異伝 《改良型小樽爆弾》
「くそっ!!とにかく眠っている奴等を叩き起こしな!!このままだと飛行船は燃やされるよ!?」
「は、はい!!」
「それと例の魔導大砲!!あれを使う準備も進めな!!」
「わ、分かりました!!」
飛行船には外部からの攻撃に備えて兵器が搭載されており、ポイズンタートルとの戦闘で利用された魔導大砲などもこれに含まれる。テンは魔導大砲の威力ならばマグマゴーレムにも十分に通用すると考えたが、魔導大砲は船首に存在するために位置的に正面の相手しか狙えない。
飛行船を取り囲むマグマゴーレムの大群は魔導大砲だけでは対処できず、他に飛行船に内蔵されている兵器といえば甲板には魔獣を打ち倒すための特製ボーガンが設置されているだけである。
「おい、あの馬鹿でかいボーガンで狙い撃てないのかい!?」
「あ、そうか……いや、駄目です!!専用の矢を運び出さないと使えません!!昨日の雨で濡れないように矢は別の場所で保管してまして……」
「たくっ、使ええないね!!それでも最新の船かい!?」
「はいは〜い、すいませんけど、ちょっと退いてください」
テンが騎士達に怒鳴りつけていると、彼女の後方から聞き覚えのある声が聞こえた。驚いたテンは振り返ると、そこにはヒイロとミイナに大量の樽を載せた荷車を運ばせるイリアの姿があった。
「イリア!?それにヒイロとミイナまで……何してるんだい!?」
「見ての通り、助けに来たんですよ。この私が改良を加えた小樽型爆弾で」
「こ、小樽型爆弾!?」
「テン、邪魔だから退いて」
「ううっ……け、結構重いんですね」
ミイナは軽々と小樽型爆弾を肩に乗せて持ち上げ、その隣でヒイロは両手を使って必死に小樽型爆弾を持ち上げる。彼女達の行動にテンは戸惑うと、後ろの方から更に元気な声が聞こえてきた。
「おい、イリア!!持ってきてやったぞ!!」
「おお、流石ですね。重くなかったですか?」
「これぐらい、へっちゃらだ!!」
「ルナ、あんたまで……ていうか、何だいそれは!?」
ルナの声が甲板に響き渡り、テンは声のする方に視線を向けるとそこには「投石機」らしき物を運ぶルナの姿があった。彼女は小さいながらにナイやゴウカに次ぐ怪力を誇り、投石機を一人で運び出す。
投石機の前にヒイロとミイナは小樽型爆弾を置くと、それを確認したイリアが地上から接近するマグマゴーレムの大群の位置を把握し、他の者たちに指示を与える。
「あの位置だと……この角度ですね。よし、やっちゃってください」
「了解」
「せ、せぇのっ!!」
「うりゃあっ!!」
小樽型爆弾を石の代わりに投石機に乗せると、イリアの合図でマグマゴーレムの大群に向けて放たれた。それを見たテンと甲板の騎士達は呆気に取られるが、投石機によって投げ放たれた小樽型爆弾が地上に落ちた瞬間、凄まじい爆発を引き起こす。
『ゴアアアッ!?』
「うわぁっ!?」
「ひいいっ!?」
「うわっとと……威力の調整を
「でも、かなりの数を減らせた」
小樽型爆弾の爆発によってマグマゴーレムの大群の一部が巻き込まれ、木っ端みじんに吹き飛ぶ。マグマゴーレムは本来は火属性の魔法攻撃には強いが、イリアが用意した小樽型爆弾はこれまで彼女が使用していた爆弾よりも威力が高く、ゴーレムを粉々に吹き飛ばす程の威力があった。
「な、何だい!!今の馬鹿げた威力は!?」
「いや〜私も驚きですよ。ナイさんに頼んでマグマゴーレムの核をいくつか回収してもらったんですけど、それを利用して小樽型爆弾の改良を行ったんです。それで威力は御覧の通りですよ」
「うわぁっ……でっかい穴ができたぞ!!」
「な、なんて威力……上級の砲撃魔法にも匹敵します!!」
イリアは先日にナイに頼んでグマグ火山で倒したマグマゴーレムの核を回収してもらった。そして討伐隊が戻ってきた後にイリアはこっそりと薬の開発の合間に改良型の小樽型爆弾を作り出していた。
小樽型爆弾を製作するには火属性の魔石が必要なのだが、その代用品としてマグマゴーレムの核を使用した所、従来の小樽型爆弾の何倍もの威力を引きだせる事が発覚した。そのお陰で火属性の耐性を持つマグマゴーレムをも吹き飛ばし、投石機を利用して次々と撃ち込む。
「ほらほら、どんどんと撃っちゃってください!!」
「よし、何だか楽しくなってきたぞ!!」
「次、私が撃ちたい」
「わ、私も……」
「あんたらね……いや、その調子だよ。あたしにも手伝わせな!!」
「テン団長!?」
『ゴオオッ……!?』
半ば遊び感覚で投石機を利用して小樽型爆弾を撃ち込むイリア達にテンは呆れたが、すぐに彼女は思い直す。この状況でマグマゴーレムの対抗手段を手に入れたのは頼もしく、彼女も共に小樽型爆弾を投石機に乗せて撃ち込む。
※カタナヅキ「なんか楽しそう」(*'ω'*)ワクワクッ←順番待ちする作者
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