最終章 《追跡部隊》
「――よし、全員準備は整えたね!!聖女騎士団、出動するよ!!」
『おおっ!!』
テンの号令の元、聖女騎士団は王都から逃れたアンの追跡のために出発する。見送りの際は他の騎士団やヒナとモモも集まり、テンは彼女達に対してしばらくの別れを告げる。
「それじゃあ、あたし達は行ってくるよ。あたしがいない間に宿を潰すんじゃないよ」
「だ、大丈夫よ……女将さんもお気をつけて」
「モモ、あたしがいなくてもあんたはもう大丈夫さ。ナイの奴と仲良くなりな」
「女将さん……」
「ナイ、二人の事は任せたよ……アンの事は気にしなくていい、あいつの事はあたし達に任せな」
「テンさん……」
言いたいことだけを伝えるとテンは聖女騎士団を引き連れて王都を離れ、彼女達はアンを捕まえるまで戻るつもりはなかった。聖女騎士団が不在の間は白狼騎士団が彼女達が担当を任されていた地区の管理を行い、白猫亭の警護はガロとゴンザレスが行う。
エルマもマホの件がなければ同行したかったが、彼女は意識を失ったマホの面倒を見なければならず、彼女と同じくマホの弟子であるガロとゴンザレスは聖女騎士団がいない間は白猫亭を守る事になった。白猫亭は聖女騎士団にとっては大切な場所であり、それにテンと深い繋がりがあるヒナとモモを狙う輩が現れる可能性もあるため、どうしても用心棒は必要だった。
「俺の名前はガロだ……まあ、これからよろしく頼む」
「ゴンザレスだ、前にも会った事はあると思うが……」
「ええ、よろしくね二人とも。それじゃあ、まずはこのメイド服を着て貰って立ってもらっていいかしら?」
「ん?」
「何でだよ!?俺達は従業員じゃねえ、用心棒だぞ!?」
「あ、ごめんなさい!!エリナちゃんはノリノリで着て接客してくれたからつい……」
聖女騎士団が護衛を務めていた時は団員も仕事を手伝ってくれたが、ガロとゴンザレスはあくまでも護衛役として徹する。その一方でナイ達の方も動きがあり、ナイはアルトに呼び出されて相談を受ける。
「えっ……ドゴンの強化?」
「ああ、僕に従っているドゴンは人造ゴーレムというのは覚えているね?今後の事を考えて僕はドゴンを更に強くさせたいんだ」
「強くさせるって……どうやって?」
「ドゴン?」
ビャクのように生身の生物ならば体を鍛えさせれば強くなれるが、ドゴンの場合はゴーレムであるため、いくら身体を鍛えようと成長する事はない。彼を強くさせるには改造を行う以外に方法はないが、ドゴンを構成する肉体は「オリハルコン」である。
オリハルコンは伝説の魔法金属であるために簡単には手に入らず、加工を行うにしてもそれ相応の鍛冶能力を必要とする。しかし、材料に関しては既にアルトは手に入れていた。
「これを見てくれ」
「これは?」
「前に君達が倒した人造ゴーレムの残骸だ」
「え、回収してたの!?」
アルトが取り出した木箱の中にはかつてナイ達が倒した人造ゴーレムの残骸が収められ、これらを利用してアルトはドゴンの強化を行うつもりだった。
「ドゴンとは構成されている素材は違うが、この人造ゴーレムも元々はドゴンと同じく王城を護衛するために作り出された人造ゴーレムだ。だから彼等の残骸を利用し、新しい装備を作り出せるかもしれない」
「そんな事ができるの?」
「正直に言えばやってみなければ分からない。だけど、やる価値はあると思う。僕はしばらくの間、師匠の工房を借りる事にするよ」
「工場区にある店の事?」
「そうだ、先輩方と一緒にドゴンの強化を行う。僕一人じゃ加工なんて到底無理だろうからね」
「ドゴンッ!!」
人造ゴーレムの残骸を利用してドゴンの強化を行う事をアルトは告げ、当分の間は彼は工場区のハマーンの店に引きこもり、他の鍛冶師と共に鍛冶を行う事を告げた。アルトとしてもドゴンがアンの従うブラックゴーレムに敗れた事を悔しく思い、彼は最強の人造ゴーレムを作り上げるべく行動を開始する――
――聖女騎士団が王都を去り、アルトがドゴンと共に工場区のハマーンの鍛冶屋に泊まり込みで作業を行う。聖女騎士団が不在の間は白狼騎士団は他の騎士団の協力を受けながら一般区の警備を行う。聖女騎士団が不在の間に悪党が現れる事を想定し、白狼騎士団は連日見回りを行っていた。
「……眠い、まだ遠征の疲れが抜けきっていない」
「何を言ってるんですか!!貴方、グマグ火山に居た時もずっと眠ってたじゃないですか!!」
「私はヒイロと違って胸に錘があるから……」
「そ、それは私より胸が大きいと言いたいんですか!?言っておきますけど私もそれなりにありますから!!」
「二人とも、そういう話は二人きりの時にしてくれないかな……」
ナイはヒイロとミイナと共に見回りを行い、最近は休む暇もなく働いていた。ミイナの言う通りに疲労が蓄積されており、今日の見回りを終えれば明日は休む事を決める。
※ストックが無くなったので明日からは話数を減らします……
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