最終章 《ブラックゴーレムの進化》
「ゴアアアアアッ!!」
「ドゴォンッ!?」
「まずい!?皆、伏せな!!」
「わあっ!?」
「きゃあっ!?」
ドゴンを拘束した状態でブラックゴーレムは口元に赤色の光を放つと、それを見たテンは咄嗟にヒナとモモの身体を掴んで身体を伏せる。他の者たちも彼女に続いて身体を伏せるが、アルトだけはドゴンの名前を叫びながら彼を助けに向かおうとした。
「ド、ドゴォオオンッ!!」
「駄目です、王子様!?」
「死んじゃいますよ!?」
しかし、アルトの後ろからイリアとエリナが飛び込んで彼を押し倒し、次の瞬間にブラックゴーレムは至近距離からドゴンに向けて火属性の魔力を吐き出す。本来ならば火竜にしか放てないはずの「火炎の吐息」をブラックゴーレムはドゴンの顔面に浴びせた。
「アガァアアアッ!!」
「ッ――!?」
「止めろ、止めるんだぁあああっ!!」
至近距離から熱線を受けたドゴンは顔の形が変形し、そのまま身体を手放されて吹き飛ぶ。あまりの威力にドゴンは後方に存在した飛行船の中に突っ込み、再び飛行船が激しく揺れ動く。
合計で3度目の攻撃を受けた飛行船はもう大破寸前であり、これ以上に攻撃を受けたら沈みかねない。しかも最悪な事にドゴンを吹き飛ばしたブラックゴーレムはまだ発熱し、今度は背中の噴射口を開いて加速しようとしていた。
「ゴアアアッ……!!」
「ちょっ!?あの化物、本当に船を壊すつもりですよ!!」
「や、やばい!!何とかしな!?」
「何とかって……どうすればいいんですか!?」
「ド、ドゴン……ドゴォンッ!!」
ブラックゴーレムが飛行船に突っ込もうとしている事に気付いた者達はあわてふためくが、その中でアルトだけは船の中に突っ込んだドゴンの名前を叫ぶ。そんな彼に気付いたブラックゴーレムはアルトに視線を向け、彼に身体を向けて照準を定める。
「ゴオオオッ!!」
「やばい!?あいつ、こっちに突っ込むつもりだよ!!」
「ちょっと!!アルト王子、早く逃げますよ!!」
「ううっ……」
「号泣!?そんなにあのゴーレムが大事だったんですか!?」
「で、でも早く逃げないと死んじゃうよ!?」
項垂れるアルトに他の者が必死に彼を連れて逃げようとするが、既にブラックゴーレムは準備を整えていた。今度は標的を逃さず、先ほどよりも移動速度を上げるつもりなのか地面に両手を喰い込ませて背中から火属性の魔力を放出する。
凄まじい勢いでブラックゴーレムの背中に存在する噴射口から魔力が解き放たれ、地面に掴んだ両手を離せばブラックゴーレムは最高速度でアルトに突っ込む。直撃すればアルトどころか彼の周りにいる人間達も死ぬ事は間違いなく、更に飛行船の方も確実に破壊できる。
――ウォオオオオッ!!
ブラックゴーレムは両手を離した瞬間、凄まじい速度で突っ込む。その光景を目にした者達はもう駄目かと思った時、何者かが間に割って入って円盤型の「盾」を構える。
「させるかぁっ!!」
「ゴアッ――!?」
加速状態のブラックゴーレムの前に現れたのは「反魔の盾」を構えたナイであり、彼は正面からブラックゴーレムの体当たりを受け止めた。普通ならばナイは吹き飛んでいてもおかしくはないが、彼の装備する反魔の盾はあらゆる衝撃を跳ね返す性質を持つ盾だった。
ブラックゴーレムと盾が衝突した瞬間、凄まじい衝撃波が発生して地面に亀裂が走り、ブラックゴーレムとナイはお互いに後方へ吹き飛ぶ。ナイはアルト達の立っている方向へ飛ばされ、ブラックゴーレムの方は後方に存在した木々に身体をぶつけて何本もの大木を巻き込んで倒れ込む。
「うわぁっ!?」
「きゃあっ!?」
「ぐふぅっ!?」
「ひゃんっ!?」
ナイは仲間達を巻き込んで地面に倒れ込み、この際に彼はモモを押し倒す形で彼女の胸元に顔を突っ込む。反魔の盾が上手く衝撃を跳ね返してくれたが、完全には防ぎきれずに吹き飛んでしまった。
「いたたっ……ご、ごめん、モモ……怪我してない」
「う、うん……怪我はしてないけど……あっ、そこはくすぐったいよぅっ」
「ちょ、ちょっと……こんな時にいちゃつかないでよ」
「いててっ……ど、どうなったんだい?」
ナイとモモはお互いに頬を赤らめながらも立ち上がり、他の者たちも何とか起き上がる。彼等は派手に吹き飛んだブラックゴーレムに視線を向け、ナイは地面に落ちていた反魔の盾を拾い上げる。
(ふうっ……ありがとう、助かったよゴマン)
反魔の盾を手にしたナイは亡き親友の事を思い出し、もしも反魔の盾がなければナイは皆を守る事はできなかった。だが、まだ戦闘は終わっていないので気を抜く事はできず、ナイは反魔の盾を左腕に装備してブラックゴーレムの様子を伺う。
ブラックゴーレムは先ほどの衝撃で派手に吹き飛び、何本もの大木を破壊しながら地面に倒れ込む。普通の生物ならば生きていないだろうが、ブラックゴーレムはゆっくりと身体を起き上げる。
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