異伝 《猛り狂う英雄》
「そら、餌だぞ!!」
『ゴオッ……!?』
ナイが核を取り出して投げつけた瞬間、マグマゴーレムの集団は彼が放った核に釘付けとなった。そして地面に核が落ちると、一斉にマグマゴーレムが集まって奪い合いを始める。
「ゴオオオッ!!」
「ゴアッ!?」
「ゴガァッ!!」
マグマゴーレムは核を取り合い、中には他の仲間を殴りつけたり、後ろから抑えつける個体も居た。それを見たナイは予想以上にマグマゴーレムを引き寄せる事に成功し、少し驚きながらもリーナを安全な場所へ避難させた。
「リーナ、ほら薬だよ。ここに隠れてて……」
「うっ……」
ナイは持ってきていたアルトの鞄に入っていた魔力回復薬を取り出し、それをリーナの口元に含む。しかし、リーナは苦しそうな表情を浮かべて吐いてしまう。
「げほっ、げほっ!!」
「リーナ!!しっかり噛んで飲んで……仕方ない」
「んんぅっ……!?」
無理やりにでもリーナに飲ませるためにナイは魔力回復薬を口に含むと、彼女の唇に流し込む。口移しでナイは魔力回復薬を飲み込ませ、この時にリーナは意識を取り戻す。
「んむぅっ……ちゅっ、ぷあっ……ナ、ナイ君……こんな時に駄目だよ」
「何言ってるか分からないけど……もう大丈夫そうだね」
頬を赤らめて顔を反らすリーナを見てナイは安心し、これで彼女は大丈夫だと判断するとナイは自分が身に付けていた火鼠のマントを彼女に被せた。同様の物をリーナは身に付けているが、マントを身に付けた状態では動きにくいのでナイは彼女に託す。
火鼠のマントを脱いだ瞬間にナイは火山の熱気を受けて顔をしかめるが、彼は「熱耐性」の技能を習得しており、ある程度の熱気なら耐え切れた。しかし、100体近くのマグマゴーレムが集まったせいかこの場の熱気は明らかに異常だった。
(流石にきついな……)
ナイは旋斧だけではなく、岩砕剣を抜いてマグマゴーレムの大群と向き合う。マグマゴーレム達はナイが投げつけた自分達の仲間の核を奪い合い、数は既に50体以上は集まっていた。
(ふうっ……モモ、力を貸して)
全力で戦うためにナイは煌魔石を装着した魔法腕輪に触れ、緊張しながらも彼はマグマゴーレムに目掛けて突っ込む。彼はこの状況を打破するために「強化術」を発動させ、身体能力を限界以上に高めてマグマゴーレムの大群に挑む。
――がぁあああああああっ!!
火山に獣の様な叫び声が響き渡り、討伐隊の面子は驚いて振り返ると、そこには両手に大剣を構えたナイがマグマゴーレムの大群を薙ぎ倒す光景が映し出された。彼が旋斧と岩砕剣を振り抜く度にマグマゴーレムが吹き飛び、粉々に砕け散る。
「がああっ!!」
「ゴガァアアアッ!?」
「ゴアアッ!?」
「ゴギャアアッ!?」
自分よりも体格が一回りや二回りは上回るマグマゴーレム達をナイは薙ぎ倒し、圧倒的な力で破壊する。ナイの方が小さいはずなのにマグマゴーレムは自分達よりも遥かに巨大で圧倒的な力を持つ巨人と戦っているような錯覚を覚えた。
大剣を振りかざす度にマグマゴーレムは吹き飛び、破壊されて溶岩が飛び散る。この時にナイの身体に飛沫が飛び散って彼の身体を焼こうとしたが、現在のナイは全身に聖属性の魔力を帯びていた。その魔力の膜が溶岩の飛沫を弾き返し、彼の身体を傷つけない。
「ナ、ナイ……!?」
「なんという力……これほどまでとは」
『おおおおっ!!』
一方的にマグマゴーレムを打ち倒すナイの姿にテンは呆気に取られ、ロランでさえも同様を隠しきれず、ゴウカに至っては興奮した様子で自分が戦うのを忘れてしまう。それほどまでにナイの力は凄まじく、他の者たちも目を離せない。
強化術は一時的に肉体の限界以上に力を引き出せるが、その反動として制限時間が切れたら使用者の肉体に大きな負荷が襲い掛かってまともに動けなくなる。だからこそ制限時間の間に敵を倒しきらなければナイに勝ち目はない。
(まだだ……もっと、もっと力を!!)
戦いながらもナイは自分の魔力が削られていく感覚を覚え、もう10秒もしない内に自分は倒れると気付く。しかし、そんな彼の前に一際巨大なマグマゴーレムが迫る。
「ゴオオオッ!!」
「なっ!?あいつ、まだ生きていたのかい!?」
「いかん!!誰か援護しろ!!」
「くっ!?」
「ま、間に合いませんわ!!」
ナイの背後に迫る大型のマグマゴーレムは先ほどマホとマリンが吹き飛ばした個体であり、どうやらナイが先ほど投げた核を奪って復活したのか、再び全身に炎を纏わせて彼に接近していた。
後ろからナイに襲い掛かろうとした大型マグマゴーレムに対して他の者も動くが、誰よりも早く動いたのは意外な人物だった。
「せりゃあっ!!」
「ゴアッ!?」
「クノ!?」
大型マグマゴーレムの目元に向けてクナイが突き刺さり、視界を封じられた事で大型マグマゴーレムは動きを止める。クナイを投げ込んだのはクノであり、直後にナイは大型のマグマゴーレムに向けて渾身の一撃を叩き込む。
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