最終章 《ダイダラボッチの目的》
「ダイダラボッチが復活した原因が牙竜だとした場合、ダイダラボッチは自力で封印を解いたわけでじゃない。だから奴は自分を封じ込める可能性がある巨大剣を破壊しようと試みたんだ」
「なるほど、だから昨日はあんなに必死こいて壊そうとしてたんだね!!」
「だが、奴も自力で破壊する事は難しいと考えた。だからこそ他の魔物に巨大剣が奪われないようにあんな風に地面に深く突き刺した。まあ、あれほどの巨大な物体を運び出せる生物がダイダラボッチ以外にいるとは思えないが……」
ダイダラボッチが巨大剣を地面に付きたてたのは他の生物に巨大剣を奪われないためであり、そもそもあの巨大剣を動かす事ができるのはダイダラボッチ以外にはあり得ない。しかし、巨大剣がダイダラボッチを封印する力がある以上、王国軍も希望が見えた。
「あの巨大剣をもう一度ダイダラボッチに突き刺せば動きを停止させ、その間に封じる事ができるはずだ。いや、それどころか今度こそ止めを刺せるかもしれない」
「止めを刺す!?あんな化物を?」
「化物といってもダイダラボッチだって生物でしょう?なら、寝ている間に頭か心臓を破壊すれば死にますよ」
「イリアさん……さらりと怖い事を言うね」
イリアの発言にナイ達は冷や汗を流すが、確かに彼女の言う通りにダイダラボッチも生物である事は間違いない。この世界の魔物の生態系の頂点に立つ竜種であろうと頭か心臓を破壊されれば生きてはいられない。
ダイダラボッチがいくら化物じみた存在だとしても、決して不死身でも無敵でもない。生物であるのならば必ず弱点は存在し、まずはダイダラボッチを封じるために再び巨大剣を利用する必要があった。
「あの巨大剣をダイダラボッチに突き刺す事ができれば動きは封じられるはずだ。だが、あれほど巨大な物体を動かす方法を考えないと……」
「動かすって……あんな大きな物をどうやって!?」
「私とナイとルナとテンとランファンとゴウカとロラン大将軍が力を合わせても無理」
「あんなもん、巨人族が100人いたって動かせるかどうか……」
王国軍に所属する力自慢の者達が集まっても巨大剣を動かす事は不可能に等しく、巨大剣を自力で動かす事は不可能に思われた。しかし、ナイだけはある事に気付く。
「もしかしたら……その巨大剣、動かせるかもしれない」
「何だって!?」
「それは本当かい、ナイ君?」
ナイの言葉に全員が驚いた表情を浮かべると、ナイは壁に立てかけていた旋斧に視線を向けて「魔法剣」ならば巨大剣を動かせる可能性がある事を話す。
「旋斧に地属性の魔法剣を発動させる時、旋斧は刃の周りに重力を発生させて押し返す力があるんだ。それを上手く利用すれば巨大剣も重力を利用して動かす事ができるかもしれないけど……」
「な、なるほど……だが、待てよ。その方法だと巨大剣に地属性の魔力を送り込まないといけないんじゃないのか?」
「うん、そうなるね」
「いやいや、そんなの無理に決まってるだろ!?あの馬鹿でかい剣に地属性の魔力を送り込むなんて魔石の一つや二つでどうにかなる話じゃないだろ!!」
テンの言う通りに巨大剣の大きさから考えても地属性の魔石を利用して魔力を送り込むにしても、相当な数の魔石が必要だった。少なくとも魔石は数十個は必要であり、更に送り込むにしても時間が掛かる。
「確かにその方法は現実的じゃないな……仮に重力を利用して巨大剣を浮かばせる事はできてもダイダラボッチに突き刺す事ができるか」
「あの、それなら罠を仕掛けるのはどうでしょうか?ダイダラボッチが巨大剣の破壊に赴いた時、足元を転ばせて巨大剣の方に倒れ込ませるとか……」
「あの巨体だよ?どうやって転ばせるんだい……いや、でもそれ以外に方法なんてないのかもね」
ヒイロの言葉にテンは呆れるが、巨大剣を引き抜く事よりもダイダラボッチを巨大剣の前まで誘導し、そこに罠を仕掛ける方法の方が現実的だった。
「ヒイロの案も悪くない、転ばせるぐらいなら僕達にも何とかできるかもしれないが……それでも確実に倒せるとは限らない。ダイダラボッチは触れるだけでも動けなくなる可能性は低いだろうしね」
「言われてみればあのデカブツ、普通に剣を投げ飛ばしていたね。やっぱり、身体に突き刺さらないと上手く封印する事はできないのかね……」
「それなら同じ能力を持つナイの旋斧を突き刺して封印する事はできないの?」
「それは無理だと思うよ。あの巨大剣の魔力の吸収量は普通じゃない、地面に突き刺しただけで周囲の植物が枯れ始めていたからね。ナイ君の旋斧にそれほどの効力はないだろう?」
「うん、流石にそこまではできないね」
ナイの旋斧を地面に付きたててもせいぜい周りに生えている雑草を枯れさせるぐらいしかできず、巨大剣と旋斧では魔力を吸収する能力は同じでも吸い上げられる魔力量に大きな差があった。
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