最終章 《貧弱の英雄VS最強のゴーレム》

「なっ!?あれを受けてまだ立てるのかい!?」

「皆は下がっててください!!巻き込まれないように!!」

「ナイ君……一人で大丈夫かい?」

「が、頑張って!!もしも怪我をしたらすぐに治してあげるからね!!」



ナイは皆から離れると正気に戻ったアルトは心配そうな声をかけ、モモはナイの応援を行う。そんな二人に対してナイは頷き、ブラックゴーレムの元へ駆け出す。


ブラックゴーレムは現れたナイに対して口元を開き、赤色の光を灯す。それを見たナイはドゴンを吹き飛ばした「熱線」を放射するつもりだと気付き、反魔の盾を構えた。



「アガァアアアアッ!!」

「くぅっ!?」



反魔の盾を利用してナイはブラックゴーレムが吐き出した熱線を受け止めると、まるで鏡に反射するかの如く、熱線を別方向へと受け流す。反魔の盾は衝撃と魔法攻撃を跳ね返す性質を持ち、それを利用してナイはブラックゴーレムの攻撃を防ぎながら向かう。



「うおおおおっ!!」

「ゴアッ!?」



旋斧を手にしたナイはブラックゴーレムに振りかざすと、相手は左腕を構えて防ぐ。単純な高度は通常種のゴーレムとは比べ物にならず、ナイの全力の一撃を受けてもブラックゴーレムには罅も入らない。



(やっぱり硬い……生半可な攻撃は通じないか)



ブラックゴーレムを倒すためにはナイも渾身の一撃を与えなければならず、そう考えると旋斧では威力不足だった。ナイは距離を取ると旋斧を手放し、岩砕剣を引き抜く。一撃の重さならば岩砕剣の方が上であり、更に今回は反魔の盾を利用する。



「喰らえっ!!」

「ゴアアッ!?」



反魔の盾を構えたナイは岩砕剣を叩き付けると、その際に発生した衝撃波をブラックゴーレムに放つ。思いもよらぬ攻撃を受けたブラックゴーレムは体勢を崩し、そんなブラックゴーレムに対してナイは踏み込む。


岩砕剣を両手で握りしめたナイは「剛力」の技能を発揮させ、更にテン仕込みの剛剣の一撃を放つ。全身の筋力を利用してナイは岩砕剣を振り下ろすと、ブラックゴーレムの肉体に衝撃が走った。



「だあああっ!!」

「ウオオッ!!」



ブラックゴーレムはナイの攻撃を両腕を交差して防ぎ、まるで格闘家のような防御をしたブラックゴーレムにナイは驚く。以前に遭遇したブラックゴーレムと比べて魔物使いのアンが使役するブラックゴーレムは格闘家の動作を取り入れ、不用意に近付いてきたナイに対して足払いを行う。



「ウオオッ!!」

「うわっ!?」

「危ない!?」



ナイが足払いを受けて地面に倒れると、ブラックゴーレムは右足を振りかざして踏み潰そうとしてきた。それを見た他の者が声を上げるが、ナイは自分に迫りくる足に対して咄嗟に盾で弾き返す。



「このっ!!」

「ゴアッ!?」



踏み潰そうとした瞬間に反魔の盾によって防がれ、その際に衝撃波が発生してブラックゴーレムの体勢が崩れる。ナイは体勢を立て直すと岩砕剣を振りかざし、今度は一回転しながら叩き込む。



「円斧!!」

「ゴガァッ!?」

「よし、押してるよ!!」

「行けぇっ!!」



回転させる事で勢いを加速させて放つナイの剣技を受け、ブラックゴーレムは後退するとテンとルナが声を上げる。ナイの方が若干押しており、どんな攻撃も反魔の盾で弾き返せる彼が有利だった。


しかし、ブラックゴーレムも怒りを露わにして徐々に発熱し、全身の色が赤色に変色を始める。またもや熱線でも吐き出すつもりなのかとナイは警戒するが、ブラックゴーレムは背中の噴射口から火属性の魔力を放出させて加速を行う。



「ウオオオオッ!!」

「うわっ!?」

「は、早い!?」

「あんなに大きいのに何て早さなの!?」



ブラックゴーレムは加速するとあまりの移動速度にナイは対処しきれず、ブラックゴーレムは上空へと跳び上がる。それを見たナイ達は何をするつもりなのかと見上げると、ブラックゴーレムは空中に浮かぶと両腕を突き出す。



「ゴアアアアッ!!」

「おい、嘘だろ!?」

「そんなまさかっ……逃げろ、ナイ君!!」

「えっ!?」



両腕を構えた瞬間にブラックゴーレムの肩の部分が変形し、背中だけでなはなく両肩にも「噴射口」が誕生した。そして噴射口から火属性の魔力が放出されると、凄まじい勢いで両腕が本体から離れて地上に発射された。


自身の両腕を切り離して地上へ撃ち込んだブラックゴーレムの行動に誰もが驚き、ナイは慌てて避けようとしたが加速した状態のブラックゴーレムの腕は本体よりも移動速度が速く、右拳の方が先にナイの手にしていた反魔の盾と衝突する。



「くううっ!?」

「は、弾き返した!!」

「いや、駄目だ!!」



初撃は防ぐ事に成功したが、この時にナイの反魔の盾が弾き飛んでしまう。どうやらブラックゴーレムは攻撃を仕掛ける際に掌を開いた状態だったらしく、反魔の盾に衝突した時に盾に指が食い込んでいたらしい。


盾が弾かれたナイは続けて放たれた左腕に対して岩砕剣で防ぐしかなく、衝撃に備えて大剣を支える。そして岩砕剣に左拳が衝突した瞬間、地面にクレーターが出来上がる程の衝撃がナイへと襲い掛かった。

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