最終章 《封印の方法》

巨大剣がダイダラボッチが破壊できないのは直に触れる度にダイダラボッチの生命力(魔力)を奪い、自己修復と強度を上昇させているからだとアルトは推察していた。しかし、ダイダラボッチにとってはこの巨大剣は長年の間、自分を封じ込め続けてきた忌々しい魔剣である。


昨日のダイダラボッチの様子を見る限り、ダイダラボッチはこの巨大剣を破壊しようと考えているのは間違いない。しかし、どうしてダイダラボッチがこの巨大剣に拘り続けるのかアルトは気になった。



(この巨大剣をダイダラボッチが憎んでいるのは間違いない。しかし、それならばどうしてわざわざする事に拘るんだ?)



ダイダラボッチが巨大剣を破壊する理由は巨大剣を憎んでいるからだとしても、あれほど破壊に失敗したというのに捨てずに地面に突き刺して去っていった事にアルトは違和感を抱く。


考えられるとしたらダイダラボッチがこの巨大剣を何処かに放り捨てたまま去らないのは、ダイダラボッチにとって巨大剣はどうしても破壊しなければならない代物だという事だ。つまり、ダイダラボッチはこの巨大剣の破壊に拘る理由はダイダラボッチ自身が巨大剣を恐れている可能性が高い。



「これはあくまでも僕の予測に過ぎないが……ダイダラボッチがこの魔剣を恐れているのは再び封印される事を恐れているからじゃないのかな?」

「封印?」

「この巨大剣は元々はダイダラボッチの身体に突き刺さり、今まで魔力を吸い上げていた。それはつまり、この巨大剣のせいで魔力を奪われていたダイダラボッチは動く事ができなかったんだ」

「それは……十分に有り得るね」



魔力切れを引き起こすと大抵の生物はまともに動く事もできず、それはダイダラボッチであろうと例外ではない。魔力切れを引き起こせばダイダラボッチもまともに動く事はできず、だからこそ今まで地中の中で封じられていたのだろう。



「待ってください、それならこの巨大剣をもう一度ダイダラボッチに突き刺せば……また、封印できるんじゃないですか!?」

「その可能性は確かにある。実際、この魔剣は効力を失っていない。その証拠に魔剣の周囲の植物が枯れている所をみるに今も尚、この魔剣は周囲から魔力を吸収している」

「という事は……こいつを突き刺せばまたダイダラボッチは魔力を吸い上げられて動けなくなるという事かい!?」



アルトの言葉に全員が驚愕し、遂にダイダラボッチを封印する方法が判明した。しかし、ここでミイナが素朴な疑問を口にする。



「……でも、それならどうしてダイダラボッチは復活したの?ダイダラボッチが出てきた時、この巨大剣は抜かれていたなら自力で復活したんじゃないの?」

「そう、そこが一番気になる事だ」



ダイダラボッチが復活した時、その光景を見ていた者達はダイダラボッチが大穴から抜け出す時には既に巨大剣を引き抜いてその手に持っていたとアルトは報告を受けていた。


どうして巨大剣で封じられているはずのダイダラボッチが復活したのか理由が分からず、その原因を知っている可能性があるとすれば現場に存在したナイしかいない。そろそろ彼も起きる頃合いだと判断し、一旦アルトは引き返す事にした――






――アルト達が飛行船の医療室に戻ると既にナイは意識が目覚めており、怪我の方も完治していた。イリアの薬のお陰で彼の身体も回復し、今日の所はゆっくりと身体を休めれば明日には普通に動けるはずだとイリアは告げる。



「ナイさんの回復力は凄いですね、これなら明日には普通に動けるようになりますよ」

「そうか、それは良かった」

「ごめん、皆……色々と迷惑をかけて」

「謝らなくていいよ〜」

「うん、無事で良かった……でも、これからはもう一人で無茶をしたら駄目だよ?」

「ぷるんっ(心配させたらあかんで)」



ナイの傍にはモモとリーナの姿もあり、プルリンもイリアの頭の上に居た。まずはナイが無事である事にアルト達は安堵するが、彼が無事なのであればダイダラボッチが復活した時に何が起きたのかを確認するため、アルトは事情を問い質す。



「ナイ君、病み上がりの所を悪いんだが何が起きたのか詳しく話してくれるかい?アンがどうなったのか、ダイダラボッチが復活した時の様子を教えてほしい」

「うん、分かったよ」



アルトの質問にナイは頷き、彼は昨日起きた出来事を全て語る。唐突に発生した地震で地割れが発生し、その地割れに牙竜が落ちてしまった事、そしてアンは自分と共にダイダラボッチの攻撃を受けた事を話す。


反魔の盾を所有していたナイは奇跡的に地面の中に埋もれても生きていたが、アンの場合は彼のような強靭な肉体を持ち合わせておらず、恐らくは即死していると考えられた。当然と言えば当然の話であり、ナイでさえも反魔の盾がなければ死んでいたのは間違いない攻撃だった。

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