最終章 《勝つためには……》

「がはぁっ……!?」

「ナ、ナイくぅうんっ!!」

「モモ、駄目よ!!今近付いたら……!!」



ナイがブラックゴーレムの攻撃を受けて地面に倒れる姿を見て、反射的にモモは彼を助けるために飛び出そうとしたがヒナに止められた。


空中に浮かんでいたブラックゴーレムは地面に倒れたナイを見ると、容赦せずに今度は自分の身体ごと体当たりするつもりなのか突っ込んできた。それを見たナイは目を見開き、避ける事もできずに直撃を受けてしまう。



「ゴアアアアッ!!」

「うわぁああああっ!?」

「止めてぇえええっ!!」



ブラックゴーレムの突進を見てモモは悲鳴を上げ、ナイの身体に再び強烈な衝撃が広がる。それを見た者達はナイが死んだのではないかと思ったが、ナイは手にしていた岩砕剣でブラックゴーレムを防いでいた。



「ぐはぁっ……!!」

「ゴオオッ……!?」



自分の体当たりも岩砕剣で受け止めたナイにブラックゴーレムは驚くが、衝撃を完全に受け切れるはずがなく、ナイは血反吐を吐いて地面に力なく倒れ込む。それを見たブラックゴーレムはもうナイが動けないと判断し、それでも確実に止めを刺す岩砕剣越しに足を押し付けて踏み潰そうとした。



「ウオオオオッ!!」

「がああっ……!?」

「や、止めるんだ!!」

「もう見てられないぞ!!」

「ナイ君!!」

「ちくしょうがっ!!」



ナイが踏み潰されそうな姿を見て他の者たちは居てもたってもいられず、彼を救うために駆け出そうとした。しかし、それを予測していたかのようにブラックゴーレムは振り返り、口元に赤色の光を灯す。



「まずい!?皆、散るんだ!!」

「モモ、危ない!!」

「わあっ!?」

「アガァアアアアッ!!」



ブラックゴーレムはテン達に対して口元から熱線を放ち、それを事前に予想したアルトは全員に散らばるように指示を出していた事で避ける事に成功した。しかし、直撃は避けられても熱線が地面に衝突した瞬間に爆発を起こして他の者たちは巻き込まれてしまう。


爆発の衝撃でテン達は吹き飛ばされ、全員が地面に倒れ込む。その光景を確認したブラックゴーレムは邪魔者が消えたと判断してナイの止めを刺す事に集中しようとした。しかし、ここで足元に違和感を感じる。



「おいっ……お前、今何をした……!?」

「ゴアッ……!?」

「仲間に……手を出すな!!」



ブラックゴーレムがナイを見下ろした瞬間、今までにない気迫をナイは放ち、凄まじい腕力を発揮してナイはブラックゴーレムを持ち上げる。ブラックゴーレムの体重はロックゴーレムの何倍もの重量を誇るが、ナイは傷を負った状態でブラックゴーレムを持ち上げると、地面に叩き付けた。



「だあああっ!!」

「ゴアッ!?アガァッ!?ウオッ!?」



力任せにナイは何度もブラックゴーレムを地面に叩き付け、最終的にはブラックゴーレムの巨体を振り回す。あまりの腕力にブラックゴーレムは抵抗する事ができず、そのまま投げ飛ばされてしまう。



「うりゃあああっ!!」

「ゴアアアッ!?」



投げ飛ばされたブラックゴーレムは悲鳴を上げながら湖に向けて突っ込み、そのまま水中に沈んでしまう。普通のゴーレムならば水が弱点で戦闘不能なのだが、特殊な鉱石で構成されているブラックゴーレムには通じない。


水中に沈みながらもブラックゴーレムは身体を発熱さえ、再び赤色に変色すると噴射口から火属性の魔力を噴き出す。水中でも高速移動が可能らしく、ブラックゴーレムは水面に浮上すると怒りの咆哮を放つ。



「ウオオオオッ!!」

「くそっ……まだ動けるのか」



ナイは再生術を発動させてどうにか身体が動けるまでに回復すると、再び空中に浮上したブラックゴーレムを見て舌打ちを行う。ここまでの戦闘でブラックゴーレムに有効的な損傷は与えられておらず、その代わりに先ほどの攻撃でブラックゴーレムは両腕を失っていた。



(切り離した両腕は動かす事ができないのか……待てよ、そういえば前の時は……)



前回に戦ったブラックゴーレムは身体の各所に埋め込まれている黒水晶に魔力を吸収し、それを利用して攻撃を行っていた事をナイは思い出す。今回現れたブラックゴーレムも身体の各所に埋め込まれた黒水晶に火属性の魔力を宿していた。


以前の時はブラックゴーレムは吸収した魔力を解放すればすぐに魔力切れを引き起こしたが、今回のブラックゴーレムは凄まじい勢いで火属性の魔力を放出しているにも関わらず、魔力が切れる様子がない。よほど黒水晶に魔力を蓄積しているのかと思われるが、その魔力はどうやって手に入れたのかナイは気になった。


しかし、今はブラックゴーレムが魔力を蓄積させた方法よりも倒す方法を考えなければならず、この時にナイはブラックゴーレムから切り離された両腕に視線を向けた。両腕にも黒水晶が存在し、まだ魔力が残っているのか赤々と光っているのを確認すると、ナイはある事を思いつく。

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