最終章 《妖刀の入手条件》
「待ってくれ!!様子がおかしい……どうして出てこないんだ?」
「はあっ!?何を言ってるんだい、出てこないなら都合がいいだろう!?」
「いや……」
アルトはいつまでも洞窟の中から鎧武者が出てこない事に疑問を抱き、ここで彼は足を止めて考え込む。鎧武者の力ならば大太刀を利用せずとも岩石を破壊して脱出する事はできるはずだった。それなのに何時まで経っても出てくる気配はない。
洞窟の中に閉じ込められた鎧武者が出てこない事にアルトは疑問を抱き、中の様子を想像する。洞窟の中には光源になりそうな物はないため、出入口を閉ざされれば洞窟の中は「暗闇」に覆われる。
(暗闇……?)
不意にアルトは暗闇の中に閉じ込められた鎧武者の姿を存在し、彼の中で何かが思いつきそうだった。今現在、鎧武者は暗闇の空間に閉じ込められている。もしかしたら鎧武者は光が届かない場所に閉じ込められると動けなくなるのかもしれない。
(もしも人造ゴーレムが暗闇の中で動けないとしたら……どうして夜なのに動けたんだ?)
現在の時刻は深夜を迎え、普通ならば真っ暗闇に覆われている時間帯である。しかし、牙山は夜だというのに明るく、アルトも他の女性陣の姿をはっきりと捉える事ができた。
その理由は空を見上げれば簡単に判明し、今日は「満月」だった。月の光に照らされている事で深夜だというのにアルト達はお互いの姿を確認出来る程に明るい。
(そうか、満月のせいであの鎧武者は動く事ができたのか。けど、どうして暗い場所だと動けないんだ……暗い?)
アルトは自分の考えた「暗い」という単語が引っかかり、何かが思いつきそうだった。自分が見落としている事を確かめるため、今までの情報を整理する。
(牙山、牙竜、シノビ一族、巻物……暗闇?)
これらの情報を集めてアルトは熟考し、何時までも動かない彼に他の者たちが心配すると、ここでアルトは遂に思い至る。
(暗闇……暗黒空間……黒……黒髪!?)
全てを悟ったようにアルトは目を見開き、彼は鎧武者が洞窟の中に閉じ込められた事、そしてシノビ一族に妖刀の在り処を記した巻物を託した人間の事を考える。
牙山の事を記した巻物をシノビ一族に管理させたのは間違いなく和国の人間であり、そして和国の人間にはこの世界の人間にはないある特徴があった。
「まさか……いや、それなら説明が付くが」
「アルト王子?いったいどうしたんだい、さっきからぶつぶつと……」
「いや、すまない……だが、もしかしたらだが鎧武者に襲われない方法が見つかったかもしれない」
「えっ!?ど、どうして!?」
「僕の推理が正しければ……よし、ちょっと待ってくれ」
アルトは自分の
「これだ!!」
「ちょっ!?王子、いったい何を!?」
「何やってんだい!?」
絵具を両手にぶちまけたアルトは自分の髪の毛に塗りたくり、その彼の行動に他の者たちは混乱する。アルトは自分の髪の毛を「黒」に無理やり染めると、先ほど回収した鏡のように煌めく剣と盾を確認して自分の髪の毛が上手い具合に染まった事を確かめると、他の者たちに指示を出す。
「リン副団長、悪いが君の力であの岩石を壊してくれ。この距離から出もできるだろう?」
「えっ……し、しかし、そんな事をすれば奴が出てきます!!」
「分かっている。だが、大丈夫だ。僕の推理が正しければ奴は襲ってこない……もしも奴が和国の人間が作り出した人造ゴーレムだとしたら、きっと和国の人間は自分達の子孫が襲われない細工を施しているはずだ」
「ど、どういう意味だい?アルト王子は和国の子孫じゃないだろう?」
「そうとも言い切れないさ、王国の王族は色々な人間の血を継いでいる……僕の先祖にも和国出身の人間がいるかもしれない」
アルトは笑みを浮かべて自分の髪の毛を確認し、もしも自分の推理が間違っていた場合は彼の身が危険に晒される。だが、それでもアルトは自分の直感を信じて他の者を説得してもう一度だけ鎧武者と接触する事にした――
――準備が整えるとアルトは自分の腰に長いロープを巻き付け、岩石の近くに立つ。彼が自分の身体に巻き付けたロープはテンとルナが握りしめ、二人は洞窟から見えない位置に待機する。
もしもアルトの身が危険に晒されそうだと判断した時、ロープを掴んでいる二人が強制的にアルトを引き寄せて逃げる算段だった。そして洞窟から離れた位置にリンは暴風を構え、洞窟の左右にはヒイロとミイナが姿を隠す。
「よし、やってくれ」
「……斬!!」
アルトの号令の元、リンは覚悟を決めた様に鞘から剣を引き抜いて風の斬撃を放つ。斬撃は洞窟を塞ぐ岩石を見事に真っ二つに切り裂き、左右に割れた岩石が地面に倒れ込むと、洞窟の中が月の光に照らされる。そして内部に閉じ込められていた鎧武者が姿を現す。
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