異伝 《連携》
――グマグ火山の火口付近では討伐隊とマグマゴーレムの大群の激しい戦闘が繰り広げられ、戦況は全くの互角だった。数は討伐隊が劣るが、戦力に関しては討伐隊の方が上回り、次々とマグマゴーレムが討ち取られる。
『ふははははっ!!その程度かぁっ!?』
「ゴガァッ!?」
「ゴオオッ!?」
「ゴギャアッ!?」
ゴウカがドラゴンスレイヤーを振るう度にマグマゴーレム達は吹き飛び、溶岩の飛沫が舞う。一方で他の者たちもゴウカに負けずに戦い抜き、マグマゴーレムを打ち倒す。
「でやぁあああっ!!」
「ゴアッ!!」
「きゃあっ!?」
「ヒイロ、無理しないで……はあっ」
「ゴガァッ!?」
ヒイロは烈火を振りかざすがマグマゴーレムの拳で弾き返され、それを見たミイナが如意斧の柄を伸ばして代わりに攻撃する。彼女の如意斧は自由に柄の長さを伸ばせるため、それを生かしてリーチを広げて攻撃する。
さらにミイナには輪斧と呼ばれる魔道具を所持しており、こちらはブーメランのように投げて攻撃し、自分の元に戻ってくる機能を持つ魔道具だった。
「てりゃっ」
「ゴアッ!?」
「きゃっ!?ちょっ、ちょっと!?今、私にも当たりそうになりましたよ!?」
「ごめん」
ミイナの投げ放った輪斧はマグマゴーレムの頭部に的中し、戻ってくる際に危うくヒイロの身体に当たりかけた。乱戦状態で使用するには不向きの魔道具であり、ミイナは輪斧を回収して如意斧を頼りに戦う。
「おりゃりゃりゃっ!!」
「ほう、中々やるな」
「当たり前だ!!ルナは聖女騎士団で一番強いんだ!!」
「ふっ、大きく出たな」
猛虎騎士団と共に戦うルナは両手に戦斧を抱えてマグマゴーレムの群れを蹴散らし、その様子を見たロランは感心した声を上げる。ちなみにこの二人は昔からお互いに知っており、こう見えてもルナは聖女騎士団の中では古参の騎士でもある。
少女の様な見た目をしているが実際の年齢は20代後半であり、その実力は確かで彼女に勝てる人間は聖女騎士団の中でも数えるほどしかいない。他の古参の騎士と比べると年齢も一番若く、負けん気の強い性格から彼女が聖女騎士団で最強と信じる者も多い。
尤も子供っぽい性格とすぐに油断するせいでまだまだ戦士としては未熟な面があり、実際に彼女が聖女騎士団で一番強いという言葉には疑問が残る。それでもこのような乱戦の戦闘では彼女が一番活躍し、瞬く間に彼女の足元にはマグマゴーレムの残骸の山が築かれた。
「はあっ、はあっ……ど、どうだ!!ルナの強さを思い知ったか!?」
「慢心するな、まだまだ敵は来るぞ」
「えっ!?」
ロランの言葉に驚いたルナは振り返ると、火口から新手のマグマゴーレムの群れが出現した。どうやら火口にはまだ敵が残っていたらしく、他の部隊の元へも向かう。
「バッシュ王子!!また新手が来ましたわ!!」
「ちっ、どれだけいるんだ……気を引き締めろ!!」
『はっ!!』
バッシュは防魔の盾でマグマゴーレムの攻撃を防ぎ、相手の体勢を崩す。その隙を逃さずに他の者が隙を突いて攻撃を行う。ドリスは特に相性が悪いマグマゴーレムを相手に奮戦し、彼女はバッシュと肩を並べて戦う。
その一方で銀狼騎士団と白狼騎士団と共に戦っていたナイはリーナと共に火口へ向かい、敵がどの程度残っているのかを確認する。その結果、まだ火口には数十体のマグマゴーレムが残っている事が判明し、それを見たナイは汗を流す。
(まだこんなに残っているのか……旋斧があれば、せめて岩砕剣なら……)
テンの退魔刀を借りてナイはここまで戦い抜いていたが、やはり自分の大剣でなければ調子は上がらず、魔法剣が使えないというのが痛手だった。しかし、その代わりに今回は魔法腕輪にモモが制作した煌魔石を複数装着しており、それらを利用して全力で戦う。
(今回は前みたいに失敗はしない……行くぞ!!)
事前にイリアから受け取っていた「仙薬」も取り出し、それを口に含んだナイは体力と魔力を回復させると、リーナと共に駆け出す。リーナはナイの援護役に徹し、足手まといにならないように全力で戦う。
「リーナ!!ここからは本気で動くよ!!」
「大丈夫、任せて!!」
「うおおおおっ!!」
ナイは強化術を発動させて肉体の限界まで身体能力を上昇させると、マグマゴーレムの大群に目掛けて退魔刀を振りかざす。それを見たリーナも蒼月の能力を解放させ、彼の援護のために敵を凍り付かせる。
「がああああっ!!」
「凍れっ!!」
『ゴアアアアッ!?』
退魔刀を振りかざす度にマグマゴーレムが吹き飛び、更に蒼月が生み出した冷気と氷によって敵は凍り付く。二人は火口に残っているマグマゴーレムを一掃するために奮闘し、その間にも他の騎士団が火口から離れたマグマゴーレムの群れの殲滅に専念できた。
戦闘が開始されてから既にかなりの時間が経過しており、徐々にマグマゴーレムの数が減ってきていた。既に屍の数は100体を越えるが、それでもせいぜい半分程度であり、徐々に騎士団の面子も体力が削られて押し返されていく。
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