最終章 《冒険者と王国騎士の競争》
――飛行船が帰還後、勝手に飛行船を動かした事でアルトは国王を始めに他の者たちも説教を受けた。しかし、当の本人は勝手に船を動かした事は謝罪したが、それでも必要な事だったとはっきりと告げる。
「心配かけた事は謝ります。ですが、これで僕も自信が付きました。飛行船を僕以外に運転できる人間はいません」
今までにない真剣な表情を浮かべてアルトは自分以外に飛行船を動かせる人間がいない事を語ると、他の者たちは彼の迫力に気圧されてそれ以上は何も言わなかった。アルトの行為は決して褒められる事ではないが、自信が付いた事は悪い事ではない。
アルトは旧式の飛行船でも問題なく動かせる事を照明させ、そこから先は和国の旧領地へ向かう部隊の厳選を行う。前回のグマグ火山の時は王都の戦力を割きすぎたせいで王城に侵入を許す事になってしまい、今回の場合はあまりに過剰に戦力を避けないように注意する。
「国王陛下、今回の場合は無暗に人数を連れて行くのを避け、少数精鋭で向かうのが得策かと思います。無暗に人手を増やすよりも実力確かな者達を厳選し、挑むのが最適かと……」
「ふむ、それも一理あるのう。ならば厳選の方法はお主に任せるぞ」
「はっ!!」
ロランの提案で今回の遠征部隊は実力者だけを集い、そのために試験が行われた。集められたのは王国騎士だけではなく、冒険者ギルドからも銀級以上の冒険者達が集められ、ロランの指示の元で厳しい試験が彼等に課せられる。
「ここに集まった者達の中で部隊に参加できる人間は20名のみだ!!試験に落ちた者は即刻退場してもらう、それと冒険者の参加者には試験を合格した暁には高額の報酬を約束しよう!!」
『うおおおおおっ!!』
今回集められた冒険者はロランの話を聞いて歓喜し、これまで作戦に参加できたのは黄金級冒険者だけだった。しかし、今回は銀級と金級の冒険者を集められたのは理由が二つある。
まずは黄金級冒険者以外の冒険者にも腕は確かな者も多く、彼等の中には将来的に黄金級冒険者に成れる逸材もいるかもしれないために試験に参加させた。そしてもう一つの理由は王国騎士に危機感を抱かせるためである。
これまでの作戦では各騎士団の団長や副団長以外の王国騎士達も無条件で参加していたが、最近の王国騎士は質が落ちているとロランは考えた。そこでロランは敢えて黄金級ではない冒険者を呼び集め、彼等と共に試験を受けさせる事で競争心を高めさせせる。
「うおりゃあっ!!王国騎士が何だってんだ!!」
「冒険者の根性を舐めるな!!」
「何を言うか!!我等王国騎士こそがこの国を守るのだ!!」
「冒険者如きに後れを取るか!!」
試験の際中は王国騎士と冒険者は自分達こそが上だと証明するために全力で尽くし、その光景を見てロランは試験を行わせたのは正解だと判断した。王国騎士も冒険者もお互いに絶対に負けないという気概で全力で試験に挑む。
「行くぞゴンザレス!!王国騎士なんかに負けるなよ!!」
「うおおおおっ!!」
冒険者の中にはマホの弟子のガロとゴンザレスも含まれ、この二人は参加した冒険者の中でも頭一つ抜けていた。そして見事にこの二人は合格を果たし、残念ながら他の冒険者は落ちて残りの合格者は王国騎士だけとなった。
「試験はここまでだ!!合格者20名は我々と共に明日から訓練を受けてもらう!!飛行船の点検が終了次第、我々は出発する!!何時でも出発できるように準備は整えておけ!!」
『おおっ!!』
厳しい試験を突破して選ばれた20名の実力者が加わり、これで部隊の人員は整った。今回の作戦は不用意に大人数では動かず、あくまでも「少数精鋭」を重視してロランは必要以上の人員を用意はしない。
飛行船に乗り込むのは船の運転と整備のためにアルトとハマーンの弟子達は必ず乗り、今回行われた試験の合格者20名、他には各騎士団の副団長と大将軍のロランは乗る事は確定していた。当然ながらに黄金級冒険者やナイもこれに含まれ、部隊は整った。
「アッシュよ、我々の留守の間は王都はお前に任せるぞ」
「うむ、任せろ。お前の代わりに王城に侵入を許した腑抜けた兵士達の指導を行おう」
「ふっ……後の事は任せるぞ」
王都の警備に関してはリーナの父親にして王国貴族の中では武闘派で名前が知られている「アッシュ」に託し、彼はロランの代わりに王城の兵士や試験に落ちた王国騎士達の指導を行う。二人の話を聞いた兵士と騎士達は顔色を青ざめるが、アンの侵入を許した彼等をロランは同情しない。
ここで問題があるとすればバッシュ王子とリノ王女だった。二人はアルトが出向くのであれば自分達も向かう事を進言する。大切な弟を一人だけ危地に送り込むことなど出来ず、自分達も同行したいことを伝えるがロランは頑なに拒否した。
※体調が優れず、今日はここまでです……
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