最終章 《正式に釈放》
「ふはははっ!!相変わらず仲が良さそうだな、お前達!!」
「えっ!?その声は」
見回りの途中、ナイ達は何処からか聞き覚えのある大声を耳にした。3人は驚いて振り返るとそこには黄金級冒険者のゴウカの姿があり、彼の肩の上にはマリンの姿もあった。どうしてゴウカがここにいるのかとナイ達は驚き、彼の元へ向かう。
「ゴウカさん!!どうしてこんな所に!?」
「ん?吾輩たちは散歩をしてただけだぞ?」
「散歩って……もう外に出られたんですか?」
『その点は大丈夫……もうゴウカは囚人じゃない、昨日正式に釈放された』
ゴウカとロランは2年前の事件で監獄に収監され、グマグ火山のマグマゴーレムの討伐のために彼等は仮釈放された。王都へ引き返してからは二人は王城で監視されていたが、先日に遂に正式に国王は二人の罪を許した。
グマグ火山のマグマゴーレムの討伐作戦の際、ゴウカもロランも大きな功績を上げた事を認められて特別に罪が許された。ロランは大将軍に復帰し、そしてゴウカの方も無事に黄金級冒険者に復帰した。但し、彼の場合はマリンの監視付きでなければ行動しなければならず、完全に復帰したわけではない。
『こいつが問題を起こそうとすれば私が止める……そういう約束で冒険者に戻る事を許された』
「そのせいで何処へ行くにもこいつを連れて行かなければならなくてな!!まるで子持ちの父親になった気分だ!!」
『うるさい、耳元で騒ぐな』
「そ、そうだったんですか……お勤めご苦労様でした」
正式にロランとゴウカが釈放された事は喜ばしく、恐らく国王としては聖女騎士団が不在の間、ロランとゴウカを復帰させる事で王都の治安を維持しようと考えたのだろう。その考えは悪くはなく、大将軍と最強の黄金級冒険者が復帰したと聞けば悪党も王都から逃げ出す。
「それで御二人はどうしてこんな時間帯に散歩を?もう夜ですよ?」
「夜の散歩も偶にはいいではないか。それより、こうして会えたのだから手合わせをしてみるか?久しぶりに冒険者ギルドに戻って他の冒険者と手合わせをしたんだが、どいつもこいつも手応えがなくてな」
『こいつのせいでこの2年の間に新しく冒険者の何人かが心が折れた。もしかしたら何人か止めるかも知れない』
「そ、それは……可哀想ですね」
ゴウカは復帰した直後に冒険者ギルドへ赴き、彼が不在の間に冒険者になった者達を相手に組手を行った。彼の事を知らない冒険者達はゴウカの提案に乗り、最強の黄金級冒険者がどの程度の実力なのか推し量ろうとした人間もいた。
しかし、ゴウカが居ない間に冒険者になった者達は彼の恐ろしさを知らず、たった1日で新人の冒険者全員が心を折られた。自分の腕に自信があった新人冒険者も圧倒的な実力差を思い知らされ、その中には心を折られて冒険者を止めようと考えた者もいる。
「全く、王都の冒険者の質が落ちたな!!俺がいない間にどれだけの冒険者が育ったのかと期待していたが、あの程度では到底冒険者は務まらん!!」
「ちなみにガオウさんとは……」
「おお、もちろん戦ったぞ!!ガオウの奴はちゃんと腕を上げていたな!!まあ、勝負は当然俺の勝ちだったが!!」
「そうなんですか……」
ゴウカを敵視しているガオウも当然彼に挑んだが、結局はいつも通りに返り討ちにされたらしい。この2年の間にガオウも腕を上げたが、ゴウカの方は2年間もロランと同じ牢獄で過ごし、彼と共に腕を磨いでいたので身体は鈍るどころかさらに腕を上げたらしい。
「そうだ少年!!これから闘技場に行かないか!?前の時は手合わせだったが、久々に俺も本気を出せる相手と戦いたい!!ここでどちらが上か決着を着けようではないか!!」
「えっ!?ナイさんとゴウカさんが!?」
「それは確かに気になる」
「ちょっ……」
『勝手な事を言うな!!誰がお前の尻拭いをすると思うんだ!?』
ゴウカはナイがどの程度成長したのか気にかかり、飛行船で彼と手合わせをした時は他の者に止められて決着は着かなかった。そのためにゴウカは機会があればナイと戦いたいと思っていた。
マリンはぽかぽかとゴウカの頭を殴りつけるが、ゴウカはここでナイと会えたのも何かの縁だと思い、彼に試合を申し込む。しかし、ナイとしてはゴウカと戦えばただでは済まないと思い、どうにか考え直すように説得する。
「いや、今は仕事中ですから……」
「むう、仕事か……それならば仕方ないな」
「あれ!?意外とあっさりと退きましたね!?」
「小娘、俺の事を何だと思っている。流石に真面目に仕事をする人間の邪魔するほど子供ではないぞ!!」
『どの口が言う……』
ゴウカは意外なほどにナイの言葉にあっさりと従い、今は業務中なので彼にこれ以上にちょっかいを掛けようとはしなかった。意外と聞き分けが良いゴウカにナイは安堵するが、次の彼の言葉にナイは戸惑う。
※閑話を含めて今日まで連続投稿しましたが、明日からは話数を減らします。
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