異伝 《火山の異変》
グマグ火山に到着すると、初日の頃と比べて気温が大分下がっている事が判明した。気温が下がった原因は初日と今日の間に大量のマグマゴーレムを倒した事により、その影響で火山全体の気温が下がったと考えられた。
「なんだ、火山ていうから凄く暑いと思ったのにそんなに暑くないぞ?」
「ルナさん、ちゃんと火鼠のマントを来てください!!」
「ここはまだ麓だ、上に移動すればするほど熱くなっていくぞ」
暑いのが苦手なルナは火山が思っていたよりも暑くない事に嬉しそうに坂道を駆けあがるが、そんな彼女にヒイロとシノビが注意する。
二人の言う通りに火山の頂上部に存在する火口に近付くと熱気が強くなり、今の所は涼しくても移動を続ければ疲労が蓄積され、しかも気温が高まって余計に体力を消耗する。そのために事前に用意した熱耐性の高い装備はちゃんと身に付けておかなければならない。
「そのマントを着ると自由に動けないから嫌だぞ!!」
「文句を言うんじゃない、蒸し焼きになるよりはマシだろう」
「そうでござるよ。さあ、ちゃんと身体を隠すでござる」
「う〜……」
「まるで子供だな……」
「ああ見えても私達よりずっと年上なんですが……」
ルナとヒイロ達のやり取りを見て他の者たちは呆れ、ルナは見た目は少女に見えるが実際の年齢はナイ達よりも10才以上も年上である。
ちなみに火山に辿り着いてから討伐隊はマグマゴーレムと何度か遭遇したが、初日と比べると出くわした数は少なく、やはりというべきか火山に生息するマグマゴーレムの大半は姿を消していた。
(初日と比べると全然出会わなくなったな……無駄な体力を消耗せずに済むけど)
既に討伐隊は300体近くのマグマゴーレムを掃討し、恐らくは火口付近以外の場所に生息するマグマゴーレムはもう殆ど残っていないだろう。火山の中腹部に辿り着いてもマグマゴーレムの姿はあまり見かけられず、遂には討伐隊は火口付近へと迫る。
「うっ……あ、暑くなってきた」
「ほら、ちゃんと着ていてよかったでしょう?」
「一気に気温が上昇したな……これは火口に相当な数のマグマゴーレムが潜んでいるな」
「よし、例の兵器を出せ」
「はっ!!」
火口に近付くとロランは騎士達に命令を与え、事前に運んできた物を用意させる。ロランの命令を受けた騎士達が用意した物はイリアが制作した「小樽型爆弾」だった
どうして小樽型爆弾を用意したかと言うと、それは火口に潜むマグマゴーレムを引き寄せるための罠だった。火口に生息するマグマゴーレムはマグマ溜まりに身を潜め、火山から湧き出すマグマから火属性の魔力を得ている。しかし、不用意に討伐隊はマグマに近付くわけにはいかず、マグマゴーレムを引き寄せるための餌を用意していた。
「準備、完了しました!!」
「よし、合図を出したら投げ込め」
「おおっ、吾輩たちの出番だな!!」
「そ、そうですね」
「ルナも手伝うぞ」
ロランの指示にナイとゴウカとルナが前に出ると、この3人が討伐隊の中でも怪力を誇る面子だった。3人は小樽型爆弾を持ち上げると、火口に移動して様子を伺う。
「ううっ……ナイ、暑いぞ」
「暑いというより、熱いですね……」
「あちちっ!!甲冑が熱くなってきたぞ!?蒸し焼きになってしまう!!」
3人が火口に辿り着くと、前に着た時と同様に火口にはマグマが溢れており、そのマグマの正体は大量に集まったマグマゴーレムである事をナイは知っている。3人は打ち合わせ通りにマグマゴーレムを火口から誘き寄せるため、所定の位置に移動すると全員で同時に小樽型爆弾を投げ込む。
「じゃあ、行きますよ!!」
「うおりゃあっ!!」
「ぬぅんっ!!」
小樽型爆弾を抱えた3人は同時に火口のマグマ溜まりに目掛けて投げ込み、マグマ溜まりに突っ込んだ小樽型爆弾は内部のマグマゴーレムの核が高熱に反応し、即座に爆発した。
――ゴァアアアアッ!?
火口のマグマに沈んでいたマグマゴーレム達は突如と起きた爆発に巻き込まれ、驚いた様子でマグマの中から姿を現す。その様子を確認した3人は別々の方向に逃げ出して火山を駆け下りる。
3人が事前に別れて逃げ出したのには理由があり、火口に集まったマグマゴーレムの大群を三手に分散させるためだった。作戦通りにマグマゴーレムは自分達に攻撃を仕掛けてきた3人に怒りを抱き、3人に目掛けてマグマゴーレムの大群は後を追う。
「ゴオオオッ!!」
「ゴガァアアアッ!!」
「ゴラァッ!!」
「うわわっ!?」
「来た来た来たっ!!」
「はっはっはっ!!まるで追いかけっこだな!!」
火口に存在したマグマゴーレムは100体を軽く超え、ナイ達の後を追いかけてきた。その様子を確認した他の討伐隊の面子も動き出し、作戦通りに行動を開始する。
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