最終章 《再戦》
「テン、投げるからな!!」
「待ちな!!投げるんじゃなくてあんたも一緒に下り……!?」
ブラックゴーレムが甲板に移動する前にルナは退魔刀を地上へ投げおろそうとした時、土煙を払いのけながら歩いていたブラックゴーレムが赤色に変色した。
最初に飛行船に突っ込んで来た時のようにブラックゴーレムは肉体を赤く変色させ、全身に火属性の魔力を纏う。そして背中の部分にまるで飛行船に搭載されている「噴射機」の噴射口を想像させる窪みが出来上がると、火属性の魔力を噴出して加速する。
「ウオオオオッ!!」
「えっ……うわぁあああっ!?」
「ルナ!?」
背中の噴射口から火属性の魔力を放出させて加速したブラックゴーレムが船体に突っ込み、この時にルナは甲板の上に倒れ込む。二度目の体当たりを受けた飛行船が激しく揺れ動き、今度は側壁の部分に穴ができてしまう。
「な、何が起きてるんだい!?」
「ルナ、無事ですか!?」
「返事をしてください!!」
「いててっ……し、死ぬかと思った」
土煙が晴れてテン達は飛行船の様子に気付くと、甲板にいるはずのルナに声をかけた。彼女は右手に退魔刀を握りしめ、左手だけで船にしがみついていた。危うく甲板から転げ落ちそうになったが、どうにか堪えていた。
ルナが無事である事にテン達は安堵したが、ブラックゴーレムの方は船内に入り込んだらしく、船は激しく揺れ動く。そのせいでルナが危うく落ちそうになるが、慌ててテンはランファンを起こす。
「ランファン!!起きな、ルナが落ちそうなんだよ!!」
「うっ……こ、ここは?」
「しっかりしな!!ほら、ルナを助けるよ!!」
意識を取り戻したランファンは状況を理解できない様子だったが、テンに急かされて彼女は立ち上がり、ルナが飛行船から落ちる前に彼女を抱き止めるために向かう。
「も、もう無理……落ちる!!」
「よし、そのまま手を離しな!!ランファンが受け止めるからね!!」
「ああ、必ず受け止める」
ランファンが両腕を広げるとルナは船から手を離し、彼女の元に目掛けて落下した。落ちてくるルナをランファンはしっかりと受け止めると、ルナは手に持っていた退魔刀をテンに渡す。
「テン!!これ持って来たぞ!!」
「よくやったね!!後は任せな……うわっ!?」
『ゴオオオオッ!!』
退魔刀をルナから受け取ろうとした瞬間、テンの耳にゴーレムの鳴き声が響き渡る。しかも先ほどのブラックゴーレムだけではなく、別のゴーレムの声が聞こえてきた。
何事かと全員が飛行船に視線を向けると、そこには異様な光景が映し出されていた。船体に出来上がった大穴から2体のゴーレムが組み合った状態のまま姿を現し、地上へと転がり込む。
「ウオオッ!?」
『ドゴンッ!!』
「あ、あれは……」
「アルト王子の護衛の……ゴーレム!?」
船体からブラックゴーレムを叩きだしたのはアルトに従う人造ゴーレムの「ドゴン」であり、ドゴンは力尽くでブラックゴーレムを船から吹き飛ばす。この時に外に出てきたのはゴーレム達だけではなく、埃まみれのアルトとイリアも姿を現す。
「ドゴン!!やってしまえ!!」
「げほっ、げほっ……改造途中ですけど、大丈夫ですかね」
「あ、あんた達……まだ船に居たのかい」
アルトは興奮した様子でドゴンの応援を行い、イリアは咳き込みながらも外へ抜け出す。二人が船内に残っていた事をテン達は今の今まで忘れていた。しかも現れたのは2人だけではなく、ヒナとモモも出てきた。
「し、死ぬかと思ったわ……」
「大丈夫?ヒナちゃん」
「ヒナ、モモ!!あんた達も無事だったんだね!!」
イリアの助手として雇われていたヒナとモモも船内に残っていたらしく、二人を見てテンは嬉しそうな声を上げて迎え入れる。彼女達はテンにとっては娘同然の存在であり、二人が無事である事に喜ぶ。
しかし、今は感動の再会をしている場合ではなく、アルトとイリアから改造を施されたドゴンはブラックゴーレムと向き合う。ブラックゴーレムの方もドゴンを見て過去に戦った相手である事を思い出したのか、警戒心を抱いて向き合う。
「ドゴンッ!!」
「ウオオッ!!」
お互いに最初は頭突きを繰り出し、恐らくは世界の中でも最強のゴーレム2体が再び巡り合い、激戦を繰り広げた。
※化物には化物戦法です!!今回は短めなので早めに投稿しました。
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