の時刻を迎えた。夜までには作戦を立てて罠の準備を仕掛けなければならないのだが、未だに良案は思いつかない。



「ダイダラボッチの足元に攻撃を仕掛け、奴を前のめりに倒れさせて巨大剣に当てる。それ以外に方法はないだろう」

「しかし、そう上手く倒れるでしょうか?」

「攻撃が失敗すればダイダラボッチは我々の存在を認識し、襲い掛かってくるのでは……」

「だが、時間がない。他に方法がなければこれでやるしかあるまい」



話し合いの結果、ダイダラボッチを巨大剣の前に立った時に攻撃を仕掛け、前のめりに倒れさせる事でダイダラボッチに巨大剣の刃を食い込ませる方法が決まりかけていた。


しかし、ダイダラボッチが封じられていた時は巨大剣が身体の内部に深く突き刺さった状態であり、巨大剣が身体に食い込んだ程度で動作を停止するかどうかは確証はない。それでも夜まで時間がないため、この方に賭けるしかなかった。



「よし、作戦は決まった。奴が再び巨大剣の前に移動した時、我々は左右から足元を攻撃する」

「そういう事ならアンが罠に仕掛けたマグマゴーレムの核を利用しましょうよ」

「マグマゴーレムの核を……?」

「森の中に仕掛けられたマグマゴーレムの核が山ほど余ってますからね、これを地面に埋め込んで上手い具合に起爆させれば爆発を引き起こします。その爆発でダイダラボッチの体勢を崩すなんて簡単ですよ」



イリアの発言に他の者たちは戸惑うが、確かにマグマゴーレムの核を爆発させれば威力は申し分ない。しかし、その方法の場合だと爆発させるために誰かが魔法を撃ち込まなければならない。



『そういう事なら私の出番だな』

『おお、マリンか!!確かにお前の魔法ならば爆発させる事は簡単だな!!』



飛行船に乗り合わせた魔術師の中でも火属性の砲撃魔法を扱えるのはマリンだけであり、彼女の魔法の威力ならば地中に埋まったマグマゴーレムの核を爆破させる事は容易かった。しかし、攻撃を仕掛ける場合はマリンは身を隠す必要があり、護衛役も必要だった。



『マリンの護衛役は俺が行うぞ!!長い付き合いだからな!!』

『……私もこいつ以外には背中を預けられない』

「そうですね、それが一番いいでしょうね」



マリンの護衛役は彼女と一番仲が良いゴウカが立候補し、他の者も反対はしない。問題があるとすればマリンがどの時点で攻撃を仕掛けるかであり、ダイダラボッチが巨大剣に近付いた時に爆破させ、体勢を崩させて巨大剣の方に倒れ込ませなければならない。



「地中に埋めたマグマゴーレムの核を爆破させ、ダイダラボッチの体勢を崩して注意を地面に向かせる。その時に後ろから攻撃を加えて前のめりに倒れさせる……という方法はどうだろう?」

「後ろから攻撃を?」

「しかし、攻撃と言ってもどんな攻撃を……」

「そこは僕に考えがある。イリア、あれはできそうかい?」

「ふふふ……もう少しで完成ですよ」



アルトはイリアに声をかけると、彼女は不敵な笑みを浮かべて机の上に羊皮紙を広げる。それを見た者達は訝し気な表情を浮かべ、彼女が広げた羊皮紙は「大砲」のような兵器の絵が記されていた。



「これは……何だ?」

「そういえばロラン大将軍は見た事はありませんでしたかね?これは私が設計した魔導大砲です」

「魔導大砲!?土鯨との戦闘で使ったあの兵器ですか!?」

「そうです。しかも前回の時に使った魔導大砲よりも高性能ですよ〜」



魔導大砲の名前を出すと土鯨との戦闘に参加していた者達は驚き、こんな時のためにイリアは魔導大砲の設計図を持ち歩いていた事を明かす。


魔導大砲は名前の通りに大砲型の兵器であり、普通の大砲と違う点は魔導大砲の場合は魔石を砲弾として利用する。しかも砲弾と違う点は魔導大砲は装填した魔石の魔力を放出するため、例えば火属性の魔石の場合は「熱線」を放つ。



「この羊皮紙に記されているのは私が新しく考えたの魔導大砲です。設計上、強度の問題があって1発撃ちこめばぶっ壊れます」

「何?一回使っただけで壊れるのか?」

「その代わりに威力は保証しますよ。こいつを撃ち込まれて兵器な生物はいません、実は牙山に向かう前から作らせていたんですけど、やっと完成したんです」



イリアは魔導大砲の設計図を完成させたのは王都に居た時であり、今日までの間は彼女は回復薬の製作の合間に魔導大砲を作っていた事を話す。そして遂に彼女は魔導大砲を完成させ、飛行船に載せている事を明かす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る