異伝 《人造ゴーレムVS新種ゴーレム》

人の手によって作り出された最強の「人造ゴーレム」隕石の落下によって突然変異によって誕生した「ブラックゴーレム」恐らくはこの世界でも最強のゴーレム種が向かい合い、最初は力比べを行うように組み合う。



「ドゴォオオンッ!!」

「ウオオオオッ!!」

「ひいいっ!?」

「ば、化物だぁっ!!」



ドゴンとブラックゴーレムが組み合うと、街道に集まっていた人々は逃げ出す。2体のゴーレムはお互いの力を比べるように組み合い、まるで相撲の「手四つ」の状態へ陥る。


体格はドゴンが一回り程大きいが、腕力の方はどうやら互角らしく、お互いに一歩も引かずに押し合う。やがて2体は手を離すとその場で殴り合いを始めた。



「ドゴンッ!!」

「オアッ……ウオオッ!!」

「ドゴォッ!?」



ドゴンが殴りつけるとブラックゴーレムも負けずに殴り返し、激しい攻防を繰り返す。肉体がオリハルコンで構成されているドゴンは硬度も桁違いに高く、普通であればロックゴーレム程度のゴーレムならば一撃で殴り倒す事もできる。


しかし、ブラックゴーレムも隕石によって偶然にも誕生した鉱石で構成され、その硬度はオリハルコンにも劣らない。お互いが殴り合う度に衝撃が地面に伝わり、罅割れが発生した。



「くっ……皆、大丈夫かい!?」

「へ、平気です……」

「げほっ、げほっ……この煙、硫黄臭いぞ!?これじゃあ、鼻が利かねえ……」

「くそっ……逃がすかっ!!」



この時点で煙が晴れてきて正気を取り戻したアルト達もアンが逃げた事を知り、破壊された窓を見てレイラは飛び出す。アリシアも後を追いかけようとしたが、宿屋の外から聞こえてきた声に驚く。



「ドゴォオオンッ!!」

「ウオオオオッ!!」

「な、何ですかあれは!?」

「く、黒いゴーレム!?どうして街中にあんなのが……」

「まさか……報告に会った新種ゴーレムか!?」

「おい、やばいぞ……こっちに近付いてやがる!!」



ブラックゴーレムはドゴンに組み付くと、そのまま押し切って宿屋に向かってきた。それを見たアルト達は慌てて建物の奥に避難すると、ドゴンは押し切られて宿屋の玄関に倒れ込む。



「ドゴォッ!?」

「オオオオッ!!」



ドゴンを押し倒したブラックゴーレムは幾度も彼を殴りつけ、やがてドゴンの頭部が凹み始めた。オリハルコンで構成されているドゴンが凹む光景を見てアルトは信じられず、このままではドゴンが破壊されてしまう。



「ドゴン!!頑張れ、負けるな!!」

「ドゴォオオンッ!!」

「ウオッ!?」



アルトの声援を受けた瞬間にドゴンは目元を光り輝かせ、主人の前で恥を見せられないとばかりにドゴンはブラックゴーレムの巨体を押し退け、逆に両足を掴んで投げ飛ばす。



「ドゴンッ!!」

「ウオオッ!?」

「あ〜!?お向かいさんの建物が大変な事にっ!?」

「べ、弁償するよ……この宿屋と一緒に」



ドゴンが投げ飛ばしたせいで白猫亭の向かい側の建物も被害を受け、幸いにも住民は既に逃げていたのか出てくる様子はない。ドゴンとブラックゴーレムはそのまま白猫亭の向かい側の建物の中で殴り合い、建物の壁を破壊しながら戦闘を続ける。


人造ゴーレムと新種ゴーレムの力は全く互角であり、体格はドゴンが勝るが体重の方はブラックゴーレムが勝るらしい。お互いに相手を破壊させるつもりで殴り合うが、ここでブラックゴーレムに異変が生じる。



「ウオオオオッ……!!」

「ドゴォンッ!?」

「な、何だ……あの赤色の光は!?」

「い、嫌な予感がします……皆さん、伏せて!!」



ドゴンと再び組み合ったブラックゴーレムの肉体に埋め込まれていた「黒水晶」が赤く光り輝き始め、これまではブラックゴーレムの肉体にこびりついていた土砂のせいで分からなかったが、ブラックゴーレムの肉体には赤く光り輝く黒水晶が幾つも埋め込まれていた。



(まさかあれがナイ君の言っていた魔力を蓄積させる水晶か!?)



黒水晶の事はアルトも知っており、ハマーンと共にナイが回収した黒水晶を調べていた。彼等が調べたところだとブラックゴーレムは外部から受けた魔法攻撃を吸収し、その魔力を黒水晶に蓄積させ、自由に引き出す事ができるという。


ブラックゴーレムは体内の黒水晶から魔力を引き出し、全身に炎を纏う。通常のマグマゴーレムよりも熱気を放ち、魔力を口元に集中させて「熱線」を放つ。



「アガァアアアアアッ!!」

「ドゴォオオンッ!?」

「ドゴン!?」



熱線を至近距離から受けたドゴンの肉体が吹き飛び、彼はそのまま遥か後方に吹き飛ばされた。その光景を見たアルトは目を見開き、まるで火竜の吐息に匹敵する攻撃を繰り出したブラックゴーレムに全員が驚愕した。

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