異伝 《合体》
「ドリス、リン!!あんたら、こいつがここまででかくなるのをどうして止めなかったんだい!?」
「ち、違います!!こいつは私達が倒して得た核を吸収して大きくなったわけじゃありません」
「合体したんだ!!2体目を私達が倒した時、3体のマグマゴーレムが集まってこんな姿に……」
「合体!?合体したのか!?」
「なんであんたは目元をキラキラさせてるんだい!?」
リンの合体という言葉にルナは瞳を煌かせるが、テンの言う通りに今は一刻も早く、この目の前の「炎の巨人」をなんとかしなければならなかった。
幸いというべきか、巨大ゴーレムの狙いは飛行船ではなく、自分の仲間を破壊したドリスとリンに狙いを定め、炎を纏った拳を振り下ろす。
『ゴガァアアアッ!!』
「ま、まずいですわ!?」
「死ぬ気で避けろっ!!」
ドリスとリンは二手に分かれて回避行動に移るが、二人に目掛けて振り下ろされた拳は地面にめり込み、雨で濡れた土砂を一瞬にして乾き果てる。その破壊力と熱気に他の者は気圧され、ロランでさえも迂闊に近づけずにいた。
「ぐっ……何という熱量だ、熱耐性の装備がなければ近付けん!!」
「くそっ、慌てて飛び出したせいでそんなもん、持ってきてないよ!!」
「あ、熱いのは駄目だ……テン、後は頼む」
「あんたね、少しは役立ちな!?」
ルナは巨大ゴーレムの放つ熱気に当てられて当てて距離を取り、テンの後ろに隠れてしまう。そんな彼女にテンは怒鳴り散らすが、この時に意外な人物が前に出た。
「御二人とも助太刀します!!」
「ヒイロ!?あんた、そんな装備……」
「大丈夫です、私は昔から暑いの平気ですから!!」
ヒイロだけは魔剣「烈火」を片手にドリスとリンの元に向かい、火属性の適性が高い彼女は普通の人間よりも熱に対する耐性を持ち合わせていた。彼女だけは巨大ゴーレムの放つ熱気に耐えられるらしく、彼女と同じく火属性の適性があるドリスも熱気に耐えて指示を出す。
「リンさん、きついようなら下がってなさい!!ここは私とヒイロさんで十分ですわ!!」
「え、偉そうに言うな……お前達の魔剣と魔槍で奴に勝てるはずがないだろう!!」
リンの言う通りに火属性の魔法剣や魔法槍ではマグマゴーレムとは相性が悪く、ドリスの場合は爆炎でゴーレムの外殻を破壊する事もできるが、今回の相手は巨体過ぎて彼女の爆発の火力では破壊する事は難しい。
ヒイロの魔法剣も全身が炎に包まれている巨大ゴーレムには通じず、せめて炎を纏っていなければ他の者も攻撃に参加する事ができたが、巨大ゴーレムを包み込む炎を消す手段を持ち合わせているのはこの場には一人しかいない。
「マホ魔導士!!貴女の魔法で何とかできないのか!?」
「…………」
ロランが飛行船の甲板に移動したマホに声をかけると、彼女は無言のまま巨大ゴーレムを見つめる。その姿を見てロランは彼女でも難しいかと思ったが、マホは覚悟を決めたように杖を構えた。
「儂の広域魔法でこやつを吹き飛ばす!!そのために時間を稼いでくれ!!」
「老師!?いけません、広域魔法をここで使えばまた……!!」
「大丈夫じゃ、それにここで使わなければこの船が燃やされてしまう……他に方法はない」
マホの言葉に彼女の傍に控えていたエルマは反対したが、マホの言う通りにここで炎の巨人を食い止めなければ飛行船は全焼させられる危険性もある。
ここで飛行船を失う事だけは何としても避けねばならず、マホは胸元を抑えながら自分の身体が持つ事を祈って準備を始める。そんな彼女の姿を見てロランは全員に時間を稼ぐように促す。
「マホ魔導士が広域魔法の準備を整えるまで時間を稼げ!!無理に倒す必要はない、注意を引いて船から遠ざけろ!!」
「よし、行くぞ!!」
「ぼ、僕も!!」
「ちっ……囮役に良い思い出はないんだけどよ!!」
ロランの言葉を聞いて遠距離攻撃が行えるリンが真っ先に駆け出し、その後にフィルも続く。ガオウもぼやきながらも後ろに続くと、他の騎士達も巨大ゴーレムを船から遠ざけるために攻撃を開始した。
「こっちだ、デカブツ!!」
『ゴアッ……!?』
「やああっ!!」
「おら、こっちだこっちだ!!」
リンは巨大ゴーレムの顔面に目掛けて風属性の魔力を利用して斬撃を飛ばし、頭部に攻撃を受けた巨大ゴーレムはリンに顔を剥ける。そこにフィルが鎖の魔剣を伸ばして胴体を斬りつけ、その後ろでガオウが拾った石を放り込んで小馬鹿にするように手拍子を行う。
「ゴーレムさん、こちら!!手の鳴る方に!!」
「おら、こっちだこっちだ!!」
「ヒイロ、おしりぺんぺんして挑発して」
「なんでですか!?自分でしてください!!」
『ゴアアアアッ!!』
それぞれが別々脳方法で巨大ゴーレムを怒りを仰ぎ、飛行船から離すために誘導する。巨大ゴーレムはその挑発に乗って移動を開始し、少しずつではあるが飛行船から距離を取った。
飛行船の近くで広域魔法を発動させると飛行船が巻き込まれかねず、マホは皆が時間を稼ぐ間に魔力を集中させた。しかし、思うように上手く魔力が練れずに彼女は口元を抑える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます