最終章 《一人じゃない》

(眩しい……何だ?)



自分の顔に光が当てられた事にナイは驚き、どこから光が当てられているのかと視線を向けると、ナイは自分の反魔の盾に太陽の光が反射して自分の顔に当たった事に気付く。


ただの偶然だろうが、ナイは反魔の盾の跳ね返した光を浴びた途端、この反魔の盾の本来の持ち主であるゴマンを思い出す。彼を思い出したナイはある事に気付き、自分は今日まで生き延びる事ができたのはこの盾のお陰だと思い出す。



(そうだったね、ゴマン……それに爺ちゃんも)



ナイはアルの形見である腕鉄鋼に視線を向け、この盾も腕鉄鋼もナイが信頼する二人から受け継いだ物である。自分にはこんなにも心強い味方が常に居た事を思い出し、ナイは初心を思い出して自分の持てる全てを利用して戦う事にした。



(そうだ、僕は一人じゃない……爺ちゃんもゴマンも一緒に戦ってくれるんだ!!)



気を取り直したナイは牙竜と向き合い、その表情は完全に恐怖を打ち消していた。先ほどまで孤独感で心が押し潰されそうになったが、亡き養父と親友の形見が傍にある事を思い出してナイは戦う覚悟を決める。



「諦めるもんか……絶対に!!」

「グギャッ……!?」



自分に対して恐怖を抱いていたはずのナイが唐突に変化した事に牙竜も気づき、戸惑うように距離を置く。そんな牙竜を見てナイは旋斧を背中に戻し、装着していた刺剣を取り出す。



(この刺剣だってアルトが改造を加えたんだ)



この場にはいないアルトの事を思い出し、刺剣を手にしたナイは柄の部分に取り付けられている風属性の魔石を操作する。アルトの改造を施した刺剣は風属性の魔石を利用して貫通力と移動速度を高め、攻撃に利用する事ができる。



「喰らえっ!!」

「グギャッ!?」



を生かしてナイは牙竜に目掛けて刺剣を投げ放ち、予想外の攻撃を行ったナイに牙竜は咄嗟に右前脚を顔面に構える。彼が投げ放った刺剣は空中で高速回転しながら接近し、牙竜の羽根に衝突する。


刺剣の刃はミスリル製であり、これを打ったのは王国一の鍛冶師であるだった。ハマーンによって刃が取り換えられた刺剣は攻撃威力が増し、土鯨級の硬さを誇る牙竜の鱗を抉り、刃が体内にまで突き刺さる。



「グギャアアアッ!?」

「そこだっ!!」



刺剣によって右前脚を負傷した牙竜は悲鳴を上げ、その隙を逃さずにナイは駆け出す。彼は旋斧を振りかざし、負傷した箇所に目掛けて刃を叩き付けた。



「だああっ!!」

「ッ――――!?」



傷口に目掛けて振り下ろされた旋斧の刃がめり込み、それによって牙竜の体内に直接闇属性の魔力が流れ込む。その影響で牙竜は生命力を大きく削られてめり込み、その隙にナイは距離を置く。


調子に乗って追撃を加えれば牙竜の反撃を受けるかもしれず、ナイはここで左腕の腕鉄鋼に搭載している「フックショット」を利用する。近くの森の樹木に目掛けてナイはフックショットを撃ち込み、それを利用して身体を引き寄せてその場を離脱した。



「グギャアアアッ!!」

「うわっ!?」



ナイがフックショットで退避した直後、牙竜は左前脚を振りかざしてナイが立っていた場所に叩き付ける。その結果、左前脚は地面の中に陥没し、それを見たナイはもしも判断が遅ければ自分は死んでいたと冷や汗を流す。


フックショットのお陰でどうにか命拾いしたナイは強化術がそろそろ切れる頃合いだと気付き、急いで森の中に逃げ込む。強化術が完全に切れる前にナイは身を隠し、煌魔石を利用して肉体の回復に専念する。



(ふうっ……やっぱり、モモの煌魔石が一番だな)



モモが作り出した煌魔石は普通の聖属性の魔石よりも魔力が宿り、回復効果も高い。ナイは魔力を聖属性の魔力を利用して再生術を発動させ、強化術の反動で傷ついた肉体を治療する。




――グァアアアアッ!!




木々を薙ぎ倒す音と牙竜の怒りの咆哮が響き渡り、どうやら森の中に逃げ込んだナイを追って牙竜が暴れているらしい。しかし、ナイはそれを予測して事前に「隠密」の技能を発動させて気配を殺す。


障害物の多い森の中でナイは気配を殺して身を隠し、今の所は順調に牙竜に損傷を与えていた。しかし、牙竜との戦力差は大きく、相手の攻撃を一発でもまともに受ければナイは敗北する。それでも他の仲間が駆けつけるまでナイは時間を稼ぐ事に集中し、肉体が回復するとナイは森の中で身を隠す。



(時間を稼ぐんだ、1秒でも長く……そうすれば皆が来てくれる)



牙竜の様子を伺いながらナイは旋斧を握りしめ、今度はどのような攻撃で牙竜を翻弄するのか考える。こんな状況だというのにナイは無意識に笑みを浮かべ、気持ちが落ち着いた事で心の余裕ができた。



(これまでの経験を全部生かすんだ)



ナイは自分の手持ちの装備を確認し、他に何か使える物がないのか探していると、彼は水晶札のペンダントを見つけた。




※見直したら今日も6話投稿してました(´;ω;`)ホントウニマチガエタ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る