最終章 《ナイVS巨人国の挑戦者》
――ガオウの案内の元、獣人国の武芸者は特等席にて試合を観戦する事ができた。彼等はガオウと共に最前列の席に座って試合場を観察していると、闘技場内に視界の声が響く。
『お待たせしました!!これより、特別試合を開始いたします!!まずは最初に出場するのは巨人国から訪れた猛者、ダイゴロウ選手の入場です!!』
『おおおおおっ!!』
試合場の城門が開かれ、姿を現したのは巨人族の中でも大柄な体格の男性だった。その背中には巨大な棍棒を背負い、甲冑を身に着けていた。その姿を見た獣人国の挑戦者は震え上がり、威圧感を感じ取って只者ではないと見抜く。
「な、何だあいつは……」
「ダイゴロウだと……思い出したぞ!?確か、巨人国の黄金級冒険者だ!!」
「黄金級だと!?」
「へえっ……噂には聞いていたが、相当に強そうだな」
ダイゴロウは他国にも知れ渡る程の高名な冒険者である事が判明し、しかもガオウと同じく黄金級の冒険者だった。ガオウもダイゴロウを一目見ただけで只者ではないと悟り、装備の方も一級品だと見抜く。
試合場に入場したダイゴロウは背中の棍棒を抜くと、対戦相手が出てくるのを待ち構える。その威風堂々とした姿に観客は圧倒され、武芸者たちも冷や汗を流す。
「ま、まさかあのダイゴロウがこの国にいるとは……」
「なんという大きさだ!!」
「噂だとトロールを殴り殺した事もあるそうだぞ……」
「確かにこいつはやばそうだな……だが、坊主の敵じゃねえ」
「な、何を言っているんだ!?」
ガオウの発言に他の武芸者は動揺を隠せず、ダイゴロウの姿を見てもガオウが全く動じていない事に戸惑う。そんな慌てふためく武芸者たちを無視してガオウはナイが出てくるはずの城門に視線を向けると、司会が紹介を行う。
『続きまして……皆さん、お待たせしました!!貧弱の英雄、いや我が国の誇る英雄!!ナイ選手の入場だぁあああっ!!』
『うおおおおっ!!』
先ほどのダイゴロウが現れた時よりも大きな歓声が上がり、試合場の城門が開かれて二つの大剣を背負った少年が現れる。その姿を見た途端、武芸者は呆気に取られた。
「な、何だあれは……」
「あれが英雄だと!?」
「ただの子供ではないか!!」
ナイを始めて見た獣人国の武芸者たちは呆気に捉れ、試合場に現れたのは只の人間の少年にしか見えなかった。武器や装備は一級品だと思われるが、それでも少年の方はとても一流の武人とは思えない。
対戦相手のダイゴロウもナイの姿を見て困惑した表情を浮かべ、本当に彼が噂に聞く「貧弱の英雄」なのかと不思議に思う。その一方でナイの方はダイゴロウを見上げて驚きの声を上げた。
「うわ、でかっ……どうも、初めまして。ナイと言います」
「う、うむ……初めまして」
『おおっと!!ここで両選手お辞儀を行いました!!最初の挨拶は大切ですからね!!』
『あははははっ!!』
ナイが頭を下げるとダイゴロウも同じように頭を下げ、その姿を見た観客は笑い声をあげる。これからお互いに戦うというのに緊張感を感じさせず、その姿を見た武芸者達は本当にナイが噂の英雄なのかを問い質す。
「ガオウ!!あれがお前の言う英雄か!?どう見てもただの少年ではないか!!」
「全く、わざわざここまで来たのにあんな子供だったとは……」
「うるせえ、黙ってろ……試合に集中しろ」
武芸者はナイの姿を見て落胆するが、そんな彼等に対してガオウは鋭い視線を向ける。ガオウの迫力に他の武芸者は圧倒され、それ以上はナイを侮辱するような言葉は口にできなかった。
試合場ではダイゴロウとナイが向き合うと、審判役の人間が試合場の前に降り立つ。審判を務めるのは闘技場の管理を任されている「アッシュ公爵」であり、アッシュはナイとダイゴロウに試合前の注意を行う。
「今回の試合は相手を戦闘不能に追い込むまで戦ってもらう。降参や逃走は認められない、その代わりに相手を殺すのも駄目だ」
「はい、分かりました」
「うむ……」
「よし、では試合を開始する!!」
『おおおおおおっ!!』
アッシュが試合開始の許可を出すと、歓声が上がってダイゴロウとナイは武器を抜く。そして司会者の試合開始の合図が下された。
『試合、開始ぃいいいっ!!』
「うおおおおおっ!!」
最初に仕掛けたのはダイゴロウの方であり、彼は棍棒を振りかざすと、勢いよくナイに目掛けて振り下ろす。その攻撃に対してナイは避ける動作を行わず、両手に手にした旋斧と岩砕剣で受け止めようとした。
「馬鹿な!?死ぬ気か!?」
「避けろ!!」
「いいから見てろ馬鹿共!!」
特等席の武芸者達はナイが避けようとしないのを見て焦った声を上げるが、そんな彼等に対してガオウは怒鳴りつける。次の瞬間、試合場に激しい金属音が鳴り響き、何と攻撃を弾き返されたのはダイゴロウの方だった。
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