最終章 《破壊工作》

「なるほど、ここがその壊さないといけない岩壁かい?」

「そういう事になりますね……岩の様に見えますが、実際は地属性の魔法で練り固められた土砂だそうです。但し、その硬度は金剛石をも上回ると書かれています」

「金剛石ね……」



テンは色違いの岩壁を叩いて確認し、触れた感じでは岩のようにしか見えない。しかし、ここを破壊すれば岩山の中に隠されている妖刀を回収できるため、彼女は気合を込めて退魔刀を叩き付ける。



「うおりゃあっ!!」

「きゃっ!?」



彼女が全身の力を込めて退魔刀を岩壁に叩き込むと、表面の部分が少し削れるが壊す事はできなかった。逆に攻撃を仕掛けたテンの方が腕が痺れてしまい、彼女は退魔刀を手放すと涙目を浮かべる。



「いてててっ……さ、流石に硬いね。あたしの剛剣でもびくともしないなんて」

「テンさんでも壊せないんですか!?」

「これは想像以上に硬そうだな……ふんっ!!」



リンも試しに風の斬撃を放つが、先ほどのテンと同様に岩壁を少し削り取る程度の損傷しか与えられず、表面を欠ける程度で罅すら入らない。



「なんて硬さだい……こいつは確かに骨が折れそうだね」

「やはり、爆破するしかないのでしょうか……」

「爆破といっても、下手に威力が大きすぎては岩山が壊れるのでは……」

「だが、生半可な威力ではこの岩壁は崩せない。さて、どうしたものか……」



爆弾の材料となる素材は一応は持って来たが、岩壁を破壊するには相当な威力の爆弾を作り出す必要がある。下手に威力を上げ過ぎれば岩山が崩壊する危険性もあり、その場合は内部に秘められている妖刀も危険に晒される。


出入口を塞ぐ岩壁だけを壊す爆弾を作るとなると難しく、テンは悩んだ末に仕方なくある人物の協力を仰ぐ事にした。



「しょうがないね……ヒイロ、あんたの所の主人を呼び出して来な」

「えっ?」

「アルト王子の事だよ。魔道具職人の王子様なら爆弾ぐらい簡単に作れるだろう?」

「あっ……な、なるほど!!」



テンの言葉を聞いてヒイロはアルトの技術力を思い出し、普段から色々な魔道具を製作している彼ならば爆弾を作り出すのは造作もない事かもしれない。すぐにヒイロは飛行船へと引き換えし、アルトに事情を伝える事にした――






――飛行船に残っていたアルトはミイナと他に何名かと協力してもらい、ドゴンの改造を施していた。ブラックゴーレムとの戦闘でドゴンも損傷し、その修理と更なる改造のために彼は尽力していた。



「アルト王子、このブラックゴーレムから回収した素材も使えそうですよ」

「よし、すぐに改造に取り掛かろう。工房の準備はできたかい?」

「一応は造りましたが……マグマゴーレムの核を利用して作った炉です」

「ドゴン……」



アルトは飛行船の修理中、ドゴンの改造に必要不可欠な「工房」を造り出した。ブラックゴーレムとの戦闘で飛行船は大きな損害を受け、この際にアルトはそれを利用して飛行船の修理の傍らに工房を作り出す。


オリハルコンで構成されているドゴンを改造するためには普通の炉では火力不足だと判断し、アルトは回収したマグマゴーレムの核を利用する。これらはブラックゴーレムに内蔵されていた代物であり、マグマゴーレムの核を利用して強力な熱を引きだす。



「あんしんしてくれドゴン、君が次に目覚めた時は世界最強のゴーレムになるんだ。ゴーレムキングもブラックゴーレムも上回る地上最強のゴーレムに生まれ変わる!!」

「ドゴンッ(←期待の眼差し)」

『…………』



アルトとドゴンのやり取りに他の者達は何か言いたげな表情を浮かべるが、ここまで来たらもう彼等を止める事はできず、最後まで付き合ってやる事にした。



「よし、じゃあ改造を開始するぞ。イリア、準備はいいかい?」

「分かりましたよ。私も素材がなくて薬作りもできませんからね。ここまで来たら最後まで付き合いますよ」

「ああ、頼んだよ。これが成功したら……一緒にご飯でも行こう」

「報酬がしょぼくないですか!?」

「あ、割勘で頼むよ」

「報酬ですらない!?」



イリアは突っ込みしながらも炉の準備を行い、この時にアルトはドゴンに嵌め込んだ自分の王族の証であるペンダントを回収する。このペンダントを回収するとドゴンは意思のない人造ゴーレムに戻るが、改造作業中は彼の意識がない方が好都合だった。



「ドゴン、すぐに目を覚ませるからね……」

「ドゴン……」

「よし、改造開始だ!!ランファンさん、ゴンザレス君頼むよ」

「分かった」

「こうか?」



全ての準備を整えたアルトは炉の中にドゴンを押し込むため、巨人族のランファンとゴンザレスに協力して貰い、ドゴンを運び出して貰う。この場には他にもルナやガロの姿もあり、アルトが土下座で協力を申し込まれた者達が勢揃いしていた。

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