異伝 《発射!!》

「お前達、退け!!止めを刺す!!」

「ドリス、行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ってください!!思っていたより深く刺さって……」



ロランの命令を受けたリンは剣を引き抜くと、ドリスに急いで巨大ゴーレムから離れるように促す。しかし、ドリスの真紅は巨大ゴーレムの胸元に深く突き刺さり、引き抜くのに時間が掛かった。


攻撃を受け続けた巨大ゴーレムは怒りの表情を抱き、自分の胸元に立つドリスとリンに目掛けて両腕を伸ばす。それに気づいたリンは慌ててドリスの真紅を抜き取ろうとした。



「早くしろ、握り潰されるぞ!!」

「ま、待ってください!!もう少しで抜けそうですわ!!」

『ゴアアアッ!!』



二人が真紅を抜き取る前に巨大ゴーレムの両手が迫り、このままでは二人の身体が握り潰されると思った瞬間、何処からか巨大ゴーレムの腕に「水球」が放たれる。



『ゴアッ!?』

『さっさと抜け、馬鹿共』

「なっ、この魔法は……マリンさん!?」

「お前、今まで何をしていた!?」

『……寝過ごした』



何処からともなくマリンが現れると、彼女はドリスとリンを握り潰そうとする巨大ゴーレムの両腕に目掛けて水球を放つ。水を苦手とする巨大ゴーレムは彼女の攻撃を嫌がり、その間にドリスとリンは遂に真紅を引き抜く。



「抜けましたわ!!」

「よし、行くぞ!!」

「御二人とも、この鎖を掴んでください!!」



フィルは二人に目掛けて鎖の魔剣を伸ばし、即座にドリスとリンは鎖を掴むとフィルは力尽くで引き寄せる。二人を巨大ゴーレムから引き剥がす事に成功すると、ロランは双紅刃を回転させて魔力を高めていく。


ロランの双紅刃は回転させればさせる程に刃に魔力が宿り、攻撃を強化する機能を持つ。最大まで回転を加えればその一撃はの一撃に匹敵すると言われ、彼は雄たけびを上げながら巨大ゴーレムに目掛けて飛び込む。



「うおおおおおっ!!」

『ゴアッ……!?』



巨大ゴーレムの胸元に目掛けてロランは双紅刃を振り下ろそうとした瞬間、先ほどドリスが真紅を突き刺した箇所から赤色の光が毀れると、それを見たロランは直前で危険を感じ取った。



『ゴガァアアアアッ!!』

「何だとっ!?」

「ロラン大将軍、危ない!?」



巨大ゴーレムは胸元を発行させた瞬間、再び全身に火炎が纏い、それを見たロランは意識が乱れてしまう。このまま彼が攻撃を仕掛ければ火炎に飲み込まれてしまい、急いで他の者が助けようとした。


しかし、地上に存在した者達が動く前に何者かがロランの背後に迫り、空中に浮かんでいる彼に目掛けてその人物は声をかける。



「ロランさん、肩を借ります!!」

「何!?」



声が聞こえたロランは驚いて首を剥けると、そこには蒼月を構えたリーナが何時の間にか自分の背中に迫っていた――






――巨大ゴーレムに氷結爆弾が的中した頃、実はリーナも遅れて甲板にやってきた。彼女は甲板に辿り着くと投石機を発見し、それを見たリーナはある方法を思いつく。



『イリアさん!!これを使って僕を飛ばす事ができる!?』

『はっ?何を言ってるんですか?』

『だから、これで僕をあそこまで飛ばせるの!?』

『ええっ!?飛んでいくの!?』



リーナの突拍子もない発言にイリアだけではなくてモモも驚いたが、リーナとしては地上を降りて向かうよりも投石機を利用して飛び込む方が早く辿り着けると思い、二人に頼んで彼女は投石機に乗り込む。


先ほどの氷結爆弾を放った時に投石機がどの角度で打ち込めば標的に当たるのかは把握済みであり、準備が整い次第にリーナは巨大ゴーレムに目掛けてした。



『どうなっても知りませんからね……発射!!』

『えいっ!!』

『行ってきまぁあああす!!』



投石機を利用してリーナは一気に巨大ゴーレムに目掛けて突っ込むと、この時にロランも同時に跳び上がり、攻撃を仕掛けようとしていた。しかし、リーナの方が圧倒的に移動速度が勝っていたため、彼女はロランを飛び越えて蒼月を振り払う。



「でやぁあああっ!!」

『ゴアアッ!?』



蒼月の一撃によって巨大ゴーレムは胸元の部分の炎が掻き消され、逆に凍り付いてしまう。それを確認したロランは驚いた表情を浮かべるが、彼はこの好機を逃さずに双紅刃を振り下ろす。



「くたばれっ!!」

『ゴギャアアアアアッ!?』



双紅刃の一撃が巨大ゴーレムの肉体を崩壊させ、全体が崩れ落ちていく。巨大ゴーレムは全身が砕け散ると火炎も消え去り、残されたのは通常よりも数倍の近くの大きさの「核」だけが残り、ロランはどうにか核を傷付けずに倒す事ができた事に安堵する。



(危なかった……これだけの大きさの核を破壊すればとんでもない事になっていたな)



ロランは核の大きさを確認し、もしもこれだけの大きさの核を破壊すれば内部の火属性の魔力が暴走し、大爆発を引き起こしていた。そうなれば地上の者達は巻き込まれ、下手をしたら全滅していた可能性もあった。


偶然とはいえ、リーナのお陰で巨大ゴーレムの攻撃を成功した彼は彼女の援護に礼を言おうとした。しかし、肝心のリーナは着地に失敗したらしく、頭におおきなたんこぶを作った状態で倒れていた。

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