異伝 《次世代の希望》
「でりゃあああっ!!」
『消えろ!!』
「「「ゴァアアアアッ!?」」」
リーナとマリンの攻撃によってマグマゴーレムは「氷柱」と「水球」に襲われ、肉体が冷やされて身体が泥のように変化する。特にリーナの氷柱を受けたマグマゴーレムは身体を貫かれ、核が破壊されて砕け散る。
以前よりもリーナは「蒼月」を使いこなし、能力を限界まで引き出す事ができた。土鯨との戦闘でリーナは覚醒し、その一方でマリンも最強の魔術師として恥じぬ戦い方で援護を行う。
『はっはっはっ!!やるではないか!!』
「リーナ、ありがとう」
「えへへ……ここからは僕も一緒に戦うよ!!」
『面倒をかけるな』
ナイに礼を言われたリーナは嬉しそうに彼の隣に並び、一方でマリンは杖を構えて新しい水球を作り出す。その様子を見ていた他の者たちも動き出し、今度はドリスとリンがお互いの魔槍と魔剣を重ね合わせる。
「行きますわよ!!」
「私に合わせろ!!」
二人は自分達の魔槍と魔剣の力を発動させると、同時に突きを繰り出す。その結果、リンの「暴風」からは竜巻を想像させる風圧が放たれ、ドリスは「真紅」から爆炎を迸らせる。
「「火炎旋風!!」」
『ゴアアアアッ!?』
二人の攻撃によって火炎の竜巻が発生すると、正面に存在したマグマゴーレムは吹き飛ばされる。火属性の攻撃に耐性があると言っても、あまりの爆発の威力にマグマゴーレム達はあちこちに吹き飛び、地面に叩き付けられた衝撃で身体が砕け散った。
ドリスとリンは普段はいがみ合っているが、二人が揃って力を合わせると何倍もの力を引き出せる。お互いが相手の長所を理解し、短所を補う。正に最高のコンビなのだが、二人は合わせ技を終えると喧嘩を始める。
「ちょっとリンさん!!風圧が強すぎましてよ!?」
「お前の方こそ炎が強すぎる!!見ろ、私のマントが少し焦げただろう!?」
「あんたら、喧嘩している場合か!!まだ戦闘は終わってないよ!!」
言い争う二人を見てテンは怒鳴りつけると、彼女も退魔刀を構えて走り出す。その後ろにエルマが続き、彼女は走りながら矢を放つ。
「援護します!!」
「あいよっ!!」
『ゴオオオッ!!』
エルマは「魔弓術」を利用して矢の軌道を変え、テンの背後から矢を繰り出す。彼女の放った矢はテンの身体を避けるように移動し、彼女に近付こうとするマグマゴーレムの胸元を狙い撃つ。
「ゴアッ!?」
「ゴオッ!?」
「おらぁああああっ!!」
矢を受けて怯んだマグマゴーレムに対してテンは退魔刀を振りかざし、この時に彼女は全身の筋肉を利用して叩き付ける。普通に切り付けるだけではマグマゴーレムの溶岩の肉体が飛び散って危険だが、彼女の退魔刀は普通の大剣とは違った。
テンが愛用する「退魔刀」は名前の通りに「魔を退ける力」を持ち、彼女が切り裂いたマグマゴーレムは体内の火属性の魔力が断ち切られ、斬りつけた瞬間に火属性の魔力が掻き消されてただの岩の塊と化す。マグマゴーレムの溶岩は火属性の魔力を帯びた岩石であり、退魔刀で斬りつけられれば元の岩石と化す。
「はああっ!!」
「うおりゃああっ!!」
「ゴアアッ!?」
「ゴガァッ!?」
テンとエルマは長年の相棒同士であるためにお互いの動きを見抜き、互いに相手が動きやすいに配慮する。エルマはあくまでも援護役に徹して敵を撃ち抜き、撃ち抜かれた敵をテンが止めを刺す。
「ほう、流石はテンとエルマじゃ……いや、他の者たちも見事じゃな」
「……そうですな」
「どうじゃ、ロランよ。お主の知らぬ間に若者も育っておる。もう、儂等の時代は終わりかもしれんな」
「次世代……」
マホの言葉にロランは自分の力がなくとも立派に戦うナイ達の姿を見て頷き、いつの間にか自分の知らぬ間に次世代を担う者達が育っている事を知る。しかし、ロランも若者ばかりに頼らず、自分も戦える力がある限りは全力で戦う事を伝えた。
「私はまだ戦える……生涯現役、それが私の座右の銘です」
「やれやれ、お主も損な性格じゃのう……」
「お互い様でしょう」
ロランの言葉にマホは呆れるが、そんな彼女にロランは笑みを浮かべて武器を構えた。マホも彼に付き合うように杖を構え、若者達と共に戦う――
――戦闘が開始してから数分後、ナイ達は50体のマグマゴーレムを打ち倒した。この時に冒険者達は倒したマグマゴーレムの素材を剥ぎ取り、核の回収を行う。ナイもイリアに言われていた通りに核の回収を今の内に行う事にした。
討伐したマグマゴーレムの中には核ごと破壊された個体も多かったが、何とかナイは損傷を免れた核を発見し、直に触れないように布に包んだ状態でアルトから借りてきた収納鞄の中に入れる。アルトが出発前に貸してくれ、後で彼に返す約束をしていた。
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