最終章 《人造ゴーレムの起源》

――迷宮都市以外に人造ゴーレムが存在した事が発覚し、しかも迷宮都市の人造ゴーレムが西洋の甲冑騎士を連想させるが、牙山を守護している人造ゴーレムの場合は東洋の鎧武者を想像させる姿をしていた。


巨大なゴーレムだと思われていた敵の内部から人造ゴーレムが現れた事にテン達は戸惑い、しかも迷宮都市で見かけた人造ゴーレムとは姿形が全く違う。更に外殻を破壊して姿を現した人造ゴーレムの手には「大太刀」のような刃物が握りしめられていた。



「オアアアアアアアッ!!」

「な、何だこいつはっ!?」

「まさか……信じられない、だが確かに……」

「アルト王子、呆けている場合じゃありません!!後ろに下がっててください!!」



真の姿を晒した人造ゴーレムに対してテン達は混乱しながらも武器を構えると、人造ゴーレムは手にしていた大太刀を構える。大太刀自体がこの世界でも珍しい武器ではあり、それを見た者達は警戒心を抱く。



「なんだこいつ……長細い剣を持ってるぞ」

「和国の武器かい?」

「まさか魔剣では……」



大太刀を構えた鎧武者(人造ゴーレム)に対してテン達は警戒していると、鎧武者は大太刀を上空に向けて伸ばす。その行為にテン達は戸惑うと、アルトはすぐに何かに気付いたように声をかける。



「まさか……いけない!!皆、あの刃を受けるな!!」

『えっ?』

「ウオオオオッ!!」



アルトの言葉を聞いて他の者たちは呆気に取られると、鎧武者は大太刀を両手で握りしめ、近くに立っていたルナの元に向かう。ルナは自分に向かってくる鎧武者に対して戦斧を振りかざす。



「おっ!?ルナとやる気か!!」

「駄目だ、そいつの攻撃を受けるな!!」

「何だって!?おい、ルナ!!そいつから離れ……」

「オアアッ!!」



ルナは戦斧を構えて鎧武者を迎え撃とうとしたが、それをアルトは必死に止める。彼の真剣な表情を見て何かまずいと察したテンは注意を行う。


しかし、既にルナは鎧武者に攻撃を仕掛けようと戦斧を振りかざす。そして鎧武者の大太刀と戦斧の刃同士が接触した瞬間、まるで豆腐のような柔らかい物でも斬るかのように大太刀の刃が戦斧の刃を切断した。



「オアアアッ!!」

「ああああっ!?ル、ルナの斧がぁあああっ!?」

「馬鹿、言っている場合かい!!」



自分のお気に入りの武器を破壊されたルナは涙目になるが、慌ててテンがルナの身体を引き寄せて鎧武者から距離を取る。鎧武者は追撃を行わず、大太刀を構えて他の者達を警戒した。



「フゥウウウウッ……!!」

「な、何だい今の切れ味は……ルナ、あんたの武器は魔法金属製せいじゃなかったのかい?」

「そうだ!!少し前に打ち直して貰ったばかりなのに……このっ!!絶対に許さないからな!!」



聖女騎士団一の腕力を誇るルナが愛用する戦斧は魔法金属のミスリルと他の金属の合金であり、非常に頑強で本来ならば簡単に壊れるはずがない。しかし、鎧武者が装備する大太刀はいとも容易く彼女の戦斧を切断した。


魔法金属を破壊できるのは魔法金属以外にはあり得ず、アルトは注意深く観察すると鎧武者が装備する大太刀の刃の一部分が青く光り輝いている事に気付く。この時に彼は大太刀の正体を黒塗りされた「オリハルコン」で構成された武器だと見抜く。



「そういう事か……どうやらこの人造ゴーレムの装備している大太刀はオリハルコン製だ!!」

「オリハルコンだって!?あの聖剣の製作に利用される伝説の金属かい!?」

「そうだ!!ドゴンを構成する魔法金属だ!!しかも、あの切れ味……きっと他にも何か細工があるはずだ!!」

「オオオオッ!!」



アルトの声に反応したかのように鎧武者は大太刀を振りかざすと、他の者たちは慌てて距離を取る。相手の武器が伝説の聖剣と同じくオリハルコン製の武器の場合、魔剣や魔斧の類でも破壊される危険性はあった。



「オアアアッ!!」

「うひゃあっ!?」

「地面が割れた……違う、斬った?」

「な、なんてふざけた切れ味だ……!!」



ヒイロに目掛けて鎧武者は大太刀を振り下ろし、彼女は咄嗟に横に跳んで回避する事に成功したが、振り下ろされた刃は地面に深々と食い込む。その刃の切れ味に他の者は冷や汗を流すが、この時にアルトは刃の方から妙な物音を耳にする。



(何だ?この音は……まるで何かが震えているような……まさか!?)



地面に食い込んだ大太刀を見てアルトは何かに気付き、彼は咄嗟に地面の砂利を握りしめて鎧武者に放つ。そんな攻撃が鎧武者に通じない事は理解しているが、彼の狙いは鎧武者ではなくて大太刀の刃の方だった。



「喰らえっ!!」

「オアッ……!?」

「アルト王子!?いったい何を……これは!?」

「何だ、今のは!?」



刃に小石や砂が触れた瞬間、まるで弾かれるように飛び散った。その光景を目にした者達は大太刀の刃が超高速に「振動」している事に気付いた。

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