最終章 《兄(姉)弟の絆、ロランの覚悟》
「御二人の同行は認められません。貴方達はいずれこの国を背負う身……どうか、ご自分の立場をご理解くだされ」
「何故ですか!!アルトだって私達と同じですよ!?」
「アルト王子は飛行船の運転のために止む無く連れて行きます。その代わりに我が命に代えてもアルト王子様はお守りする事を誓います」
「……弟だけに危険な任務を任せ、我々は何もせずに残れというつもりか?」
「何と言われようと今回ばかりは御二人を連れていけませぬ」
ロランに対してバッシュやリノは食い下がるが、彼は頑なに二人の同行を認めない。忠誠を誓う王族に対して真向から言い返す事ができるのは大将軍の彼だけである。それに二人にとってロランは武芸を教えてくれた師匠でもあり、二人とも強く出る事はできない。
「アルトだってこの国のために必要な人材です!!ま、まあ昔から色々と問題は起こして来ましたが……最近は立派に務めを果たしています!!」
「それは存じております。アルト王子もこの国に必要な御方……だからこそ私がこの命に代えてもあの方をお守りしましょう。しかし、お二方を連れて行くとなると私だけでは守り切る自信はありません」
「どうしても駄目だというのか?」
「駄目です。仮に国王様が御二人を連れていくように命じられたとしても、私はそれを拒否します。どうしても行きたいのであれば私を大将軍の位から外し、この国から追放して下さい」
「そ、そんな事……できるはずがないでしょう!!」
仮に王命であろうとロランはバッシュとリノを連れていく事を拒否する事を告げ、何があろうと今回ばかりは二人を連れていく事は許さなかった。
グマグ火山の時と違い、今回は「竜種」という強大な敵が生息する地域に向かう。そんな場所にこの国を受け継ぐ立場の3人の王子を連れて行き、万が一にも3人に何かあればこの国は滅びかねない。この国を支える事ができるのはこの3人だけである。
「御二人ともどうかご理解ください。仮に二人を連れて行ったとしても戦力になんら変わりはありませぬ」
「そ、それは私達では力になれないという意味ですか!?」
「ただの魔物や他国の軍隊であれば御二人の力も通じましょう。しかし、相手は常識を超えた怪物です。竜種とはどれほど恐ろしい存在なのか、御二人とも知っているはずです」
「…………」
竜種の恐ろしさに関してはバッシュもリノも嫌という程思い知り、二人は王都を襲撃した火竜を思い出す。あの時は全員が力を合わせて勝利したが、火竜の襲撃によって多くの被害が生まれた。
今回の敵は火竜程の脅威はないと思われるが、それでも火竜と同じ竜種である事から確実に勝てる保証はない。下手をしたら部隊が壊滅する危険性もあり、そんな相手にこれから国を継ぐ立場の人間を連れていけるはずがない。
「バッシュ王子、リノ王女……貴方達の弟を想う気持ちはよく分かります。しかし、御二人を連れて行けば私一人の力では御三方を守れるとは言い切れません。どうか、ご理解ください」
「くっ……」
「……もしもアルトの身に何かあれば、その時は責任を取れるのか?」
「何があろうと私はアルト王子を優先し、守る事を誓います。もしもこの誓いを破られた時、私は自らの手で自分の命を絶ちます」
アルトを守り切る事ができなければ自害するとまで言い張るロランの覚悟にバッシュとリノは何も言い課せず、仕方なく二人はロランにアルトの事を任せる事にした。本音を言えば色々と言いたいことはあるが、どんな言葉を口にしようとロランには通じないと悟る。
「その言葉、忘れるな……アルトを頼みます、先生」
「どうか……弟の事をよろしくお願いします」
「この命に賭けてアルト王子をお守りましょう」
バッシュとリノは最後にロランと握手を交わし、この時にロランは二人の腕が震えている事をに気付く。二人ともアルトを心の底から心配しているのか悟り、ロランは何があろうと自分がアルトを守る事を誓う――
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