異伝 《氷結爆弾》
「よし、この位置なら当たりますね。モモさん、お願いします」
「う、うん!!ていっ!!」
イリアの指示通りにモモは投石機を動かすと、小樽型爆弾が巨大ゴーレムに目掛けて放たれた。巨大ゴーレムは地上の者達に注意を引いていたせいで自分に迫りくる小樽型爆弾に気付かず、背中の部分に衝突した。
『ゴガァッ!?』
「うわっ!?な、何だっ!?」
「これは……!?」
「さ、寒いっ!?」
小樽型爆弾が巨大ゴーレムに衝突すると地上の者達も驚いた表情を浮かべ、小樽型爆弾が壊れた瞬間に凄まじい冷気が解き放たれた。これまでの小樽型爆弾は衝撃を受けた瞬間に爆発を引き起こしたが、今回の小樽型爆弾は壊れた途端に冷気が噴き出した。
――これこそがイリアが作り出した新型の兵器であり、名前は「氷結爆弾(仮名)」と名付けられていた。これまで彼女が作り出した小樽型爆弾は火属性の魔石やマグマゴーレムの核を利用して爆発の威力を強化させていたが、今回の氷結爆弾は爆炎を生み出すのではなく、冷気を生み出す爆弾として開発された新型爆弾だった。
氷結爆弾に使用されている素材は水属性の魔石であり、水属性の魔石が砕け散ると冷気を噴き出す。更にイリアは吸水石と呼ばれる水属性の魔石を加工した代物も利用し、この吸水石は名前の通りに水を吸収する性質を持つ魔石である。
吸水石を利用すれば大量の水を魔石の中に収めるだけではなく、その水を冷やす効果を持つ。これが壊れた場合は魔石内に蓄積された水が噴き出し、その性質を利用してイリアは氷結爆弾に取り込む。
氷結爆弾が壊れた瞬間に発生したのは冷気だけではなく、吸水石に蓄積されていた水が巨大ゴーレムに降りかかる。冷気と冷水を浴びた巨大ゴーレムは悲鳴を上げ、全身から水蒸気を放つ。
『ゴガァアアアアッ!?』
「まずい!!全員、そいつから離れな!!」
「わわわっ!?」
「近づくと危険だぞ!!」
巨大ゴーレムの全身に纏っていた火炎が消え去るが、その影響で巨大ゴーレムは苦しみもがき、その場に倒れ込む。他の者は巻き込まれないように退避すると、隙を見せた巨大ゴーレムに対してイリアは指示を出す。
「ほら、厄介な炎は消えましたよ!!今が絶好の機会です!!」
「……よくやったぞ、イリア!!」
「今なら広域魔法無しでもこいつをぶっ倒せる!!」
「よし、行くぞぉおおっ!!」
イリアとモモのお陰で巨大ゴーレムの肉体から火炎が消え去り、それを見たマホは珍しく興奮した様子で立ち上がる。火炎さえ消えれば巨大ゴーレムは只の馬鹿でかいロックゴーレムと大差はなく、攻撃手段はいくらでもあった。
倒れ込んだ巨大ゴーレムに目掛けて全員が動き出し、この時にガオウとフィルは同時に攻撃を繰り出す。二人は空中に跳び込むと、ガオウはフィルに声をかけた。
「おい、俺に合わせろよ!!」
「くっ……分かってる!!」
ガオウの言葉にフィルは歯を食いしばり、彼の足元に目掛けて鎖を伸ばす。フィルは先に着地すると、ガオウの足元を鎖に縛り付けた状態で振り回す。
「はああああっ!!」
「うおおおおっ!?目が回るぅううっ!?」
「なにやってんだあんたら!?」
二人の行動にテンは唖然とするが、別に彼等はふざけているわけではなく、遠心力を加えてフィルはガオウを投げ飛ばす。吹っ飛んだガオウは巨大ゴーレムの背中に向けて突っ込み、彼は身体を回転させながら巨大ゴーレムの背中を切り刻む。
「和風牙!!」
『ゴアアッ!?』
巨大ゴーレムの背中にガオウはまるでヨーヨーの如く回転しながらも両手に持っていた短剣を振り下ろし、巨大ゴーレムの背中を斬りつける。先ほどの氷結爆弾によって炎が消えただけではなく、巨大ゴーレムの硬度も下がっていた。
ガオウが最初に攻撃を繰り出すと他の者たちも後に続き、テンは退魔刀を構えるとミイナとルナも後に続き、3人は怪力を行かした一撃を放つ。
「行くよあんたら!!」
「やあっ」
「うおりゃああっ!!」
『ゴギャアッ!?』
テンの合図と共にいつも通りのミイナの気合が入っているか分からない掛け声と、ルナの雄叫びが響き渡り、3人の攻撃を同時に受けた巨大ゴーレムはひっくり返されてうつ伏せから仰向けの体勢となった。
「ドリス、行くぞ!!」
「ええ、分かりましたわ!!」
リンはドリスの肩を掴むと、再びドリスはランスの柄の部分から爆炎を放出させて加速し、二人は空を跳んで上から巨大ゴーレムの胸元に目掛けて攻撃を繰り出す。
「飛爆槍!!」
「突!!」
『ゴァアアアッ……!?』
胸元に衝撃を受けた巨大ゴーレムは苦しむような声を上げ、その反応を見たロランは巨大ゴーレムの胸元に核が隠されていると知り、彼は双紅刃を振りかざして他の者に離れるように指示を出す。
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