最終章 《武器回収》
「よくも二人を!!このぉおおおっ!!」
「ルナ!?止めなさいっ!!」
テンとランファンを傷つけたブラックゴーレムに対してルナは怒りを露わにして駆けつけるが、それを見たアリシアは咄嗟に止めようとした。しかし、怒りで我を忘れたルナは武器も無しにブラックゴーレムに向かう。
ブラックゴーレムは自分に向かって駆けつけてくるルナに対し、先ほどのように地面に足を叩き付けて振動を周囲に与える。その結果、ルナは体勢を崩して地面に転んでしまった。
「あうっ!?」
「ウオオッ!!」
「ルナさん、危ないっす!!」
倒れたルナに目掛けてブラックゴーレムは拳を振りかざそうとした時、エリナが咄嗟に近くに落ちていた石を放り投げる。彼女が投げつけた石はブラックゴーレムの顔面に衝突し、一瞬ではあるが気を引く事ができた。その間にルナは身体を転がせて攻撃を躱す。
「うひゃあっ!?」
「ゴオオッ!!」
地面に目掛けてブラックゴーレムの拳が叩き付けられ、あまりの威力にブラックゴーレムの腕が地面の中にめり込み、周囲に罅割れが広がる。もしも直撃していたらルナの命はなく、彼女は慌てて起き上がって距離を取る。
素手でどうにかできる相手ではなく、武器がなければ話にもならない。しかし、武器を手に入れるには船に戻るしかないのだが、ブラックゴーレムがそれを許すはずがなく、飛行船の前に立ち塞がった。
「ウオオオオオッ!!」
「こ、こいつ……化物か!?」
「くっ……」
「ど、どうすれば……あっ!?」
ここでエリナは何かを思い出したように彼女は自分の懐に手を伸ばし、その行為に他の者は不思議に思うと、彼女が取り出したのは風属性の魔石だった。
「そういえばエルマさんからこれを渡されてました!!」
「それは……魔石ですか?」
「はい!!エルマさんの矢を作る時に風属性の魔石も使っていると聞いたんで……」
「……それを寄越しな!!」
「わっ!?」
目が覚めたのかテンがエリナから魔石を奪い取り、彼女は掌底を撃ち込まれた箇所を手で抑えながらもブラックゴーレムを睨みつける。ブラックゴーレムはテンが魔石を手にしたのを見て警戒するが、彼女は魔石を握りしめてある作戦を思いつく。
「ルナ、一番元気なのはあんただ!!あんたが上に登って皆の武器を持ってきな!!」
「えっ!?でも、こいつは……」
「あたしに任せな!!また悪戯をするよ!!」
テンの言葉にルナは驚いたが、彼女から返事を聞く前に既にテンは行動を映していた。エルマから奪い取った風属性の魔石を握りしめ、テンは強化術を発動して力尽くで握り潰す。
「うおおおおっ!!」
「テン!?貴女、何を……」
「全員、伏せな!!」
「うわわっ!?」
力尽くで魔石を破壊しようとするテンにアリシアは驚くが、テンは完全に魔石が砕ける前にブラックゴーレムにではなく、先ほどの戦闘で罅割れた地面に目掛けて投げつける。それを見た者達は衝撃に備えて身体を伏せた。
亀裂が入った魔石が地面に落ちた瞬間、内部から風属性の魔力が暴発して凄まじい風圧が周囲に広がる。その風圧によって地面の土砂が大量に舞い上がり、周囲一帯が土煙に覆われる。
「ウオッ!?」
「今だ!!早く行きなっ!!」
「わ、分かった!!」
土煙に覆われた事でブラックゴーレムの視界が封じられ、テンはルナに指示を与える。土煙のせいでテン達も視界は封じられたが、ルナは事前にテンから「悪戯」と聞いて煙幕を張る事は予想していたために行動に移る。
心眼を生かしてルナは飛行船の位置を探り、土煙の中を移動して甲板まで飛び越える。ルナの身体能力ならば飛行船に飛び移る事は難しくはなく、彼女は急いで甲板に戻って武器を探す。
(武器、武器、武器……あった、あれだ!!)
武器を必死に探しているとルナはテンの退魔刀が運よく甲板に詰まれていた木箱に刺さっている事に気付く。どうやら先ほどブラックゴーレムが飛行船に突っ込んだ際に退魔刀は弾かれて木箱に突き刺さっていたらしい。
甲板の方はブラックゴーレムが衝突した時に大きな穴が出来上がっていたが、船が壊れる程の損傷ではなく、ルナは穴を迂回して退魔刀を手にした。本来の持ち主でなければ退魔刀を扱えないため、急いでテンに渡す必要があった。
「テン!!退魔刀を見つけた、そっちに投げるぞ!!」
「ば、馬鹿!?無暗に声を上げたら……」
「ウオオオッ!!」
飛行船の甲板からテンの退魔刀を手にしたルナが地上に声をかけると、声を聴いたブラックゴーレムが気づいてしまったらしく、土煙を振り払いながら甲板に立っているルナの元に向かう。
(まずい!?気付かれた……でも、私の方が早い!!)
ブラックゴーレムに気付かれた事にルナは焦ったが、ブラックゴーレムがいくら普通のゴーレムよりも動きが早いと言えど、甲板に飛び移るまでは時間が掛かる。その間にルナは退魔刀をテンに投げ渡そうとした時、ブラックゴーレムに異変が起きた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます