最終章 《モモとヒナの同行》
「仕方ないわね……モモ、行ってきなさい。どうせ残ってても仕事なんてないし、ナイ君のために役立ちなさい」
「うん、ありがとうヒナちゃん!!私、頑張るよ!!」
「ええ、頑張りなさい。私はクロエさんと一緒に留守番して……」
「そうだ、ヒナちゃんも一緒に行こうよ!!どうせ暇なんでしょっ!?」
「ええっ!?」
モモの予想外の発言にヒナは驚き、確かに白猫亭の修復工事が終わるまでは彼女も仕事はできないが、モモはともかくヒナは自分が付いて行っても役には立たないと考えていた。
「む、無理に決まってるでしょ!?あんたと違って私は煌魔石なんて作れないし……」
「でも、ヒナちゃんは料理上手いでしょ?それに掃除だって得意だし、手先も器用だから裁縫だって私より上手いし……」
「だからって一緒に行けるはずないでしょ!?私は一般人よ、飛行船に乗る事なんて許されるはずが……」
「いいですよ別に」
「嘘っ!?」
ヒナは自分のような一般人が飛行船に乗る事などできるはずがないと告げるが、その言葉に対してイリアはあっさりと許可を出す。
「料理も掃除も裁縫もできるのなら私の身の回りの世話も頼めますよね。だったら私専属の使用人として働いて貰えたら助かります。その方が私も実験に集中できますし、全然問題ないですよ」
「い、いやでも……私みたいな一般人が一緒に乗っても迷惑じゃないんですか?だって、冒険者や王国騎士の人達は試験を受けたんでしょう?」
「まあ、問題ないですよ。むしろ王国騎士や冒険者の人に私の身の回りの世話なんて頼む方が問題ですからね。そういう意味では一般人のヒナさんの方が適任です」
「なるほど……一理ある」
「ナイ君まで何言ってるの!?」
イリアの世話を見る役目を王国騎士や冒険者に任せるよりも、家事を得意とするヒナに任せる事にナイも納得する。実際の所、王国騎士や冒険者を小間扱いするわけにもいかず、それにヒナの場合は一応は王国関係者である。
ヒナは聖女騎士団団長のテンの元で世話になっており、こう見えても小さい頃から彼女の指導を受けて鍛えられていた。アルトとも親しい関係を築いているため、一般人とはそもそも言い難い。
「ねえ、ヒナちゃんも一緒に行こうよ〜」
「ちょっ、抱きつくのは止めなさい……ああ、もう!!分かったわよ、でも本当に雑用しかできませんからね!?」
「それで十分ですよ。じゃあ、ここにいる人たちは今から私の助手として働いてもらいます。私の命令は絶対厳守です、もふもふやぷるぷるやぱふぱふしたくなった時は従って貰いますよ」
「ワフッ(もふもふ?)」
「ぷるんっ(ぷるぷる?)」
「ぱふぱふ?」
「ぱふ……て何ですか?」
「何をやらせようとしてるんですか!?というか、女同士ですよ!?」
イリアの発言にナイ達は首を傾げる中、ヒナだけは頬を赤く染めて反応する。こうして急遽モモ達の同行も決定し、彼女達も準備を整えてから飛行船へ向かう――
――同時刻、工場区に存在するハマーンの鍛冶屋にアルトが訪れ、彼の後ろにはドゴンも付いて来ていた。ドゴンは背中に大量の荷物を抱えており、これらの荷物は全てアルトがこれまでの旅で入手した素材が詰め込まれていた。。
「ドゴン、落とさないように気を付けるんだよ」
「ドゴンッ」
「うおっ……噂には聞いていたが、本当に従うんだな」
「こいつが人造ゴーレムか……」
アルトの周りにはハマーンの弟子達が集まり、彼等は集められたのは新型の飛行船内に存在する工房でドゴンの改造を行うためだった。ドゴンの更なる強化のため、アルトはハマーンの弟子達を集めて彼等の力を借りる。
「よし、皆……これが僕の描いたドゴンの強化形態だ」
「こいつは設計図ですか?」
「ふむふむ……なるほど、確かにこれなら俺達でも何とかなりそうだ」
「だけど、この設計図通りに作るとなるとかなりの素材が必要になりますが……」
「その辺は大丈夫だ。既にここに用意してある……どれくらいの時間が掛かる?」
「そうだな……三日、ですかね」
鍛冶師達はアルトが書いた設計図を読み取り、ドゴンの強化を終わらせるには三日は掛かると予想した。しかし、その言葉に対してアルトは首を振った。
「飛行船は今から二日後に発進する予定だ。それまでにどうにか間に合わせてくれ」
「王子様、いくら何でもそりゃ無茶だ。親方ならともかく、俺達の腕じゃ……」
「無理を言っている事は分かっている。しかし、旧型の飛行船には工房はないんだ。どうにかここにいる間に強化を終わらせてほしい」
「う〜ん……」
「……やるだけやってみますが、失敗しても怒らないでください」
アルトの言葉に鍛冶師達は困り顔を浮かべ、アルトも彼等に無茶な頼みごとをしている事は理解している。それでも彼等でしか仕事を頼める相手はおらず、ドゴンの改造が執り行われた――
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