異伝 《炎の巨人》
――ゴガァアアアアッ!!
姿が変化したマグマゴーレムは飛行船に目掛けて駆け出し、身体が大きくなったにも関わらずに移動速度も上がっていた。それを見たテンは慌てて投石機かボーガンで対抗しようとしたが、どちらも既に先ほど撃ち尽くしている事を思い出す。
「ちょ、ちょっとまずいんじゃないのかい!?あいつら、こっちに来るよ!?」
「くそっ、何とかしなければ……」
「何とかと言われても……」
合計10体のマグマゴーレムが飛行船に突っ込んだら大惨事を引き起こす。そうなる前に対処しなければならないのは分かっているが、今から地上に降りても間に合わない。
この時に動いたのはロランであり、彼は手にした「双紅刃」を振りかざし、地属性の魔力を纏わせて飛行船の右方面のマグマゴーレムに目掛けて投げ放つ。
「うおおおおおっ!!」
『ゴアアアアッ!?』
「うひゃあっ!?」
「す、凄い!?」
「吹き飛んだ!?」
ロランが投げ放った双紅刃はまるで隕石の如く落下し、地上に衝突すると凄まじい衝撃波を発生させて突っ込もうとしてきたマグマゴーレムを吹き飛ばす。
しかし、右方面から迫っていたマグマゴーレムを防ぐ事はできても反対方向から迫ってきたマグマゴーレムを止める事はできず、マグマゴーレム達は飛行船の側壁に目掛けて体当たりを仕掛ける。
『ゴォオオオオッ!!』
「まずい、船がっ!?」
「くっ……魔導士!!」
「うむ、任せるがいい」
ロランは船のマストに声をかけると、上の方からマホの声が響く。全員が顔を上げると、そこには杖を構えたマホが立っており、彼女は飛行船の左方面に向けて杖を振り下ろす。
「ストームバレット!!」
『ゴアアアアッ!?』
マホの構えた杖から「螺旋状」の風属性の魔力の塊が放たれ、地上から突進してきたマグマゴーレムに目掛けて降り注ぐ。マグマゴーレムは砲弾の如く突っ込んできた風の塊を受けて吹き飛び、地面に転がり込む。
どうにか左右から迫ってきたマグマゴーレムの攻撃を止める事はできたが、ロランとマホの攻撃はあくまでも足止め程度の効果しかなく、倒れていたマグマゴーレム達は起き上がって憤怒の表情を浮かべる。
「ゴガァアアアッ!!」
「ゴオオッ……!!」
「ゴウッ!!」
起き上がったマグマゴーレムは怒りの咆哮を放ち、再び飛行船に目掛けて近付こうとした。しかし、既に甲板に居た者達も動き出し、全員が武器を掲げて飛び降りた。
「いつまでも調子に乗ってるんじゃないよ!!」
「おらおらおらっ!!」
「ていっ」
「ゴガァッ!?」
「ゴオッ!?」
テンが飛び降りるとルナとミイナも続き、3人は2体のマグマゴーレムに目掛けて各々の武器を叩き込む。王国内でも女性(人間)限定ならばこの3人は間違いなく5本指に入る程の怪力を誇り、3人の攻撃を受けたマグマゴーレムの1体が吹き飛ぶ。
他のマグマゴーレムの元にはロランが1体請け負い、フィルも鎖の魔剣を手にして向き合い、ガオウも両手に短剣を手にして1体と向き合う。これで右方面のマグマゴーレムと王国軍は対峙したが、左方面のマグマゴーレムは手薄となる。
『ゴオオッ!!』
「ちょちょ、全員でそっちに跳んでどうするんですか!?」
「大丈夫だ、問題ない」
「ええ、問題ありませんわね!!」
左方面から迫るマグマゴーレム達に甲板に残っていたイリアは焦った声を上げるが、そんな彼女の後ろからリンとドリスが現れる。二人とも甲板に辿り着いていたらしく、彼女達は暴風と真紅を手にして飛び降りる。
「行くぞ、ドリス!!」
「ええ、行きますわよ!!」
『ゴアッ!?』
甲板から飛び降りてきたドリスとリンに気付いたマグマゴーレム達は見上げると、空中に落下しながらもドリスは槍を構え、そんな彼女の肩をリンは掴む。
「飛爆槍!!」
「くうっ……!?」
ドリスは空中で真紅の柄の部分から火属性の魔力を放出させ、爆炎を利用して加速しながら降下を行う。その勢いに乗ってリンは暴風を構え、ドリスと同時に攻撃を行う。
「烈風斬!!」
「でやぁあああっ!!」
「ゴオオオッ!?」
「ゴガァアッ!?」
真紅の一撃がマグマゴーレムの胸元を貫き、暴風がマグマゴーレムの頭部を切り裂く。頭部と胸元を抉られたマグマゴーレムは武器を引き抜かれると後退り、やがて全身の炎が噴き出して火柱と化す。
攻撃を受けた際に体内の核が破損したらしく、膨大な火属性の魔力が火柱と化して天に登っていく。グツグ火山で隕石が落下した時も火口のマグマゴーレムは火柱と化した事があり、やがて火柱が消え去るとマグマゴーレムは跡形もなく消えた。
「ふうっ……良い援護でしたわ」
「うるさい、次はお前が手伝え」
「はいはい、分かってますわよ」
ドリスの言葉にリンは不機嫌そうに答え、二人は背中を合わせてマグマゴーレムと向かい合う。4体のマグマゴーレムは仲間を葬った彼女達に怒りを抱き、全力で襲い掛かった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます